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十傑きってのサボリ魔


タカ:ログボが実装された


ガッテン:は?


ジーク:マ?助かるわ


ほっぴー:ログボ× 給料○


ガッテン:え……?こんな時にも仕事やってんの……?


スペルマン:俺は魔王軍広報部に転職した!もう締め切りに追われる日々は終わったんだ!はっはっは!


タカ:はい。つまりはそういう事だ


ガッテン:は?


ジーク:裏切り者やん。晒すね


ほっぴー:待てよジーク


紅羽:敵の内に入って情報収集するんだよ


タカ:そうそう。決して裏切った訳じゃない。だから晒しはマジでやめろ


ジーク:ほんとぉ?


タカ:余談だが、カーリアPR動画第二段撮影の予定もあるよ


ジーク:無編集の動画データで手を打つ


タカ:おk


ほっぴー:他の奴等もそれでいいよな?


ガッテン:酷い闇取引を見た


七色の悪魔:異論無しですね


Mortal:いいね


鳩貴族:うむ


ガッテン:お前ら……!


タカ:よし。じゃあガッテン以外の皆には撮影し次第動画送るから


ガッテン:おい待て


タカ:あ?


ガッテン:欲しいです


ほっぴー:は?


タカ:は?


ガッテン:カーリアちゃんのえっちな動画欲しいです……


ジーク:草


タカ:そういやお前、ヴァンプレディ当ててたよなぁ?そいつの前で同じセリフ言ってこいや


ガッテン:え、いや、それは……つーかまだ根にもってんのかお前!?


タカ:無論証拠動画付きでな!いやー、俺はいいんだけどな?別に送らなくても。編集済みの比較的健全な方を楽しんでりゃいい。それで満足なんだろ?お前は。だってヴァンプレディ当ててるもんなぁああああ!!!?


ジーク:めちゃくちゃ根に持ってて笑う


ほっぴー:タカ……涙拭けよ


タカ:うるせえばーかばーか!


ガッテン:う、ぐ、ぐ……見たい、けど俺の嫁はヴァンプレディちゃんって決めたんだよ……!


タカ:はっ!そう言うと思ってたよ!クソが!グールちゃんのお腹ぐにぐにしながらふて寝してやる!


ジーク:きもちよさそう


鳩貴族:ほう……グールですか……貴方もとうとう理解しましたか。あの可愛さ


ほっぴー:グール愛好過激派だ!逃げろ!


紅羽:は?フェアリー系列の方が可愛いわ。冗談は普段のサムい駄洒落だけにしとけ


ジーク:過激派しかいないんだよなぁ


タカ:流石ザントマン二体持ちは言う事が違う


紅羽:今からお前の居る倉庫にドラゴンブレスぶちかまします


タカ:普通に死ぬのでNG


スペルマン:フォーカススペルした方がいい?


タカ:やめろ!死ぬつってんだろ!いやほんとに!











「はー……」


 俺はいつもの倉庫でグールの腹を枕に優雅なひと時を過ごしていた。


「どうするかなー……グールお前さ、進化したいか?」


「うー」


 なるほどなー。


「あーうう。ぐるぅ」


 わかるなー。



 そんな和やかな会話に水を差すように倉庫の扉が開かれる。


「……おい、タカ。何やってんだ」


「おお、ほっぴー。どうした」


「カーリアに頼む素材の種類どうする?」


「んー……まあゾンビ系統かな」


 むしろそれ以外の素材を貰っても困る。


「了解。じゃあ要望書まとめとくわ」


 おう。よろしく。




 ……なんで普通に事務作業やってんだアイツ。


「お、タカ氏~」


 ほっぴーが開けっ放したままの扉からスペルマンがひょこっと顔を覗かせた。


「ん?」


「タカ氏、動画編集できたりする?」


「いや全く」


「うーん。じゃあタカ氏の役職どうしよう」


 役職?


「そうそう。ほっぴーは事務。というか要望をまとめる係?みたいなので、俺は動画編集と撮影」


 何マジで広報部運営しようとしてんの?敵に塩送ってるどころの騒ぎじゃねぇぞ?


「でもタカ氏だけだよ?役職決まってないの。このまんまじゃ無職じゃん」


 いいんだよ無職で。というか、そうなると紅羽も無職じゃねぇか。


「紅羽氏は演出係だよ」


 あー……一応ギター弾けるみたいだしな。


 こいつは困ったな。こうなっちゃうともう俺は自爆する事しか出来ない。


「いやもっとあるでしょ!?……えーと、ほら」


「じゃあ企画提案係ってどうよ」


「うーん……それ皆やる事だよね……?タカ氏、業務サボって甘い汁だけすすろうとしてない?」


「全然そんな事ないぞ!」


 おいおい真面目という概念が服着て歩いた結果が俺、ともっぱらの評判の俺だぜ?


「タカ氏、誤魔化すのすら面倒臭くなってない?」


 なってない、なってない。ただ働くとか萎えるなーって思ってるだけで。


「やっぱ面倒臭がってるだけじゃん!仕事!しかも人類の未来がかかってる重要なやつ!」


 俺は身内の人間守れりゃそれでいいんだよ。


「仮にそうだとしても、業績残さなきゃ捨てられちゃうって!」


 まあ、一理あるわな。

 仕方ない。


 グールのお腹を名残惜しく思いつつも立ち上がる。


 じゃあ、行くか。


「おお、タカ氏がやる気に……!」


「ちょっと参考資料探してくるわ」


「参考資料……?」


「ほら、撮影とかの参考になりそうな、な?」


 俺はわはは、と笑いながらスペルマンの肩をぽんぽん、と叩き倉庫を出た。


 適当な時間まで、妹を避難させてた空き家でごろごろしとこう。











 空き家の前に着くなり、扉の前で妹に立ち塞がれた。


「お兄ちゃん。仕事は?」


 おいおいどうした薫。仕事なんてとっくに済ませたぜ?


「嘘でしょソレ。紅羽さんが絶対サボりに来るって言ってたもん」


 紅羽のやつ、この短期間で俺の行動パターンを……!?


 まあ待つんだ薫。そうだ、少し話を聞いてくれ。

 アリって知ってるか?知ってるだろ?そう、あの地面に巣を掘ってるアリだ。

 アリって言うと働き者の代名詞みたいなイメージがあるが実際はそうでもないんだ。

 一定の割合、怠け者……つまり、仕事をサボるやつがいるんだ。これは仮に怠け者を全て排除したとしてもまた同じ割合で怠け者が出てくる。

 ここから何が読み取れるか、賢い薫なら分かると思うが__


「出た。お兄ちゃんの早口弁明」


 おいおい、喋る速度は関係ないだろ。

 重要なのは話の筋が通ってるかって事だ。


「……それと同じ事、ゆうちゃんに言える?」


 ゆうちゃん?……ああ、紅羽の本名か。一瞬分からなくて戸惑ったわ。

 いやいや、そりゃアイツは働き者の側だから、言わずとも俺がサボる事の必要性をだな……


「だってさ、ゆうちゃん」


 え?

 

 妹の手に握られていたのは、通話中、と表示されたスマホだった。


『よう、タカ。あんなに長々と喋ってえらく暇そうだな。あたしの魔法の熟練度上げの的役にでも就職するか?』


「いっけなーい!仕事思い出しちゃったー!てっへぺろー!」


 俺はその場から逃走した。


 次は避難所の方にでも行ってみるか。




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