求心力の変わらないただ一つの方法
ほっぴー:近いぜ
タカ:は?マジかよお前
スペルマン:東京やばい。端っこの方ちょろっと通っただけなのに死にかけた
ガッテン:やっぱ首都だから力いれてんじゃね?
ジーク:鳩貴族さんの説推すなら東京も同じ程度の強さの魔物が出てるはずだけど
タカ:プレイヤーの質が高いのかもしれないな。それに合わせて難易度が上がった、とか。
鳩貴族:どうもそんな話は聞かないが……ふむ。何かパーツが一つ足りない、のか?
タカ:ちょっと話し合い始まるんで反応死ぬ
「ここが僕らの拠点です」
「ご丁寧にどうも」
学校の敷地をばたばたと忙しそうに戦闘員が駆け回っている。フェアリーは高さ関係なく侵入してくるからな。処理が大変なのだろう。
「こっちです」
西川さんに促されるまま、グラウンドに設置された一つのテントの中へ入る。
「皆さん。こちらが周囲の魔物を駆除してたというタカさん」
「……意外に若いな」
「よろしくお願いします」
見定めるような目でこちらを見つめてくるおっさん2人組み。おっさん多すぎだろ。
「こちらが巡回部隊の隊長の佐渡さんで、こっちが倉庫警備隊の隊長の尾崎さん。そして知ってると思うけど、僕が総隊長の西川だ。改めて、よろしくね」
ぶっといゲジ眉にタラコのような唇したのが佐渡さんで、意外に長身で線で書いたみたいな薄い顔してる方が尾崎さんね。はいはい。
「なんか失礼な事を考えられとる気がするんは気のせいか?」
「気のせいですよ」
「えらく否定が早いな……」
若いから頭の回転が速いんだよ。
「さて、西川さん。俺はどうすれば?」
「情報が、欲しいんです。我々としても貴方を信用したい……ただ、現段階ではタカさん、貴方に関する情報があまりにも少ない」
おいおい、ちょっと前までのおどおどした様子はどうした?
こんな自らの味方で囲まれた場所に連れ込んどいて情報を吐けってか?思った以上にやり手じゃねぇかよ。驚いたぜ。
「……普通、そういうのは口に出さないものなんじゃないですか」
「うっかり心の声が、な。まあいい。情報提供してやるのは俺もやぶさかじゃねぇぜ」
「ならいいんですが……」
「どういう情報が欲しい?ただ俺はお前達が思うほど上等な情報は持っちゃいないぜ」
「たわけが。お前、妙なジョブについとるな?」
吐き捨てるような佐渡のセリフ
……さて、と。どっちの意味だろうな。
「盗賊とは一線を画すような機動力をもっとるそうだな?」
「ああ。単にレベルの差ですよ」
俺の発言に佐渡の眼がギラリと光る。
「レベルとは、なんだ」
そこからかよ。
いやそう言えばそうか。見えないんだったな。
「ツイッターで魔王軍幹部の動画を見ませんでしたか?その時に分かった概念です」
「御託はいい。具体的にはどういうものなんだ?」
「魔物を殺せば殺すほど強くなる」
俺の言葉に黙り込む三人のおっさん達。
いや予想できてただろ。
「そりゃまあ……うぅむ」
「……他には?」
「他も何もないですよ。俺は魔物を殺しまくったから強い。それだけです」
「……」
俺含め四人がテントの中でただただ黙り込む。
何の時間だよ。
その時だった。
静寂を打ち破るような破壊音。
それに続く誰かの悲鳴。
「うわああああああああ!!!!」
「何だ!?まさかあのデカいのがもうここまで……ッ!?」
「西川さん!とりあえず外に!」
「はい!佐渡さんと尾崎さんは住民の避難誘導をお願いします!」
「おう!」「分かりました」
それだけを言い残すと、俺と西川さんはテントを飛び出した。
見れば、破壊されたバリケードと必死に応戦する俺の弟子含む戦闘員。
「俺がやります!他は退いて!」
「タカさん!?」
相手はシルフィード程では無いが初心者ならあっさりやられてもおかしくない、コロボックルという人の二倍はあろうかという体躯を持つ魔物である。
「ブレイドダンス!諸刃の構え!」
待ってたぜ……この時をよ!
じゃあ始めるとしようか――――自作自演を。
結果としてあっさり倒せた。というか俺が手を出さずとも倒せていた可能性が高い。犠牲の有無は兎も角。
「……想像以上だ。タカさん」
「まあ、このくらいじゃないと例のデカブツなんて相手に出来ませんから、ね」
あっさり、というか俺が数回殴っただけでコロボックルは死んだ。
わざわざ見つけてきた苦労になんだか釣り合ってない気もするが……まあこうでもないと死者が出かねなかったので仕方が無い。
「ははは……図らずとも、我々は貴方と肩を並べるには力不足だと証明されてしまったようです」
彼らが助力を申し出る事も、こちらの実力を疑うのも、予想できていた。
だから俺は、事前に見つけた強レアエネミーのコロボックルを指定の時刻にここに来させるように新規で練成した魔狼に命令していた。
実力を示し、ついでに避難所を救って恩も売る。完璧な作戦だ。
「ええ、まあ。今の戦闘についてこれないのなら、正直言って邪魔にしかなりません」
「……アレには、いつ攻撃を開始するおつもりで?」
「援軍の到着タイミングによりますが、最低でも明日には」
「分かりました。ではこちらは避難誘導に専念させてもらいます。あと、あの二人の説得は僕のほうからやっておきます」
そう言うが早いか、西川さんは駆け足で校舎の方へ去っていった。
そして西川さんと入れ替わるようにしてベガがこちらにやってくる。
「師匠……師匠ってやっぱ異常者なんスね」
「強いんですねとかもっと他の言い方があるだろ!?」
俺がそう返すとベガがちろりと舌を出した。グールの件の仕返しか。いい度胸じゃねぇか。
「普段だらけてるから忘れかけてたんスよ。なんつーんスかね。高低差がありすぎて引くというか」
「はっはー!いい度胸だ!今はあのデカブツの討伐準備があるから今は見逃してやるが後で覚えてろよ!」
俺はそう捨てゼリフを吐き、去り際にコロボックルの素材回収を頼むと避難所を後にした。
タカ:ほっぴー。調子はどうだ?
ほっぴー:おう。ちょうどいい時に
タカ:もしかして着いた?
スペルマン:まあ、着いたね
ほっぴー:タカお前さぁ、シルフィードの居る方向くらい教えてて良かったんじゃねぇの?
ジーク:あっ……(察し
ガッテン:おい嘘だろ。まさか
ほっぴー:お前らより先にシルフィードとご対面だぜ。いやあ素敵だなぁ!絶賛撤退中だぜ!
紅羽:はあ!?おいちょっと待て今すぐ行く
タカ:嘘だろお前。クソが、俺も準備する
ガッテン:ホウレンソウって大事だな……