作戦会議はコース料理と共に
「さあ、まずは生還を祝って……乾杯!」
見るからに高級感が漂っている料理と円状のテーブル。
そしてそれを囲う俺達。
「かんぱーい!」
その面子は俺とモータルに加え、スラムで拾ったガキ……シャノン。
そしてシャノンのお守り押し付けたギルド員さんに、オーク討伐の遠征で知り合いになったアルドだ。
「マジで連れてきてくれるとは……」
アルドはそう言って苦笑いをしつつも、ちゃっかりワインに口をつけている。
「あ、あの……なんで私も連れて来られたんでしょうか……」
「お守り代」
俺の返答に、ギルド員さんが複雑な表情を浮かべる。
「あー、っと」
そりゃそうか。
大した事もしてないのに過度な報酬があると不安になるもんな。
俺も、単なる採集クエで最上位レベルの素材の報酬とか渡されたら、絶対裏があるって思うもん。
「今後もお守りを頼むかもしれないので。前払いの分も兼ねて、という事で」
「は、はい……」
ギルド員はがっかりしたような表情を浮かべつつ頷いた後に、少しだけ嬉しそうな表情を見せた。
え?何?
報酬が不服なの?
見た目とは裏腹にがめついなぁ……
「タカお前……」
「ん?」
「いや、俺が口を出す事じゃないわな」
アルドがぐいっとグラスの中のワインを呷る。
「何我が物顔で飲んでんだ。鼻から飲ますぞ」
「なんで俺だけそんな感じ!?」
アルドにマウントを取り満足した俺がようやく食事に手をつけようとすると、横から袖がグイと引っ張られた。
んだよガキ。
「タカー!これおかわりとかあるのか!?」
「アルドの食って良いぞ」
「!?……ああ、でも奢って貰ってる立場なせいで断れねぇ……」
はははは!
施しをただ「得る」だけの行為と勘違いしたお前の負けだ!
俺はこの一件をダシに半年は色々とコキ使ってやるからな!わはははは!
「邪悪な顔しやがって……」
「いや俺、タカとは違うから。人の飯盗ったりしねぇよ」
俺は余計な口をきいた元盗人のクソガキにアイアンクローをかました。
そうしてコースを一通り堪能した後。
俺は何となく宿に素直に帰る気になれず、夜の街をふらふらと出歩いていた。
「んー……」
こうして考えると不思議な物だ。
つい数ヶ月前まで俺は単なる過疎ゲーマーだった。
「俺はこの世界でも十傑になれてるのかね」
他の面子に聞かれたら笑われるような言葉だ。
「……」
散歩はこの辺でやめておくか。
俺は踵を返し、宿の方向へ戻ろうとした。
「うおっ!?……っと悪ぃ」
その瞬間誰かとぶつかり相手側がよろめき、しりもちをついた。
「何すんだてめぇ」
見るからに荒くれ者といった体の男がズボンについた土をはらいつつ立ち上がり、こちらを睨み付けてくる。
「ぶつかって悪かったな。じゃ」
「おい待てよ。そんなもんで済むと思ってんのか?」
「おう」
そして再び宿屋に向け歩みを進め……
「何だよ」
「何だよ、じゃねぇよ!?そんなもんで済むと思ってんのかって聞いてんだよ!!!」
「だから、おう、って言ったろうがッ!!!!」
「そんなもんで済むかどうかは俺が決めるんだよ!!!!」
あー、うるせぇうるせぇ。
じゃあ最初から聞くなよ。
「済まないのか?」
「済まないんだよ。金だ、金」
「すまんな……お前が美少女なら金くらい恵んでやったのにな……」
そして再び宿屋に向け歩みを進め……
「駄目だっつってんだろ!?帰るなよ!ちょっ……いやほんと待てや!」
「何なんだよ。そんなに金が欲しいなら美少女用意しろ」
「それただの人身売買だろうが!!!」
もう面倒くさいなコイツ……
ただ俺がぶつかったのは事実だし、目の前のコイツはまだ悪い事はやってない。
参ったなぁ。
「いやもう頼むぜ……正直俺もしんどいからアンタなんて無視して次のターゲットに行きてぇけど、それじゃあ収まりがつかねぇんだよ。有り金全部なんて言わねぇからよ……なあ?」
うーん。
まあ気持ちは分からんでもない。
「しょうがねぇな」
俺は財布から小銭を数枚取り出し、通路に投げ捨てた。
「這い蹲って拾え」
「もっとやり方ってもんがあるだろぉ!!?」
そう叫びながら小銭を拾うチンピラ。
「はははは!愚民めが!俺の施しに感謝するんだなぁ!!!」
俺はチンピラがマジ切れするよりも先に颯爽と現場から逃走した。
タカ:定期報告ーーー!
ガッテン:おー!
タカ:コース料理うっめぇwwwwwwwwww
ほっぴー:ぶっ殺すぞ
ジーク:許さん
紅羽:お前これでお土産がクソだったら三日はあの無味無臭な保存食食わせるからな
タカ:お土産は極上の確保してやっから待ってろ
紅羽:なら許す
ほっぴー:だがこの俺が許すかな!?
ジーク:許さん
ガッテン:お土産すら受け取れない俺の気持ちも考えて
鳩貴族:無理やりにでも東京に行こうか迷いますねこれは
タカ:じゃあガッテン以外は十傑全員集合かぁ
ジーク:ナチュラルなガッテンハブりはタカの特権
ほっぴー:ガッテンの事を考えたら気持ちが楽になりました!
ガッテン:もうええわ。ヴァンプレディちゃんにあーんして貰うわ。あーうまいなぁー!!!世界一うまいわぁああああ!!!たとえ缶詰だとしても世界一うまいわぁああああああ!!!!
ほっぴー:やっぱイライラしてきたわ
タカ:はやく鳩貴族さん呼んで異世界グルメ堪能しよう
鳩貴族:はい
ガッテン:はい、じゃないが
スペルマン:はいでしょ。
Mortal:タカ。明日どうする?
タカ:明日考える
Mortal:おっけー
ほっぴー:おっけーじゃねぇよ
ほっぴー:あっぶねぇ忘れてたわ。タカ、レイド戦の基礎叩き込むから個チャ来い
タカ:ギルド員さんがやってくれるよ
ほっぴー:他人任せにしてんじゃねぇぞ!!!!
ほっぴー:たとえ指揮される側だとしても知っておかなきゃ判断の妥当性が区別つかねぇだろうが!
ほっぴー:仮にもてめぇは十傑だろ!そんぐらい知っとけ!いや、知らせる!個チャに来い!
「……はあ、こういう時、妙に熱いよなアイツ」
俺はそう溜め息をつきつつも、ほっぴーとの個チャを開いた。
「十傑、だもんな」
普段なら嫌な筈の事も、今は何故か、積極的にやれそうな気がしていた。
数分後、俺は既に頭痛と後悔に襲われていた。