異世界生活一年まで後一ヶ月。
前回があんな感じになってしまったので、今回は既に友人の救出を無事終えて落ち着いた状態で思い返している。
さて何故ドラゴン、正確には竜王友人をさらったのか。
理由は伴侶にするためだそうだ。
実は友人は顔が良いのだ。
更に元々いい体つきをしていたのだが、この世界で戦っていたためにもっといい感じになっていた。
そして魔力までもが好みだったそうだ。
だから二月程生かされていた訳だが、友人は拒否し続けていた。
そこへ僕たちが救助しに来た。
そして竜王は僕と友人の関係を邪推すると友人をかけて決闘をしろと言い始め、僕はそれを受けた。
受けた理由に新しい箒があったことは大きい。
ドラゴンの素材で作った箒は凄いものだ。
柄は削った骨を芯にして鱗を何重にも貼る。
ブラシ部分は髭を束ねた上で更に髭で縛る。
まずこの時点でほぼ壊れない箒になった。
更に箒には先頭の風避けは牙を、中間のサドルは筋肉を、後部の推進力は翼を、これに加えてブラシ部分の中心に爪を、そして爪の周囲に五体の竜の逆鱗をそれぞれ竜の血を使って加工した杖を仕込んだ。
竜の血を使って竜の素材を加工して杖を作ると、その竜の部位を模した竜魔術なるものが使える。
まず先頭の牙の杖は前方の空気どころか障害物を穿ち、中間の筋肉の杖は座り心地の良いサドルを作り、後部の翼の杖は僅か二秒で音速を出す。
ブラシの爪の杖はすれ違った物を切り裂き、その周囲の逆鱗の杖はそれぞれ元となった竜のブレスを再現する。
そして安全装置として皮膜と鱗を使ったエアクッションの魔道具と竜の皮膜に僕と竜の血を馴染ませた僕の魔力を貯蓄するローブ、音速に対応するために竜の水晶体を元にした眼鏡にその他の防具も用意した。
これに乗るとどうなるか。
新幹線よりも速く縦横無尽に飛び回り、正面からぶつかれば穴が空き、すれ違えば切り裂かれ、離れても光線を放つ。
しかもサドルは柔らかく風圧も気にならないので乗り手は魔力消費が多く、速度が速すぎて操作が難しいこと以外は不自由しない。
しかもその二点もローブと眼鏡で解決した。
お陰で僕は人型の竜と言っても過言ではない強さを得た。
このチートアイテムを使って僕は竜王を倒した、と言えれば格好良かったのだろうが流石に竜王相手では竜の素材で作った道具では倒せなかった。
とはいえ、僕が倒した竜はそれぞれ竜王に匹敵する速度・攻撃力・防御力・魔力に知覚を持っていた。
それぞれ僅かに竜王に届かずともそれを束ねた箒は人間大にサイズを小さくしたことでマトモに戦える戦力になった。
僕が倒した五体の竜はそれぞれ頭から尾までの全長が五〜十メートル程に対して竜王は十五メートルを超える大きさだったが、それは竜を相手するならかなりの有利になっただろうが僕を捉えるのには不利に働いた。
そして三日三晩の決闘の結果、二度攻撃を食らったものの安全装置で十分耐えられ、こっちは逆に手の指一本と牙二本を折ったところで戦闘は終了した。
僕が与えたダメージは生物として規格外の竜種からすればちょっとした切り傷以上のものではなかったが、たかだか人間が竜を元にした装備を纏っていたとは言え三日三晩も竜王と良い勝負をした事は凄い出来事らしく負けを認め、友人に再度求婚をしてそれを断られると大人しく去っていった。
実際のところ、魔力も体力も精神力もギリギリでそれこそ竜王が去ったのを確認した瞬間意識を失う程にボロボロだったので情けをかけられた気がしないでもないが、これでようやく僕は友人に十ヶ月半ぶりに友人と再会出来たのだった。