幕間:領域トラブルバスターズ⑥
七色の悪魔が帰還した時に聞こえたのは、一面の歓声だった。
「……」
今まで書類の上でしか認識していなかった、自分たちが守ったらしい人たち。
周囲には黒焦げになった魔物らしき姿と、術を行使した様子の紅羽さん。
「なるほど。あちらはあちらで苦労があったようですね」
魔族の首が刺さった剣をぐっと持ち上げてみると、より沸き立つ声。
さて。
大きく息を吸う。
「我ら人類は、もう、一歩たりとも退かないッ!」
「「「「ぉおおおおおおおお!!!!!」」」」
大半は私が何を言ったかなんて関係ないでしょうけど。
それでも何か言いたくなってしまいました。
「こういうセリフ回しは、私も好物ですからね」
皆さんも、そうでしょう?
「ぶるっ」
ペガサスが、肯定を示すように鼻を鳴らした。
お代官:さて、今回の襲撃について各班の報告を聞こう
お代官:まず、農地A区のジーク君
ジーク:暴徒が十数人。人間だ。全員捕縛した
お代官:む
ジーク:魔術によるものじゃなく、魔族から吹き込まれた偽の情報を鵜呑みにして殴りかかってきた感じだったよ
お代官:それは……その後の処遇に困るとこだな……
ジーク:放逐すんのも気が引ける、こっちで働かせるには住民のヘイトを買いすぎ
ジーク:アルザはさっさと殺そうって言ってるけど。俺個人としては何とかして欲しい
お代官:うぅむ
ほっぴー:難解な議題は後回しにして先に報告済ませねぇか?
お代官:そうだな。では、農地B区のガッテン君
ガッテン:偵察っぽい魔物が来た
ガッテン:逃げられた
ほっぴー:はい無能~~~~~~~
ほっぴー:カス
ガッテン:言い過ぎじゃなぁい……?
ほっぴー:いや最近タカが浮上しない分攻撃性二倍にしとこうかなって
ジーク:負の遺産すぎる
ガッテン:なんか、こっち見てすーぐ撤退されちゃって
お代官:うーーーむ。敵の本拠地を探らねばならんなぁ
お代官:次、カーリアから直接受けた報告を書き込むぞ
お代官:偵察魔物4体を発見、撃破
お代官:その後、工業区へ助太刀に向かった
お代官:以上
ほっぴー:ナイスゥ!
ジーク:さすリア
ガッテン:飛行能力、飛行能力さえあれば……
ほっぴー:うるせぇ気合いで飛べ
ガッテン:無理でしょ
ジーク:タカは戦闘中によく飛んでるからガッテンもいけるよ
ガッテン:アレは吹き飛ばされてるだけだろ!!!!!
お代官:ごほん
ほっぴー:話脱線させんなタカ
ジーク:ほんとにね
鳩貴族:ログを辿られて散々に噛みつかれる景色が見えますね
スペルマン:今だってROM専してるだけかもよ
ほっぴー:タカが堪えられるわけないだろいい加減にしろ!
ジーク:エース並みにすぐレスバに乗っかるからな
お代官:次!!!!! 農地D区の報告!!!!!!!!
ジーク:なかなか会議が進まないのでお代官さんが怒ってしまいました
ほっぴー:タカのせいです、あ~あ
タカ:ぶっ殺すぞ
ほっぴー:!??!!?!?!!?!?!???!?
ジーク:ハァ……ハァ……
タカ:敗北者……? じゃねぇんだよ
タカ:人がちょっと修行してる間に好き勝手喋りやがって
ジーク:自分のことまだ人と認識してて草
タカ:草じゃねぇよぶっ飛ばすぞ
ほっぴー:飛ばすなら是非ガッテンをお願いします
ガッテン:は? 巻き込むな
タカ:わかった
ガッテン:わからないで
スペルマン:よくわかんないけど、是非ガッテンが似非ガッテンに見えた
ほっぴー:飛べないガッテンは似非ガッテン
ガッテン:俺に何を求めてるんだよ。ジョブ:重戦士だぞ。飛翔から一番遠い位置にいるだろ
お代官:なあ、おい
鳩貴族:お代官さんが聞いたことのない口調に……
ほっぴー:これはかなりキてますね……
七色の悪魔:すみません、私が即座に報告にうつることができていたら
お代官:七色の悪魔君は本当に一ミリも悪くないので大丈夫だ
お代官:タカ君
タカ:すみませんでした
お代官:集中しなきゃいけない状況だったのかもしれないが、そうなる前にちゃんと報告しなさい
お代官:一日二日とは言え、君はまだ子供だから
お代官:危険な任務を強いている私が言えたセリフではないのは理解しているが、それでも心配なのだよ
タカ:今後はちゃんと連絡します
ジーク:ほんとぉ?
タカ:あぁ? コラ
お代官:はい報告戻りまーーーーす、七色の悪魔君ーーーー!
七色の悪魔:はい。魔族二人と遭遇。片方は死亡、もう片方は逃亡しました
紅羽:は!? 二体!?
お代官:えっ
お代官:よく無事で帰還したな……紅羽君と一緒だったのは不幸中の幸いか
七色の悪魔:一人は黒衣をまとった魔族。人形なる物を用いて死を防ぐ術を使用していました。攻撃手段は状態異常。またネクロマンスにもある程度通じている様子でした
七色の悪魔:もう一人は、死体に憑依しているらしい魔族。死体の見た目は一対のねじれた角が生えた男。黒衣の魔族を瞬殺しました。本人談では領域侵攻には反対していたそうです
お代官:反対、か。その言い方だと残党はまだまだいそうだな
お代官:次、工業区
鳩貴族:おそらくこちらが本命だったと思われます。魔族一体と大量の魔物が攻め込んできました
お代官:カーリア越しにある程度聞いている。苦労をかけた、すまない
スペルマン:バフで支援しまくった百人の軍勢とカーリアちゃんがいたから普通に圧勝だったよー
お代官:え、百人も?
鳩貴族:工業区は、戦闘員上がりが多かったので
スペルマン:あとアレだね、皆がカーリアちゃんの加護刻んでたから、雑魚の遠距離攻撃全部弾けたのが大きい
お代官:なにそれしらない……
スペルマン:刻風の新しい境地だー、とか何とか言ってはしゃいでたよ
鳩貴族:刻まれた者が複数集まることで矢避けの結界が発生し、人数に比例して強度が増す設計のようです
お代官:ほうこくされてないんですけど……
鳩貴族:身体に何かを刻むことを忌避する文化がある民族だと知っていたから黙っていたようですよ
お代官:うーーーーーーーん、正しく学習してはいる! いるけども!
お代官:カーリアは一度、私の部屋に招くとするか……話を聞いて、場合によっては全領域民に施術したい
砂漠の女王:その時はわたくしも同席させてくださいまし
お代官:あーーー、うむ。わかった
ジーク:拒まなくていいんですか?
お代官:いや、拒んだところで隠れて覗いてくるだけだしな
ジーク:ああ……
ほっぴー:ヤンデレ被害者の会だ
ジーク:タカさんの入会が近いらしくて、楽しみにしてます
タカ:俺は入らん。絶対にな
ガッテン:フラグじゃん?