砂漠に集う者達
感想返しについての詳細を活動報告に載せておきましたので、お時間がありましたら、ご一読下さい。
「まず明確にすべきは今後の方針だな」
そう言いながらお代官が隣のタカから札を引く。
「そうだな。俺としちゃここを拠点として日本人を保護していきたいと考えてる」
そう言いながらほっぴーがお代官から札を引き、嬉しそうに、ペアになったカードを十傑達の輪の中心に置く。
「魔王軍はどうするんだよ」
そう言いつつ紅羽が隣のほっぴーから札をひったくり、盛大に顔を顰める。
「話を聞く限り、ここまで攻め込む程の余裕は無さそうですし、一旦スルーが無難かと」
落ち着いた表情で紅羽から札を引き抜き、揃ったカードを輪の中心に置く七色の悪魔。
「魔王うまい事殺せねぇかな。素材うまそう」
そんな物騒な事を口にしつつ七色の悪魔から札を引き、揃ったカードを輪の中心に放るジーク。
「いや~、絶対労力と釣り合わないから止めた方が良いよジーク氏~。それよりカーリアちゃんの動画どうするのさ」
ジークの放った札を整えた後、ジークから札を引き抜き、少し落胆の色をみせるスペルマン。
「全部やりゃいいじゃん。日本人も保護するし魔王軍も殺す。カーリアちゃんも救出する」
そんな滅茶苦茶な事を言いつつスペルマンから札を引き、揃った札を中心に置くモータル。
「それが出来りゃ苦労しないんだよなぁ」
モータルを呆れた視線で見つつ札を引いたタカ。
そのままの流れでお代官に札を引かせようとした、その時。
ガタン!と勢いよく扉が開かれ、砂漠の女王が部屋に飛び込んできた。
「お代官様!……あら?皆して、何をなさっているのですか?……ああいや、そんな場合では無いですわ……」
そうやって砂漠の女王は暫く一人でわたわたとしていたが、やがて整理がついたのか、ごほん、という咳払いの後に喋り始めた。
「魔王軍関係者らしき魔族が領域に侵入致しました……ただ、わたくしが思わず見落としてしまうくらいに、衰弱しています」
「……う、うぅむ。どうするかね?」
お代官の問いに、即座に三人の漢達が立ち上がり、返答した。
「「「保護してくれ」」」
「お、う……うむ。分かった。では砂漠の女王よ」
「お任せください」
その言葉を残し、砂漠の女王が部屋から去っていった。
数分後。
ズダボロになったカーリアが十傑達の前に放り出された。
「えっろ……じゃないわ。どうしたんだよカーリアちゃん」
タカに話しかけられたカーリアが顔を俯かせたまま、ポツリポツリと話し始めた。
「私……分かりません……どうして、こんな事になったのか、なんで、あの人達が必死に私を逃がしてくれたのか……」
要領を得ないカーリアの言葉に、肩をすくめ皆に視線をよこすタカ。
「……あー……っと。そうだな。一先ず、敵対の意思は無いんだな?」
お代官の問いに、こくりと頷くカーリア。
「なら良い。砂漠の女王よ。彼女に手当てを」
「分かりましたぁ」
そう言うと砂漠の女王がカーリアをひょい、と脇にかかえ、部屋を出て行った。
タカ:緊急掲示板会議~
スペルマン:ドンドンパフパフ
ガッテン:え?何?どうした
タカ:カーリアちゃん回収できたので撮影について、ちょっと、な
鳩貴族:ほう
ジーク:鳩が鳴いてる
鳩貴族:以前のお話の続きを致しましょうか?個チャで
ジーク:結構です……
ガッテン:つーかカーリアちゃんから見て俺らってどういう立ち位置なわけ?
ほっぴー:さあ?ただ、ここに逃げてきたって事は敵対の意思は無いとみていいとは思う
タカ:俺も同感だな
タカ:むしろ恩を着せたお陰で過激な衣装も着てくれやすく……
鳩貴族:素晴らしい
ガッテン:あのさぁ……
Mortal:おーい
タカ:なんだ?
Mortal:カーリアちゃんが広報部メンバーに会いたがってるってよ
紅羽:あー。ちょっと用事あるから後ででいいか?
スペルマン:俺は行けるよ~
タカ:あー、じゃあ俺も行くわ
ほっぴー:俺も
カーリアが居るらしい扉を、コンコン、とノックする。
すると、中からか細い声で「はい」と返事があった。
「失礼しますよ、っと」
タカ、ほっぴー、スペルマンの三人がカーリアの部屋に入る。
「……わざわざすみません。本当はこちらから行くべきでしたよね」
部屋の隅で体育座りをしたカーリアが膝の上から目元だけを出し、三人を見つめる。
「私は……どうすればいいのでしょう」
今にも泣き出しそうなその目に、スペルマンが取り出しかけていた衣装を慌ててバッグにしまう。
「えぇと」
おい、何とかしろ、といった視線でタカがほっぴーを見る。
「俺かよ……あー……とりあえず、カーリアちゃんは俺達の事をどう思ってるんだ?」
「……」
「んー、ここでだんまり決め込まれると困っちゃうんだがなぁ……」
ここでチラリとほっぴーがタカに目配せをした。
「俺?」
「そうだよ。なんか良い案ねぇか?」
「そうだなぁ……」
しばらく目を瞑り何やら考えていたタカだったが、やがて目をカッと見開き、こう言い放った。
「カーリアちゃん。動画撮影やるぞ」
「!!!??お前、正気かッ!!?」
ほっぴーが驚愕の表情でタカを見るが、タカは怯む様子も無くずんずんとカーリアに近づいていく。
「わ、私なんかの動画を撮ったところで……もう、広報活動の意味も無い、ですし……」
「意味は今から作る。それに、カーリアちゃん。言葉に出来ないだけで、本当は言いたい事があるんだろ?なら言えばいい。叫べばいい。あの時みたいにカメラ回してりゃ、口も回ってくるはずだ」
「で、ですが私は、もう、この世界の皆様に合わせる顔なんて……」
「違う。視聴者はカーリアちゃんの事を求めてる。見ろ、この束」
そう言いながらタカが懐から、カーリアの衣装の希望をまとめた書類の束を取り出し、目の前でパラパラと捲ってみせる。
「こ、れ……は……」
「ファンレターだ」
後方に居るほっぴーが思わずふきだしたが、カーリアがそれに気付く様子は無い。
「ファン、レター……私に」
後方のほっぴーがもう限界、といった様子で口を押さえ首を振っているが、無論、カーリアがそれに気付く様子は無い。
「皆は待ってるんだ。伝えたい事があるなら言え。こいつらがいくらでも聞いてくれる」
未だ躊躇いの残る表情であったが、意を決したようにカーリアがタカの手を掴み、立ち上がった。
「……私、やってみます」
「ああ。撮影は任せろ」
「はい!お願いします!」
そう言ってカーリアが三人に頭を下げる。
タカはそれを暫く優しげな視線で見つめていたが、やがてくるりと振り返り、ほっぴーとスペルマンの肩を叩いた。
「やれるだろ?俺達なら」
「んふっ……ああ、俺達ならやれる……くっふふ、ごめ、我慢出来ないわちょっと席外す」
ほっぴーが口元を押さえたまま部屋を出て行く。
だが未だ頭を下げたままのカーリアが、そのほっぴーの行動に疑問を持つことは無かった。