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岩に刺さった勇者の剣が如く

「いやー、やっぱ俺って天才だわ」


 俺は床の材質をサラサラの砂に変えた部屋にゴロリと寝そべり、バンシーのお腹をぐにぐにしていた。


 槍が邪魔で寝転がれない問題は、槍を地面に突き刺しつつ寝そべるという荒業を成すことで解決した。


「タカ、居る?」


「居るぞー」


 扉の向こうから聞こえた声に返答しつつ、寝返りを……うてない!?


「失礼しま……うわぁああああ!!?」


「おう、シャノンか。大変な事になった。助けてくれ」


 慌てて俺のもとへと駆け寄ってくるシャノン。


「た、タカお前……何だよコレ!?いったい誰に……」


「ああ。困った事に寝返りがうてなくて」


「そこなの!?」


 そこだろ。むしろそこしかない。


「というか深々と刺さりすぎて立ち上がれん」


「馬鹿なの……?」


 失敬な……うっ、やっぱ自力じゃ厳しいなコレ。


「あぶないって!」


「……肩貸してくれ」


 シャノンとバンシーに肩を借りやっとの思いで立ち上がる。


「どこに行くの?」


「会議だ」


 時間がないのだ。間違っても床を砂にしてまでゴロゴロしている場合ではない。


 俺は砂がついてしまった服を少し気にしながらも、机に置いていた武器を手に取る。


「服装気にするとかそういう次元に無いと思うよ……」


「親しき仲にも礼儀あり、だ」


「礼儀がなってる人は腹から槍生やしたりしないよ」


 俺は黙って、シャノンの頭をワシワシとかき撫で砂まみれにしてやった後、部屋を出た。







 コツコツと廊下を歩いていると、足元が揺らぐような感覚が俺を襲った。


「……おっす」


 次の瞬間、俺は会議室の中にいた。

 おそらく砂漠の女王が俺を転移させたのだろう。


 ポリポリと頭をかきつつ会議室の面々を見やる。


 いつもの十傑メンバー、砂漠の女王、アルザ、カーリア。

 そして拘束された状態で椅子に座らされている、あの男は……


「よう、影。さっそくだがぶっ殺していいか?」


「あはははは!」


 なにわろてんねん。


「でも期待以上の成果だよ……ふむ、死霊術に聖術……それにギフトの残滓も……」


「……情報吐くだけの機械にできねぇかなコイツ。まだ役に立ちそうで殺しにくいのが最高に殺意高まる」


 俺は腹から突き出た槍を机やら椅子やらにぶつけつつ、席についた。


 お代官さんはしばらく怪訝な目でこちらを見ていたが、やがて諦めたような表情に変わり、溜め息まじりにこう宣言した。


「えー、では、これより対ヘビ男作戦会議を行います」


 それだけ言うとお代官さんと入れ替わりで砂漠の女王が口を開いた。


「まずはヘビ男の特徴について。一言で言い表すなら、対わたくしに特化している男ですわ」


 その言葉に皆がざわつく。


 対砂漠の女王……領域が機能しないってことか?

 

「それはかなり厳しいんじゃないか?」


 苦々しさの混じるほっぴーの言葉。

 それに対し返されたのは……


「いえ余裕ですが……」


 そんな拍子抜けするような答えだった。









ほっぴー:まぁどんだけ強かろうが孤立させたとこ囲んで殴れば終了なのは自明だった


スペルマン:戦いは数だよアニキ


タカ:俺達で囲んだとしてカーリアちゃんは倒せますか……?


ほっぴー:ないです


ジーク:そら羽虫が群がったところで象には勝てないし……


スペルマン:でもえっちな映像はとれる


ガッテン:お前精神状態おかしいよ


タカ:健全な精神を持ち合わせているがゆえの行動やぞ


Mortal:ねぇねぇ


タカ:ん?どうした


Mortal:こっち陣営に引き込めないのかな


タカ:誰を


ほっぴー:ヘビ男か?


Mortal:うん


ほっぴー:いやー


砂漠の女王:絶対に無理ですわ


Mortal:なんで?


砂漠の女王:あのヘビ男はわたくしの元ストーカーですので


ガッテン:それ間接的にお代官さんのストーカーでは


 ガッテンが退室しました


ほっぴー:草


ジーク:草


タカ:いいぞもっとやれ


スペルマン:言論統制はよくないとおもいます


砂漠の女王:いえ、うっかり手が滑ってしまっただけですので


 ガッテンが入室しました


ガッテン:BANだけはやめろォ!


タカ:ナイスぅ!


ガッテン:いやほんとに勘弁して


砂漠の女王:手が滑っただけですので


ガッテン:そうですか……


ほっぴー:つーか元ストーカーってどういう事?


砂漠の女王:もし詳細を喋ったとして、皆様に良い影響が出るとは思えませんので


砂漠の女王:わたくしは口を閉じさせて頂きますわ


タカ:暇なので教えろ


ほっぴー:理由が雑すぎる


ガッテン:というかタカははやく槍をなんとかしろよ


タカ:俺だってなんとかしてぇよ


砂漠の女王:え?


タカ:あ?


砂漠の女王:いえ。わたくしに槍付きでも寝転がれるよう床の材質変化を求めてきたので、てっきりそのスタイルを貫くのかと


タカ:貫かねーよ!!!!!


ジーク:貫かれてるんだよなぁ


タカ:いや貫かれてはいるけど貫かねーよ!!!!


タカ:いやマジで戦闘始まる前にこの槍なんとかしてくれ


砂漠の女王:こう、グッとやって抜けばいいと思うのですが


タカ:無駄毛処理じゃあねぇんだよ!!!!!!


ジーク:無駄毛処理は草


ほっぴー:笑うわ


ガッテン:剛毛すぎる


砂漠の女王:抜いてすぐさまヒールをうてばセーフですわよ


砂漠の女王:えぇと、こういうのを何と言うんでしたっけ


砂漠の女王:3秒ルール、でしたか


ほっぴー:3秒ルールの適用箇所が斬新すぎる


ジーク:(命を)落としても3秒以内ならセーフ


タカ:正気か????????


砂漠の女王:いや本当に大丈夫ですので


砂漠の女王:さっさとやっちゃってくださいまし


鳩貴族:じゃあヒールは自分がやりましょう


ほっぴー:槍引き抜く役はどうする


Mortal:楽しそう。俺やりたい


ほっぴー:おk


タカ:おkじゃないが


ガッテン:頑張れ


タカ:頑張る頑張らないの問題じゃないが


ほっぴー:じゃあタカの部屋に集合な


鳩貴族:はい


Mortal:うん


タカ:おい


ほっぴー:うっせぇなぁ。歯医者でだだこねるガキじゃあるめぇし、さっさと済ますぞ


タカ:歯医者とは訳が違うんだよ!!!!!!!!


タカ:人の命がかかってるんですよ!!!?!?!??!!!??


Mortal:タカ、ドア開けてよ


タカ:さっきからノックしてんのてめぇか!!!!!!


ほっぴー:俺も加勢すっから蹴破るぞ


タカ:やめろ!!!!俺はまだ!!!死にたくない!!!!!


砂漠の女王:あっ、じゃあ部屋のドア消しておきますので


タカ:おい


タカ:嘘だよな?



タカ:おうhくぇcぁdkゔsrfぃえ


ガッテン:ヒエッ……


スペルマン:成仏してクレメンス



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