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後援者


 薬液が雨のように降り注ぐ中、ダニどもの呻き声を尻目に街を駆ける。


「成功だな」


 ほっぴーが周囲を見渡しながら呟く。

 確かにそうだが、まだ予断は許されない状況だろう。


「残党処理がある。それに他の街のことも」


「まぁな」


 オリヴィアの後援部隊とやらが仕事をしてくれてると助かるんだが。


 俺達のそのやり取りを聞いてか、ガッテンが不安そうな声音で口を挟んだ。

 

「止められるかな」


「知らね。どうにもならなくなったら砂漠に閉じ籠る」


「あのさぁ」


「そういうとこやぞ」


 うるせーな。

 責任取れるかこんなもん。


「徹底駆除まで付き合えるほどの余力はねぇだろ。大まかなとこまでやってやるから他は現地人で解決しろっつー話だ」


 魔女を生んだ罪、とまで言うつもりはない。

 俺らに課された責任じゃ、そのくらいが限度ってだけだ。

 

「魔女とかいうこの世界の癌は潰してやるんだからお釣りを貰ってもいいぐらいの働きだろうがよ」


「……それはまぁ、確かに?」


 潰してやると言いつつ半分くらいはこっちの世界の戦力に頼っているがそこはご愛嬌だろう。

 さて、そろそろ街の外壁が近いな。


「この後はどうするつもりなんだ?」


「行ったろ。別働隊だ。身分証はどさくさ紛れに発行できたとは言え、聖樹の国に立ち入るのは危険すぎる」


 ほっぴーが顰めっ面になりながらそう答える。


「不満がありそうな面だな」


「そりゃぶっちゃけ見に行きてぇだろ、聖樹の国。ゲームタイトルにもなってるし」


「そんな良いとこではねぇぞ。ゲーム時代の初期村とは全然違う」


「初期村には聖樹なんか生えてなかったろ。聖樹の国の支配下ってだけの辺境だったんじゃねぇの?」


 確かに。

 異世界からサルベージした情報つってたからなぁ。

 魔物に関してもどこまで信用していいものやら。


「その辺の考察は私がやりますよ」


 そんな鳩貴族さんの言葉と同時に、俺達は関所へ着いた。

 もはや検問をする者などいないその場所を抜け、キャンプ地へと進む。


「帰ったら報告会なんで。お代官さんも入れたいから掲示板魔法の方でよろ」


 各自から、疲れ切った声が返ってきた。





ほっぴー:成果報告を行いまーす


お代官:おお、待っていたぞ


お代官:その様子だと上手くいったようだな?


ほっぴー:はい。マザー個体を撃破して花火ぶち上げました


砂漠の女王:薬剤は機能していましたか?


ほっぴー:当然。まぁ完全に殲滅できたかは怪しいけどなー


お代官:生存者の確認はどうかね?


ほっぴー:中心部はもう全員ダニにやられたように見えましたけどね……これ以上の救助活動は薬剤が浸透しきってからになると思います


お代官:ふむ、そうか


ほっぴー:問題はこっからなんすよね。別働隊やるにしてもどこまで動けるのかが


タカ:え、そこ計画してねぇの?


ほっぴー:まぁ、はい。ぶっちゃけ魔女の作品ってどのレベルの強さ?


タカ:無限ダメージ増加コンボ使っても死にかけるレベル


ほっぴー:なるほどね。何から聞いていこうかな


ジーク:とうとうタカがバグ技使い始めたと聞いて


紅羽:それマザー個体戦でやれや。出し惜しみすんなカス


ほっぴー:とりあえずアレっすね。なんすか? そのコンボ


タカ:悪化のギフト持ちと組む必要があるんだが


タカ:悪化のギフトの効果はざっくり言うとエクストラダメージの増加でな


タカ:んで俺の呪術の上乗せダメージもエクストラダメージ扱いなんだわ


ほっぴー:はい……はい?


ジーク:ぶっちゃけタカの呪術よくわかってない


砂漠の女王:呪術と呼ぶにはあまりにも稚拙ですけどね


タカ:うるせぇな


タカ:何回か言ったけど相手が俺を格上だと思ってれば思ってるほどバフが入る


タカ:で、まぁ俺って常に態度でかいじゃんか


ガッテン:本当に、そうですね


ほっぴー:うん


ジーク:そっすね


タカ:呪術のせいなんだけどさ。まぁそれで相手が俺のことを格上だと誤認したとするじゃんか


ガッテン:待て待て待て


ジーク:^^;


ほっぴー:は?


タカ:その時、相手に対して「俺の本来の攻撃の威力」=「相手が俺を買いかぶってる分の威力」になるように「呪術で補強された威力」が上乗せされるわけよ


ほっぴー:何事もなかったかのように続けるな


ガッテン:すみません態度の件でお答えいただきたい点があるのですが


ジーク:^^;


タカ:んでさっき言った通り「呪術で補強された威力」はエクストラダメージなわけじゃん?


ガッテン:わけじゃん? ではなくてですね


紅羽:どんだけ触れたくねぇんだよその話題によ


ほっぴー:なぁ


ジーク:^^;;;;;;


タカ:ここで悪化のギフトによるバフにより、「俺の本来の攻撃の威力」+「呪術で補強された威力」>「相手が俺を買いかぶってる分の威力」になるのよ


タカ:で、こうなると


ジーク:なぁコイツって無敵?


ガッテン:態度がでかいってレベルじゃねぇぞ


ほっぴー:おい、誰かこいつのテント破壊しろ


紅羽:わかった


七色の悪魔:待ってください、一応貴重な備品なのでテントはやめてください


鳩貴族:そうですよ


タカ:で、こうなると「相手が俺を買いかぶってる分の威力」は上方修正されるじゃんか


紅羽:こいつテントにいねぇぞ


ほっぴー:なんで?


ガッテン:怖くなってきた。こいつほんとにタカか?


ジーク:インターネットの妖精?


鳩貴族:確かにインターネットを冠するだけの邪悪さはありますね


タカ:でも「俺の本来の攻撃の威力」+「呪術で補強された威力」>「相手が俺を買いかぶってる分の威力」、この式は変わらない。そうなると……?


ほっぴー:そうなると……?じゃねぇよカス、正体を現せ


ジーク:正体を現せで草



お代官:なるほど、それで無限コンボか


砂漠の女王:お代官様?


ガッテン:お代官さん?


ほっぴー:絶望してる


ジーク:これバッドエンド入った?





お代官:いやあのね。確かに問題発言はあったがね? 脱線しているのはタカくんではなく君たちではないかね?


お代官:タカ君は少なくとも当初の質問に丁寧に答え切っただけだろう


ほっぴー:………………


ガッテン:た、確かに


砂漠の女王:やはりお代官様は慧眼ですわね、跪いて詫びなさい愚民


スペルマン: >砂漠の女王:お代官様?



 スペルマンが退室しました。



ガッテン:BANはよくないとおもいます


ジーク:そこ水面下で小競り合いし続けてるの何?


タカ:でもまぁ懸念点もあって


ほっぴー:ちょっと待って、嘘でしょ?


お代官:タカ君……?


タカ:逆に俺を侮ってる相手には無限に火力が下がり続ける可能性があるのよ


ガッテン:もう誰も君のこと侮ったりしてないよ? 出ておいで?


ジーク:壊れたラジオ?


タカ:図式でもう一回やるけど


ほっぴー:もういい、分かった。お前少し休め




Mortal:なんかタカが木の上で笑ってたから捕まえたけど、これでいいの


ほっぴー:よし殺せ


ほっぴー:高度な精神攻撃仕掛けやがってこの野郎


ジーク:最悪な見つかり方してて笑う


ほっぴー:クソボケ悪戯猿が。殺すぞほんま


ガッテン:もうそいつ難民キャンプの中心に吊るしとかね?


紅羽:根性焼きするか


鳩貴族:魔女の作品の強さについて聞き出すまで拘束お願いします


七色の悪魔:ところでスペルマンさんのBAN……


砂漠の女王:え? あぁ、はい。後で戻します


お代官:今すぐ戻してあげなさい


砂漠の女王:どうせすぐあの阿呆を中心に集まるから関係ないかとも思ったのですが……お代官様が言うのであれば

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