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異世界に来た。

僕はつい最近までちょっと方向音痴なこと以外普通の高校生だったが、修学旅行に行くことになって乗った新幹線が自爆テロにあってしまう。

すると女神様がテロに巻き込まれた人が集められて異世界に連れてってくれるという。

ただ勿論その集められた人の殆どはそのまま送られても異世界で上手くやっていけない。

だから自身を象徴する能力とそれに合った職業、その能力を持った上で女神様がその人に適切だと判断した道具を全員が異世界で何時でも使えるようにした内部の時間経過を操作出来るアイテムボックスに入れてくれるそうだ。


それから異世界に到着するとそこはびっくりするほど大きな部屋で足下には床いっぱいの魔法陣、そして周囲には魔法使いと騎士らしき人達と豪華な衣装を着た王族っぽい女の人がいた。

全員が彼女に気付くと彼女は口を開いた。

異世界モノの小説でよくある魔王がーとか、そういう話をするかと思うと落ち着いて話せる場所に行こうと言った。

確かに立ったままでは嫌だなと思い皆でぞろぞろ着いていく。

そうして歩きながら女神様が教えてくれた能力を知る方法(これもよくある心の中で「ステータス」と念じるだけだ)で確認すると、



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名前 那里 此方

年齢17

種族 人

位階 一

職業 魔術師見習い

能力 アイテムボックス

方向音痴

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という異世界ものでよくあるウィンドウのようなものが出た。

ただし触れるものではなく、思考操作するタイプようだ。

色々気になるものもあるがしっかりと検討(※どちらにしようかな)した結果、先ずは女神様がくれた道具を見ることにした。

アイテムボックスを選択してみるとスマホの写真を見るアプリの様になっていて、更にファイル分けもされていた。

そこには武器防具各種と衣服が十着ほど、鞄やポーチなどに加えて、何故か食材が五十年分も入っていた。


不思議に思い、ずっと隣で難しい顔をしながら虚空を見ている友人に何が入っていたかを聞くと、武器防具衣服その他小物は体型に合わせてあること以外は殆ど同じだったが、食材は一年分だけだったそうだ。

個人差があるにしても標準的な食事量のはずの僕にこんなに食事があるなんてまるで遭難を想定してるみたいな……なんて思い至った瞬間、嫌な予感がした。


優秀な読者諸君はもう想像が着いただろうが、能力に方向音痴が付いてる時点で分かる通り僕はかなりの方向音痴だ。

具体的には地図を見ながら歩いているのに目的地から反対の向きに行ってしまったり、駅の出口の方向を看板を見かけるごとに念入りに確認した上で違う出口に出たりと方向音痴エピソードを挙げると枚挙に遑がない程だ。

そしてそれが象徴として選ばれてしまったのならば―――。

だが時すでに遅し。

方向音痴の能力を確認すると同時に、僕は城の廊下から森の中へ転移してしまっていた。


転移先は森の中、そして改めて目の前の能力説明を見た僕は思わずorzのポーズをとってしまった。



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方向音痴

よく知らない土地を、よく知らない目的地に向かって五百歩進むと自動で視界に入ってない場所へ転移する。

転移に代償はない。

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地雷スキルで俺TUEEEEは浪漫だけど、異世界でこれはガチの地雷スキルでは……?

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