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無策無鉄砲


 扉を背にし、少し目を瞑る。

 さて、策を練るか。


 魔女がダニを引っ込めさせるにはどうするのが効果的だ?

 魔女は何なら大切にする?


「公平性、とかか?」


 いや違うな。

 魔女は、公平な勝負をさせたいのではなく、平等な勝負をさせたいんだ。

 だからダニのような弱者にはいくらでも与えるし、俺達には何もくれやしない。


「……困ったな」


 俺一人じゃ無理だ。

 

「モータル。周囲に人はいるか」


「スルーグがいるよ」


「うん知ってる」


 そうじゃねぇよ。


「俺が魔法を起動しても大丈夫そうか」


「うん」


 よし。







タカ:はい会議の時間です


七色の悪魔:今はちょっと厳しいのではないでしょうか


タカ:え、なんで


七色の悪魔:ヤワタさんが回復したので、ほとんどがそのお祝いにいっています


タカ:あーーーーなるほど?


タカ:そりゃすっげぇめでたいんだけどさ、こっちちょっとヤバめの状況でさ


七色の悪魔:ふむ


タカ:相談乗ってくんね


七色の悪魔:私もそろそろ離席するのですが


タカ:じゃあもう誰でもいいから俺の相談にのるよう言っといてくれ


七色の悪魔:分かりました




 一旦掲示板魔法を閉じ、その場であぐらをかく。


「モータルはさ、魔女のことをどう思う」


 モータルがんー、と小さく唸る。


「自己完結してる」


「あー、そうだな」


 魔女の世界にいるのは魔女だけだ。

 だからこそ厄介だ。こちらがいくら理屈を並べようが、魔女には通用しない。

 外の理なんて知ったこっちゃないという訳だ。

 説得するなら、魔女を巻き込む形の理屈を使わなきゃならん。


「他には?」


「え? うーん……タカの事はちょっと気に入ってたよね」


「そうだな」


 そこはつけいる隙になるか……?

 俺としては後が怖いからその辺の要素は使いたくないんだが。

 エリーさんだけでも、もうしんどいのに、更に爆弾が増えたらもう処理できない。


「……そろそろ反応がある頃か」




タカ:はい、誰かいますか


ガッテン:いるけど相談はききたくないです


タカ:実はな、魔女に会いに行く事になってさ


ガッテン:あれ、俺ちゃんと書き込めてなかったのかな?


タカ:俺らの世界の本を持っていって、交渉をしようと思うんだが


ガッテン:すいませーーーーーん!!!!! 聞こえてますかーーーーー!!!?


タカ:まずこっちの要求を優先度順に並べるぞ


ガッテン:もおおおおおおおおお!!!!


タカ:牛の、嘶き……?


ガッテン:なんでそこだけ届くんだよ


ほっぴー:久々にガッテンの鳴き声が聞けるってマジ?


ジーク:ちょっと待って秘蔵のポップコーン取ってくる


ガッテン:本腰入れて楽しもうとしてんじゃねぇ


タカ:よし、ガッテンの鳴き声で集まってきたな、お前ら全員意見出すまで帰さんぞ


ほっぴー:え、怖……


ジーク:策士すぎる


ガッテン:言うほど策士か????


紅羽:なんかアレだよな、あえて悲鳴を出させて仲間が助けに来るのを誘ってそいつも食い殺す、みたいなキツめの怪物いるよな


タカ:誰がキツめの怪物だ


ほっぴー:タカでしょ


タカ:ぶっとばすぞ


ジーク:草


ガッテン:でもお前ら、順調に釣り出されてるよ?


紅羽:あっ


タカ:よし、皆さんお集まりのようで


ジーク:やる気がないので帰らせて


タカ:それ生徒側から言うことある?


紅羽:もういいからはよ相談しろや


タカ:あー、ごめんごめん


ほっぴー:魔女になんか要求するんだろ?


タカ:そうそう。まず最優先のやつ。今俺が居る街に撒いたダニの全回収


ほっぴー:字面だいぶ面白いな


タカ:ごめん、もうちょい詳しく書くわ。解錠魔法使えるダニの全回収


ジーク:字面だいぶ地獄だな


ガッテン:え、ダニが宝箱とか開けてくれんの? どういう事?


タカ:施錠した扉が勝手に開くし、街に張られた結界も開く


ほっぴー:もう無理だろそれ。帰ってこい


タカ:いやだ


鳩貴族:結界が脆弱すぎませんかね?


タカ:ダニの性質が異常すぎるんだよ


鳩貴族:ふむ


ほっぴー:結界張り直せばいいんじゃないの


タカ:んな事頼んだら、ダニの存在も国に伝えなきゃならん。街ごと駆除される


ほっぴー:あーーーーはいはいはい、把握した


タカ:破られる前に、秘密裏にケリをつける


鳩貴族:魔女が意図的に撒いたのですよね? どういう手法で説得するつもりで?


タカ:それを相談しに来たんですけど


ガッテン:えぇ……


鳩貴族:それはまた難題ですね


ほっぴー:魔女がそれを撒いた目的にもよるな


ガッテン:確かに


タカ:目的としては、色んな種族に平等な状態で殺し合ってもらうこと


ほっぴー:は?


ジーク:キツめの怪物じゃん


ガッテン:キツめどころじゃねぇだろ


ほっぴー:頭痛くなってきた


鳩貴族:つまりは魔女の夢の実現の一要素というわけですよね? 説得は不可能では?


タカ:それを何とかするんだよ


ほっぴー:何とかなんねーよ、アホか


鳩貴族:駆除方法を考えた方がマシに思えますが……


タカ:駆除方法についてはレオノラが考えてくれてる


ほっぴー:あー……そうか、お前の知識も見てるしな


鳩貴族:説得に使える札は何がありますか


タカ:俺らの世界の本


ほっぴー:うーーーーーーん、無理くせぇなぁ!


鳩貴族:他には?



タカ:俺


ほっぴー:うぬぼれが過ぎるだろ


ガッテン:草


ジーク:コピペネタにして積極的に使いたい


タカ:だから言うの嫌だったんだよクソが!!!!!


鳩貴族:いや、一応、魔女のお気に入りみたいですし、可能性はゼロではないかもしれません


タカ:そこ含めて嫌なんだよ!!!!


ほっぴー:じゃあタカを使う方針で


ガッテン:具体的にどういう方針だそれ


ほっぴー:タカが自己アピールを駆使しつつ口先で誤魔化してちょろまかす


ジーク:いつもの


ガッテン:やっぱこれだね


タカ:本気で言ってますか????


鳩貴族:作戦がないのが作戦ですね


タカ:本気で言ってますか?????????


紅羽:あ、言い忘れてたけど、薫の説教ゲージめちゃくちゃたまってっから帰ってきたら覚悟しとけよ


タカ:本気で言ってますか!?!?!!??????!?


ほっぴー:笑う


ガッテン:真に迫るものがある


鳩貴族:家族はちゃんと労わらなきゃダメですよ





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