チンチラダイヤの行ってらっしゃい!

作者: 流丘薫

一緒に暮らしているネコの兄弟。(血は繋がっていません。)の二話目です。いつも一緒にいて遊んだり話したり、二人で身体を寄せあって寝たり‥‥


今回も猫馬鹿ですが、お付き合い下さい!

「行ってきまーす。」


「フニャッ、ミィーン」


(あっ、待ってー)


『トットットットッ。ピョン』


ダイヤが階段を下りてきました。パパのお見送りです。靴を履こうとしているパパにスリッと身体をすり付けて‥‥


「こらっ、パパのスーツが毛だらけになったじゃなあい。」


一応パパは怒りますが、顔は笑っています。ママも


「ダイヤ、パパはこれからお仕事なのよ。毛だらけになったら困るでしょ。」


とは言いますが、それだけです。そして、朝のお見送りはダイヤのお仕事。パパがお部屋からスーツで出てくるのをドアの外で待っていて、


「ミィーン、ミミ、ミミ」


(待ってたんだよ!パパ遅いよ。)


と言って階段をパパより先に降りていきます。そうです、お家の中でずっと生活しているダイヤにとってお外に出れるのは、(正確に言うと地面を歩けるのは、)パパをお見送りするときだけなんです。


パパもママもダイヤとお兄ちゃんのコナンがお外を好きなのは良く解っています。でも、二人の前にお家にいたチンチラの蓮ちゃんが、お外に飛び出して事故に合いそうになってからは、猫ちゃんがお外に出ないようにしているのです。


ダイヤとコナンも何となく解っているのでしょう。コナンはベランダに出ることはあっても玄関から出ようとはしません。ダイヤも玄関からお顔を出すだけです。そのあとは、ママに抱っこしてもらってパパを見送ります。


ダイヤがお家に来たばかりのころ、ダイヤの世界はみんなが集まるリビングだけでした。まだヨチヨチあるきで階段ののぼりおりも満足に出来ないダイヤは、パパが帰って来たときにお兄ちゃんのコナンが、


『トン、トトトトト』


と階段を下りてパソコンをお出迎えするのを階段の上から見るだけでした。


(いいなあ、お兄ちゃんは。毎晩パパが帰って来たときに最初に声をかけてもらえるし、頭を撫でてもらえるし。)


でも、半年も過ぎダイヤが階段ののぼりおりが自由に出きるようになったある日、ダイヤはあることに気がつきました。お兄ちゃんは、お出迎えには真っ先に行きますが、お見送りはいつも階段の上からです。不思議に思ったダイヤはお兄ちゃんに聞いてみました。


「ミィヤーン、ミミ、ミミ」


(お兄ちゃん。どうしてお見送りにいかないの?)


コナンが答えます。


「ミャウーン。ウニャウニャ、ミャオーン」


(お兄ちゃんは昔お外で暮らしていたことがあったんだ。そのときは、大きな自動車が凄いスピードでそばを走っていてホントに怖かったんだよ。)


ダイヤはパパやママ、なごちゃんが自分に話してくれたことを思いだしました。


「ダイヤ、お兄ちゃんは昔誰かに捨てられていたんだよ。幸い愛護センターに行くことが出来たから良かったけど‥‥お兄ちゃんはいっぱい苦労したからこんなにダイヤに優しいんだよ。だからダイヤもお兄ちゃんに迷惑ばかりかけないでお手伝いもしようね!」


(よーし)


ダイヤはあることを心に決めてお兄ちゃんに話しかけました。


「ミミミミ、ミィーン、ミィーン、ミミミミミミ」


(お兄ちゃん、朝のパパのお見送りはダイヤがやるね!お兄ちゃんはリビングにいて。)


「二ャウーン、二ャウーン、二ャ二ャ」


(ダイヤはお寝坊さんだけど大丈夫?朝は寒いときも多いよ。)


「ミミミミ、ミィーン」


(大丈夫!任せて!)


それから毎日、ダイヤは頑張ってお兄ちゃんと一緒におっきします。眠いおめめを真ん丸なお手てで『ゴシゴシ』とこすって、まずはお兄ちゃんにスリスリと身体をすり付けて、そして、お兄ちゃんと二人でパパを起こしにかけ上がります。


「二ャウーン!」


「ミィーン!」


二人でパパを起こしてパパが着替え始めると二人は朝御飯の時間。そして、パパのお出かけの準備ができるとそこから後はダイヤの役目。


ダイヤは今日もパパを追い越して玄関に向かいパパをお見送りします。


「ミィーン、ミミ、ミィーン。ミミ」


(行ってらっしゃい。パパ!)





可愛い二人ですがてを焼いていることも多々あります。次はその事を書いてみようかと眠い目を擦りながら考えています。