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会議のお時間です

「しっかし流石に状況がこんがらがりすぎてんな……」


 ぶっちゃけ思考停止したい。

 やる事と、知りたい事と、可能ならばやるべき事と……ああ、クソ。整理がつかん。


「おい、おっさん」


「なんでしょう」


「ヤワタはどうした」


「寝ていますよ」


 呑気だな。俺もさっさと寝てしまいたいが……まぁそういうわけにはいかないよな。


「ヤワタはそのまま寝かしてろ」


「御意に」


 さて、と。

 改めて俺の目標とそれにあたって必要な事項を考えようか。


 まず最優先事項は「ヤワタの能力の制御」だ。

 そしてこれに必要なものは「破壊しても大丈夫な領域」。

 そして京都にいる「異界化したオーク」。これは破壊しても大丈夫な領域だ。


「京都に行くべきか」


 異界化した魔族についての情報が少なすぎる。

 というか領域と同じ仕様だったら中に入った時点でヤワタの能力が急に制御できるようにでもならないかぎり、負けが確定する。


 そして次点の優先事項――いやまぁ同率一位の優先度ではあるのだが――京都の避難民達の救出。

 問題は、オークの領域を攻略しないかぎり達成が不可能であることだ。

 そのため、領域攻略のカギとなるであろうヤワタの能力の制御が最優先になる。


「よし、まとまってきた……こっから行動の順序を……」


「タカ」


「んあ?」


 かけられた声の反射的に見る。

 モータルか。


「なんだ」


「なんか会議するって」


「……嫌な予感しかしないんだが」


 せめて俺の思考がまとまるまで待ってくんねぇかな。


「会議というよりは報告会に近いみたいだけど」


「……掲示板でやるのか?」


「うん」


 はあ。

 俺は一度思考を打ち切り、掲示板を起動した。





Mortal:呼んだよ


タカ:報告会があるって?


ほっぴー:お、来たか


ほっぴー:さっそく始めようぜ


お代官:ふむ


お代官:では僭越ながらこの場における進行を


お代官:まず、この報告会は現在領域外で活動しているタカ君、モータル君とこちら側の情報の合わせが目的だ


砂漠の女王:皆を仕切るお代官様、素敵ですわ


お代官:急に出てこないでくれ……あと私のベッドの位置を勝手に君の部屋に移動するのはいい加減やめてくれ


砂漠の女王:ベッドの方から来るんですの


お代官:どういう嘘なんだねそれは……


ガッテン:お代官さん、ツッコミはほどほどに


お代官:そうだな


お代官:うむ


砂漠の女王:お代官様に万が一があってはいけませんので、お代官様の部屋の家具は全て自立式の護身機能がついてますのよ?


お代官:!!??!?!?


ガッテン:お代官さん、抑えてください


お代官:いや、でもこれは


ガッテン:お代官さん


お代官:しかしだな


ガッテン:抑えて


お代官:うむ…………


お代官:ま、まぁベッドが勝手に散歩するぐらいはな。うむ。ルンバの亜種みたいなものだと思えば


ジーク:そろそろ草が我慢できないんだけど


ガッテン:抑えろ!!!!!抑えるんだよ!!!!!


タカ:もう諦めようや、無理なんだよ俺らには


タカ:会議ができない呪いにかかってるんだ


ほっぴー:社会に不適合すぎるだろ


ジーク:草


七色の悪魔:お代官さん、もう絶対に言っておくべきことだけ知らせてください


お代官:分かった


お代官:魔王軍が少し慌しいことになっているようだ


お代官:どうも大規模な魔術を練っているらしい


お代官:あと避難民の受け入れを打ち切った。流石にキャパが限界に近いのでな


お代官:細々としたものであれば他にも色々とあるが、目下知らせておくべきなのはこの二つ


お代官:タカ君の方はどうかね


タカ:ひとまず京都付近の探索ですね


タカ:あと異界化した魔族について情報が欲しいかな


砂漠の女王:それに関しては個チャにある程度の概要を送っておきます


タカ:ありがと


タカ:あとはそうだな、影かな。アイツがまた何やら計画してるらしい


ほっぴー:うっげ、マジか


タカ:ただ、標的は俺だろうからそこまで心配はしなくていい


ほっぴー:りょ


お代官:うむ


お代官:以上かね?


タカ:以上


お代官:では報告会は一時終了だ。タカ君、モータル君。幸運を祈る


タカ:はい!


Mortal:はい








「さてさて」


 さっそく砂漠の女王から送られた情報を確認してくか。

 お、ちゃんと送ってきてるな。ふむふむ……


「異界は強力になった魔族から滲み出る魔力が形づくる一種の異世界……領域とは少しばかり勝手が違う……ふむ」


 異界化はあくまで身体強化の延長線上にあるもの……俺らに分かりやすく言えばオーラに近い、か。


「ただ広義では領域……めんどくせぇな」


 なおその異界が妙に広大な場合は注意が必要……魔術的な根を張った可能性が高い、か。

 そうすると性質が砂漠の女王のような領域の側に傾く。傾いたから何だってんだって感じではあるが……


 む?あー、なるほど、領域外に引きずり出せば弱体化するようになるのか。


「んなこと言われてもな。こっちは領域内で倒せる方法が欲しいんだよな」


 そんなことをぼやいていると、砂漠の女王から追加で個チャがとんできた。


 ふむ。本来滲み出た、過剰分の魔力でできたものを意図的に自分の魔力を編みこみ作り足した以上は、領域の魔術的破壊は本体へのダメージになる……ってことはつまり?


「ヤワタがいれば殺せる、そういうこったな?」


 この情報を最後にもってきたって事はそういうことなんだろう。

 

「モータル」


「なに?」


「休憩したらさっさと京都目指して進むぞ。うまくやりゃ色々と甘い汁が吸える」


「言い回しが悪印象すぎない?」


 やかましい。


 さっきのドラゴノイドやら、影やら、頭を悩ます要素は大量にあるが……とりあえずは京都のオークどもをヤワタと一緒にぶっ潰す。これで決まりだな。




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