未来の話
更新頻度死んでてすまねぇ
でも、夏休みのどっかで連日更新ウィークすっからよ……!
コールト国の王都の制圧を終えた次の日。
やってきたオリヴィアの隊と入れ替わるようにして俺達は聖樹の国へと帰還を始めた。
面子は来た時と同じ、俺、モータル、ブーザー、エリー、スルーグの5人に加えて——
「いやぁ楽しみだな」
「人間関係がめちゃくちゃになるのが?」
「お前と一緒にすんな。俺はそんなことにはならん」
——コールト国の現地部隊代表として、ほっぴー。
「よくわかんねぇけどよぉ、本当に大丈夫なんだろうなぁ? 聖樹の国に着いた途端に異端審問なんか御免だぜ」
魔導車のハンドルを握りながらブーザーが心底面倒そうにそう発言する。
「1人誤魔化す程度なら許容範囲じゃという話なのでな」
スルーグに続くようにして補足する。
「仮に多少怪しまれたとて大丈夫だ。……魔女をぶっ殺すまでは。その後の入国はやめた方が良いだろうな」
ブーザーが鼻を鳴らしたのが聞こえた。
しばらく車に揺られるがまま沈黙が続いていたが、スルーグが唐突に口を開いた。
「ワシらに劣らぬだけの殺意を魔女に抱いているのは分かった」
「ん? まぁな」
殺意って優劣で語るもんじゃない気がするけどそれはさておき。
「その後の居場所の提供については……エリーはともかく、ワシは要らん」
スルーグさんには魔導車に乗り込む直前に、エリーさんと同じような説明を済ませた後だ。
その時は反応が薄かったが、内容を吟味していたらしい。
「それは……どうして」
「こっちの世界はこっちの世界で気に入っておるのでな。他の捨て子も保護したい」
「……ま、来たい時に来れるようにはしとくんで、気が変わったら言ってください」
断られたのは何か複雑な気分だが、理由もちゃんとしている。
そもそも魔女を殺した後のことを考えられている時点で前進だろうし、いいか。
そのまま聖樹の国の到着まで、車内には安寧そのものといった空気が流れ続けた。
「よくぞ帰還した」
検問を超え、レオノラ邸にて。
聖女レオノラがばっと手を広げて俺たちを歓迎するようなポーズを取る。
隣には、魔女のレプリカ。そして銀弾のドラグ。
「仕事はバッチリ済ませたぜぇ。聖女サマ?」
「把握している」
そう言うとレオノラが1枚の紙を取り出した。
「作品狩りの首尾は上々。必要なパーツも残り少ない」
手渡された紙には、見知った名。
いや、因縁の名が書かれていた。
「材料の末端である細々とした作品は私とドラグで集め切ってしまおう。残るお前達の担当……最後の大捕物はそいつだ」
その名を、古の大狼と言った。
「いやいやいや。狂狼病の対策はどうするんすか」
皆が呆気に取られ何も発言できずにいたところ中、ほっぴーが発言する。
「対策?」
「ダニの時みてぇに防護服とか駆除薬とか……」
「そんなものは必要ない」
「はぁ?」
レオノラが喉奥を鳴らすようにして笑う。
そして大げさに手を広げ、言った。
「既にあるじゃないか。治療法が」
「はぁ?」
「ほっぴー、キレすぎて例のちいさくてかわいいうさぎみたいになってるぞ」
「はぁ?」
俺に睨みをきかせつつも、他の人がいる場で聖女に噛み付く不味さを思い出したのかほっぴーが続ける。
「いくら聖女様の命令とあってもですね……死ねば治ったみたいなもん、なんてのは聞けませんよ。俺はまだまだコールト国でやる事がある」
実際はコールト国じゃなく日本だけどな。
お前の労働を領域民が待ってるぜ。
「聖女レオノラ。わしはその手の悪戯は好かん。少なくともわしらの力になるため駆けつけてもらった若人への対応として、それは如何なものか」
銀弾が薄く笑いつつも鋭い眼光でレオノラを見る。
おお、こっちもちょっとキレてんな。
「悪い、悪い。では説明しようか。狂狼病には治療法がある。誰も成し得なかった、治療法がな」
「……あぁ、そういう事か」
ほっぴーがそう呟き脱力する。
なんだなんだ。
「狂狼病は厳密には病ではない。古の大狼を起因とした呪術だ。ならば話は単純、その発生源を断てば良い」
「早い話が古の大狼をぶっ殺せば問題がないっちゅう事じゃ」
レオノラの説明を継ぐようにして銀弾が答える。
「おい」
「聖女レオノラ。お前さんは話がくどい」
「不敬罪だぞ」
「ほーう。じゃあしょっぴいてみるか? わし抜きで魔女を殺せるならなぁ」
「俺の知らん間に仲良くなってるのは良い事だけどな。さっさと指示くれよ」
そもそも銀弾のおっさんは……場合によっては討伐後に殺す事になるかもしれないのに。
悪趣味な奴だ。
「仲を深めるのは大切な事だろう? 私は魔女狩り部隊の隊長なのだからな。どんな隊員とも真摯に向き合いたい」
「……そうかよ。で? 大狼の討伐チームはどういう編成で行くんだ?」
レオノラがしたり顔で口を開く。
「まずはタカ、お前だ」
「え」
マジ?
やめとけやめとけ、俺は態度がでかいだけで別にそこまで強くねぇんだわ。
俺がいかにして自身の弱さをプレゼンするか考えている内に、レオノラが次々とメンバーを発表していく。
「ほっぴー、モータル」
「……」
ほっぴーが微妙そうな表情を浮かべる。
「スルーグ」
「ふむ」
スルーグがこくりと頷く。
「オリヴィア嬢」
今はこの場にいないはずだ。
おそらくダニの残党処理をしてる。
帰還を待てる程度には時間があるってことか。
「そして私! 聖女レオノラ! 以上を古の大狼の——」
「すみませんが、私は?」
エリーさんが口を挟む。
それを待っていたとばかりにレオノラが口角を上げつつ言う。
「ふふ。悪いが今回の部隊は連携力を重視していてな」
「私とオリヴィアさんが喧嘩をすると? 戦闘中に?」
「ああ」
「しませんよ!」
本当かなぁ。
エリーさんの表情をじっと見つめる。
「し、しません……戦闘中は」
戦闘前に揉められちゃその後の連携に悪影響が出かねないんだよな。
俺がどうにかならないか考えている内に、横のほっぴーが口を開いた。
「聖女サマ。それだけのメンバーで勝てる相手じゃないように思うんですが、何か作戦……というか、銀弾があるんですよね?」
それに答えたのは、レオノラではなくドラグだった。
「ご名答。ではわしの製造した弾丸の扱いについて解説する」
懐から取り出された書類には、びっしりとメモ書きがなされている。
「単純な戦力よりも連携力が重要である理由は、聞いていけばわかる――して、まずは調査結果その1、狂狼病の原理について解説しようか」