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戦略を練る者達


「なかなか面白いな」


 パチッと音を立て将棋の駒が盤面に置かれる。


「あ、それ二歩なんでアウトです」


「何だそれは!?」


「あ、やっべ……えーと、同じ縦列に歩を複数置いたらアウトなんですよ」


「そんな重要なルール、最初から教えぬかッ!」


「すいません……」


 オークエンペラーがそそくさと先ほど置いた歩を回収する。

 そしてうんうんと再び悩み始めた。


 今現在、俺はオークエンペラーと将棋を指している。

 大発見、と称したこの将棋盤であったが、タネを明かしてみればなんてこともない。

 人間の捕虜達の忘れ物である。


「これでどうだ!」


 パチリと音を立て飛車が豪快に動かされた。


「その移動なんか意味ありました?」


「分からん!」


 ぶっちゃけ俺も分からん。

 駒の動かし方や最初の配置を記憶してはいるが、それだけだ。

 対局経験は小学生の頃に数度友人とやってみた程度で、詰将棋に至ってはまるで経験がない。

 これが初対局であるオークエンペラーよりはマシだと思いたいが……


「……うーん?」


 紐付けやら攻めは銀、守りは金などのお決まりのフレーズが頭に入ってはいるが具体的にどういう動きなのかについてはサッパリだ。

 あー、シャドバならバハムート1枚で解決なのに。


「今一瞬寒気がしたんだが気のせいか?」


「気のせいでしょう」


 さて、俺の持ってる札にバハムートはない。どうしたものか。

 手遊びに、所持する2個の歩を手の中でカチカチと鳴らす。


「じゃあこれ」


「ほう!今の動きはどういう意図が?」


「分かりません」


 戦いが低レベルすぎる。


「ここで飛車を突っ込ませたらどうなる?」


「ここの桂馬にとられて終わりですね」


「ふむ……」


 オークエンペラーが盤面をカッと睨みつける。


「分かったかもしれぬ」


 え?マジ?


「何がですか」


「王の周りに駒を固めれば強いのではないか?」


「おー」


 なんか聞いたことある。

 穴……穴なんちゃらだ。


「フハハハ!やはり我は戦いの才能があるようだなぁ!」


 数分後、配置がガバガバだったので普通に俺が勝った。









タカ:オークエンペラーと将棋してきたよ


ガッテン:お、おう……


タカ:なんか避難民からの押収品だったみたい


ガッテン:まぁ冷静に考えりゃそうか


ほっぴー:え?将棋のルール知ってたの?


タカ:オークエンペラーは知らなかったから俺が教えた


ほっぴー:ほーん


紅羽:勝ったの?


タカ:おう


鳩貴族:戦ってみた感じはどうでした?


タカ:うーん?普通に素人同士の低レベルな戦いだったぞ


タカ:あーでもアレだ。穴なんちゃらって戦法あんじゃん?


タカ:あれ自分で思いついてやってたよ。配置ガバガバだったから駒食い放題だったけど


鳩貴族:ふーむ、そうですか


ほっぴー:まぁ王囲んだら強くね?程度なら小学生でも思いつくし……


スペルマン:なるほど



スペルマン:オークエンペラーのアナなんちゃらがガバガバで食い放題、と


タカ:言い方やめろ


ジーク:草


ほっぴー:草


ガッテン:あのさぁ……


紅羽:草


タカ:お前四六時中そんな事考えてんの?????


スペルマン:まぁ仕事なんで


ほっぴー:そういやエロ漫画家だったな……


鳩貴族:領域内も落ち着いてきましたし、そろそろ活動再開しては?


タカ:俺が攫われてるのに落ち着いてんじゃねぇよ


ジーク:実際落ち着いてるし……


スペルマン:活動再開なぁ


スペルマン:漫画売るの?通貨機能してる?


ほっぴー:それなんだよな……


七色の悪魔:それに関しては魔術的アプローチを用いて解決策を検討中です


ガッテン:ぐぅ有能


七色の悪魔:というより、もう少し元政治家の起用をお願いしたいのですが


砂漠の女王:視線が不快なので却下します


七色の悪魔:私情ですか


砂漠の女王:ええ、そうですが


七色の悪魔:視線が不快であれば接触に何人か別の人間を介しますよ


砂漠の女王:ふむ


七色の悪魔:人材が少なく問題に対し応急処置をするのが手一杯で解決がずるずると先延ばしになっています


タカ:俺らが助けた避難民から引き抜いたら?


タカ:おーい、モータル


ほっぴー:モータルは今ちょっと手が離せないんじゃねぇかな


タカ:なんで?


ほっぴー:仮拠点設営。あと食料確保


タカ:なるほど


砂漠の女王:はぁ、ではその件に関しては七色の悪魔さんに一任いたしましょう


砂漠の女王:直接顔を合わせることがあればミイラにして多少見れる面にしてやる、と忠告しておいてくださいね


七色の悪魔:分かりました


七色の悪魔:あと一つ。我々の視線もひょっとして不快だったりしますか?


砂漠の女王:いえ、それはありませんね


七色の悪魔:違いはどこでしょうか。教えて頂ければ人材選出の判断材料にできます


砂漠の女王:わたくしに、手が届くと思っていることですかね


砂漠の女王:まぁわたくしは美しいので、見惚れる分には構いませんが


砂漠の女王:狙える範囲の異性として見られるのは不愉快以外の何物でもないので


七色の悪魔:なるほど


七色の悪魔:分かりました


お代官:お手数をかけてすまないな


七色の悪魔:いえ、ここは砂漠の女王なくしては成り立ちませんから。それにお代官さんが謝ることではないでしょう


お代官:いや、その……


お代官:あまり自分で言いたくはないんだがな?


お代官:いつも私のような小太りの中年と一緒にいるから手を出せるかもというような目で見る輩が多いんだと思うのだよ


ガッテン:あー


ほっぴー:それはあるな


スペルマン:確かに


砂漠の女王:今賛同を示した三人を順に処刑します


ガッテン:なんで!?!?!!?


ほっぴー:いや賛同じゃないよ、マジで


スペルマン:どっからどう見ても賛同じゃん


ほっぴー:オマエモナー


タカ:いいぞ。


ガッテン:良くねぇよ


ジーク:醜い罪の擦り合いが見れると聞いて


ほっぴー:見れねぇよ、だって擦り付けるもなにも悪いのはガッテンだし


ほっぴー:なぁスペルマン


スペルマン:そうだよ


ガッテン:は?


タカ:連携はっや


ジーク:伝統芸能


砂漠の女王:ふむ


砂漠の女王:では三人で殺し合っていただいて、残った一人だけを処刑といたしましょう


ジーク:全滅で草


タカ:優勝おめでとう!死ね!


ほっぴー:欠陥構造が過ぎる


スペルマン:とりあえず戦力的には俺とほっぴーで連携してガッテン倒さないと詰むね


ガッテン:冷静に戦略を練らないで


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