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会議は踊る、されど進まず


「オラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!!」


 切る。ただひたすらに切る。踊るように華麗に。それでいて苛烈に。

 俺が切り続けたうなじはとうとう血管を露出させ、血を噴水の如く撒き散らした。


「グオオ……オオォ……」


 ズゥン……と音を立てベンケイが再び片膝を着く。今の俺には見えないが下は下で頑張っているらしい。


「そろそろ終わりだ」


 俺がもう一度六連撃を放った直後、ベンケイの身体が徐々に傾き始める。おそらく息絶えたのだろう。


「……あれ?コレ俺やばくないか」


 俺の心配を余所にベンケイの身体はどんどん地面へと近付き――衝突した。


「ぐおおおおおおあああああ!!!?」


 着地の余波ですっ飛んだ俺はそのままゴロゴロとベンケイの身体から転がり落ちていった。










「討伐おつ」


「お、おつ……」


 ベンケイ討伐後。魔石を掘り出す為ミノタウロスがザックザックと斧でベンケイの身体を掘り進めている横で、俺と紅羽が互いの奮闘を労う。


「ぶっちゃけタカが覚悟決めたらソロれてたんじゃね」


「まあレベル差あるしワンチャンあったけど俺だって死にたくねぇし」


「そんなスキル構成しといて死にたくないとか説得力皆無すぎ」


 うるせえ。リアルとゲームじゃ全然話が違うんだよ。


「そういや手に入ってた?」


「何がだよ」


「レイドボス初回討伐ボーナスの天の魔石」


「ああ。気が付いたらポケットの中に、な」


 そう言って俺がポケットから淡く光る一つの石を取り出し見せてやると、紅羽はニヤっと笑ってこう言った。


「んじゃ、ガチャろうぜ」











 とはいえ、今はそれより先にする事があるだろ、という話になり俺達はスマホを起動し、ツイッターのグループを開いた。



紅羽:ベンケイ討伐余裕でした


タカ:おい。俺がいなかったら勝てなかっただろうが


紅羽:お互い様だろ


ガッテン:ちょっと待て。いきなり出てきて何だお前等


ジーク:マジ?どこに湧いてたの


ほっぴー:つーか紅羽とタカ氏リア友かよw


タカ:こんなパンクな格好した中二病女知らない



「おい!てめえ!!!」


 スマホから顔をあげ紅羽が怒鳴ってきたので笑顔で返す。

 だいたい何だそのぴょんと片目にかかる髪は。何でそこだけ赤く染めてんの?校則とか大丈夫なの?



ほっぴー:写真うpはよ。てかマジで女だったの?


紅羽:そこから疑ってたのかてめえ!?


ジーク:写真まだ?


タカ:しょうがねえな、ホラ。[写真データ](※中身はミノタウロスの写真)


ほっぴー:ほえー、紅羽ってマジでメスだったんだな。ごめんな


紅羽:殺す


ジーク:もおおおって鳴いてたガッテンと相性良さそう


ガッテン:なあ君達、団結って知ってる?


ほっぴー:知wらwなwいwよwwwwwwww


Mortal:爆死した


ほっぴー:お?石手に入ったのか?結果晒しはよ


Mortal:ソシャゲの話やぞ


ほっぴー:やだこの人あたまおかしい……!


タカ:助けてくれ紅羽がマジで殴ってきちつてたあさめむに


ガッテン:ちくしょう!何なんだお前等!何なんだお前等!?世界がピンチなんだぞ!?
















「とりあえず俺は妹と合流したい」


「そうか。あたしもあたしで合流したい人がいるし、一旦お別れか?」


「ああ。じゃあまたレイドボス出たら狩ろう」


「うす。じゃあな」


 それだけ言うと俺と紅羽は黙々と歩き出す。


「……何で着いてきてんだよ」


「うるせえな、道が一緒なんだよ」


 心底嫌そうに、そして若干恥ずかしそうに紅羽が悪態をつく。

 俺も少しばかり恥ずかしくなったのでとりあえずスマホをいじる。


 そもそも俺は、年下の女の子と何の滞りもなく会話出来る、なんていう化け物染みたコミュ力なんて持ち合わせちゃいない。さっきは戦いの高揚感とネット上とは言え知り合いに会えた感動で舌が回っていただけだ。




タカ:そろそろ真面目な話するか


ガッテン:タカ……俺はお前を信じてたぜ


ジーク:実際やばいよな。つーかいずれネットも繋がらなくなるんじゃね


ガッテン:はい皆。そのタイピングの手を止めてね?俺真面目な話します


ガッテン:よし、いいぞ。その調子だ。


Mortal:俺フリック入力だぞ


ガッテン:フリック入力もやめようね。いいか?いいな?


ガッテン:さて、今俺たちの世界は危機に瀕している。前代未聞のモンスター災害だ。これはどうやら日本だけじゃない、世界中で起きている出来事らしい。


ガッテン:皆ももう分かってると思うがこの災害は、モンスターや、何故か俺たちが使える魔法。それらを顧みるに、俺たちのプレイしていた「聖樹の国の魔物使い」が現実化した為起きた


紅羽:なんでこんな事になったんだろうな


タカ:それについては考えるだけ無駄だろ。真相究明なんて二の次、三の次だ


ほっぴー:お前ら今リアルで会ってるんじゃねえのかよwwwwツイッターで会話すんなやwwww


ガッテン:はーい、脱線やめようね。後この災害の理由についてはタカの言うとおりだと俺も思う


ジーク:脱稿に見えた


スペルマン:やめろ……その言葉は俺に効く……


ガッテン:ねえお前ら話聞く気ある?


ほっぴー:ありまぁす!


ガッテン:それねぇ時の言い方だよ!!!


タカ:諦めようぜ


ガッテン:嫌でーす!絶対に諦めませーん!


ガッテン:いいかお前ら。俺含めここに居る十傑こそが世界を救えるかもしれない希望の星なんだぞ?


タカ:ああそうかもね。で?


ガッテン:冷めすぎ……


ほっぴー:タイムライン見る限りもうこの世界のシステムに気付いてジョブ選択して戦ってる奴かなり居るぞ


ジーク:じゃあ安泰だな!解散!


ガッテン:しないで


ほっぴー:だって攻略サイトみたいなの出来てんだぜ?人類思ったより逞しくて安心したわ


ガッテン:じゃあもういいです……


タカ:爆死してるやつ見てプギャろうとして調べたけど誰一人石割ってる奴居なくね?晒さないのが暗黙の了解なの?


鳩貴族:それについて報告があるのだが。


ほっぴー:考察及びスベリ芸職人の鳩貴族さんだ!皆の者、道を開けよ!


ジーク:ははーっ!


鳩貴族:どうやら現状、魔物を使役しているのは私達だけらしい。


ほっぴー:え?マジ?


鳩貴族:マジだ。


タカ:石が手に入ってないだけじゃね?レイドボスぶっ殺せるようになれば魔物持ちもだいぶ増えるだろ


鳩貴族:ほう?やはりレイドボスを殺すと魔石が手に入るのか。


タカ:おう


ガッテン:そうそうこういうのでいいんだよ、こういうので。つーか俺ら初期レベ70以上な時点でスタートダッシュに滅茶苦茶差がついてるし、やっぱ俺らにだけ与えられる試練的なの絶対あるって


タカ:さっきのベンケイ討伐か?


ガッテン:かもな。やっぱ俺ら連携取るべきだよ。普通に死にかねない


紅羽:でも余裕だったぞ


ガッテン:でもソロだったら?キツかったろ?つーか死んでたろ?


紅羽:まあな


ガッテン:ネットが繋がらなくなる前にネット無しで連携取れるような何かが必要だと俺は思う


鳩貴族:ふむ。では伝書鳩、なんてどうかね?


ジーク:ドヤ顔で言ってそう



 


 そんなチャットをやっている時だった。

 俺達の――いや、正確には、全人類の頭の中に、ある魔法陣の情報が降りてきたのは。



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