湖底の虫─1
馬車の中はにぎやかな笑声で満ちていました。
そうなのよ、と話される女性はそろそろ初老に差し掛かるお年ながら、際立った存在感で場を圧するご夫人です。
サウズリンド王国の社交界で、アンリエッタ王妃さまに次いで権勢を誇る、シュトラッサー公爵夫人。現国王陛下の実姉にあたり、アレクセイさまとテレーゼさまの母君であるお方です。
お名前を、ロザリア・シュトラッサーさま。
白髪混じりの薄く冷たい印象の金髪と、冬の湖のような眸。彫像のように整ったお顔立ちは息子のアレクセイさまと瓜二つであり、その昔、社交界で『氷の薔薇』と異名を取ったのもうなずける、歳を経た今なお美貌を備えた女性でした。
場所はバーナードさまの慰問へ向かう一団、その中央に位置し、周囲を護衛に固められて真冬の最中でも暖気を感じさせる豪奢な馬車内です。
話題を口にするのは、かつての呼称とは異なる印象の方でしたが、見知った者には慣れた光景でした。
ロザリアさまは一見、冷たく近寄りがたい印象のお方として知られていますが、それも一国の元王女となれば納得の誇り高さと気品です。しかし、実際には内に入れた者の前では忌憚ないおしゃべりに花を咲かせるご婦人でした。
「──テレーゼったら悪阻がひどくて、一時期ほんとうに物が食べられなかったでしょう? それで、悪阻が収まったら反動のように好きなものを食べだすものだから、案の定、この間腹痛を起こしたのよ」
王宮内で起こった先日の騒動を思い起こして、わたしも失礼にならないように笑いをこぼしました。
話題の人物はつい先刻、見送りに立ってくれたロザリアさまの娘、テレーゼ・アルドリーノさまです。
わたしの数少ない友人の一人でもある彼女は、初夏の頃に出産予定を控えた身重の身であり、はじめての出産を迎える彼女の周囲は色々と気苦労が絶えないようです。
ロザリアさまのくったくない物言いに、ああ、と笑って答えたのは、わたしの付き添いとして同行していた侍女のリリアでした。
「それで先日、あのアルドリーノ伯爵が血相を変えて宮廷の医官を何人も引っ捉えていたのですね。何事かと思いました」
ロザリアさまとの対面は数えるほどでも物怖じしないリリアの口調に、氷の美貌にも微笑が広がります。
「あわて者の家人が王宮に出仕していた伯爵へ使いを出してしまったのよ。私と主人もちょうど陛下とアンリエッタさまとの対談中で、何事かと思ったわ。主人も主人で、『産婆を呼べ!』とか騒ぎ立てて、産み月はまだ先だというのに……。男はいざという時にあわてふためくばかりで、ほんとう、役に立たないわね」
バッサリ切り捨てるロザリアさまの容赦のない口調に、わたしは少し冷汗を覚えました。
控えた公爵家の二人の侍女は慣れた雰囲気で笑いをこぼしており、その居住いには王宮の侍女にも劣らない物腰があります。
内心、感心していたわたしに、ロザリアさまは微笑を向けてきました。
「その節は、エリアーナさんにも迷惑をかけたわね。アレクセイと打ち合わせ中だったのに、義息子が乗り込んだのでしょう? 『はじめての出産に腹痛の対処法は!』とか、医師でもないあなたに詰め寄っただなんて……後から聞いた私のほうが赤面しそうだったわ」
わたしが首をふるよりも早く、リリアがこらえきれないように吹きだしました。
「侍女たちの間でもいまだに話題です。不機嫌顔が常備のアルドリーノ伯爵があんなに血相を変えるなんて、って。テレーゼさまは、愛されていらっしゃいますね」
あら、とそれには公爵家の年若い侍女が好意的なからかいを込めて返してきます。
「それは、エリアーナさまのほうでしょう? 今回の公務にも、東の武神と称される将軍をわざわざ呼び寄せて護衛に付け、クリストファー殿下の右腕と呼び声高いアレクセイさままで供に付けられたのですから。隙なく守られて、だれの目にも愛されているのがわかるのは、エリアーナさまのほうですわ」
周囲から見た認識をあらためて告げられて、わたしは頬が赤くなるのを自覚しました。さらに年嵩の侍女がほほ笑ましそうに続けてきます。
「テレーゼさまの懐妊はとても頃合いだという評判もありますね。将来を見据えたらなおのこと、と噂されていますわ」
意味がわからずに首をかしげると、年嵩の侍女はさらに笑みを深めます。
「クリストファー殿下とエリアーナさまの御子が誕生されましたら、歳の近い子としておそばに上がる可能性がありますもの」
「え……」
思いがけない話に、わたしは頬に上る熱も忘れて、ポカンとなってしまいました。
成婚の儀が春とは言えまだ先のことなのに、さらにその先を見据え──しかも、まだ生まれてもいない子どもを前提とした考え方をする人たちがいる事実に。
それは、貴族社会を生きる者として当然の先見なのかも知れませんが、我が身に起こっているという事実がすぐには理解が追い付きませんでした。
すると、向かいのリリアが、もう、とあきれた口調で付け足してきます。
「エリアーナさまはホント、自分のことには見通しが甘くなるのだから。聖夜の祝宴後から婚約を発表する人たちが多くなったのは、殿下の成婚の儀に釣られただけじゃないのよ。みんな、お二人の仲が盤石だと見て取って、その先を考えだしたからなんだから」
年下の従妹の言に、そういうものなのかと驚きが抜けきれないまま、わたしはうなずいていました。そんなわたしに、ロザリアさまがゆったりとした微笑で問いかけてきます。
「リリアさんの言う通り、年が明けてからは婚姻話よりも懐妊や出産話に注目する傾向があるわね。それで……実際のところ、どうなのかしら」
「実際のところ……とおっしゃいますと……」
問われる筋が見えずに首をかしげると、あら、とロザリアさまはテレーゼさまにそっくりな好奇心で眸を輝かせます。
「もちろん、殿下とエリアーナさんの御子の可能性よ」
「…………」
わたしは社交的な微笑を浮かべたまま、固まりました。
それは成婚の儀が終わってから良きように……と、儀礼的な言葉もとっさに出てきません。ロザリアさまの眸に宿る好奇心に、じわじわとこみ上げる羞恥心があります。
この方はそう言えば、テレーゼさまと親しくなってから、個人的なお茶会に顔をのぞかせては、テレーゼさまと共にわたしをからかわれる性質の持ち主だったとあらためました。
で?、と今日のロザリアさまはいやに執拗です。
「ここだけの話──。クリスはあれだけあなたを溺愛しているのだもの。もうすでに、一線を越えていてもおかしくないわよね?」
「は、いぃ……?」
我ながら、ほんとうに情けない声が出たと思います。
先日の殿下とのやり取りのように倒れたい思いにかられながら、かろうじて頭を働かせていました。ロザリアさまはなぜそんなことを、今この時にたずねてこられたのかと。
わたしの困った様子に、リリアと公爵家の年若い侍女は頬を赤らめながら好奇心満々に答えを待っており、まったく頼りになりません。もう一人の年嵩の侍女が笑いながら女主人をとどめてくれました。
エリアーナさまがお困りですよ、と。
ロザリアさまは少しつまらなさそうに吐息をつくと、どこか残念そうな眼差しをわたしやリリアに向けてきました。
「私があなた方ぐらいの時には、周囲はおめでた話でにぎわっていたし、私もとうに孫に囲まれていてもおかしくないと思うのだけれど。時代は変わったということかしら……」
どこか物憂げな様子が込められた口調に、リリアが気を利かせたように話題を変えました。
「あ、ええと……。殿下の側近のアレクセイさまも、グレンさまと同じように縁談話が山のようだとお聞きします。順序的には、テレーゼさまよりもアレクセイさまの御子が先でもおかしくありませんでしたね」
その瞬間、馬車内に凍り付いたような空気が流れました。わたしも内心焦りを覚えましたが、表面的には微笑を保って言葉を重ねました。
「アレクセイさまは神話に云う、大神ドーラを支えた知の神、アレパトスにも称えられる方ですから。彼の神も知識の探求を追い求めた者として知られています。先のことは分かりませんが、アレクセイさまも、今はお仕事が楽しくていらっしゃるのではないでしょうか」
わたしの言葉にリリアが失言をさとったように心なし顔を青ざめさせましたが、わたしは眸だけでうなずいてみせました。
そうですね、と間を置かずに公爵家の年嵩の侍女が会話を続けてくれます。
「アレクセイさまはお仕事一筋の堅苦しい方として知られていますから、縁談は山のようでも、当事者のご令嬢方からは敬遠されがちですね。先刻、見送りに立ってくださったオーディン公爵家のご令嬢のように、昨今は婚姻年齢が高くなる傾向にあるようです。……エリアーナさまが施策された、助産婦や女性を医療従事に組み込む支援が利いてきたのでしょうか」
ああ、と公爵家のもう一人の侍女が満面の笑みでそれに答えます。
「出産って、女性にとってはほんとうに命をかけた一大事なのに、それを補助する助産婦って、下に置かれがちなんですよね。病や怪我の知識を有した医師のほうが偉いって、変な優位意識で。命の尊さはなにも変わらないのに」
率直な言葉に思いがけない感銘を覚えて、わたしは彼女の言葉にほほ笑みました。年若い侍女は少し気恥ずかしそうに笑み返します。
「だから……エリアーナさまの施策は、とてもうれしかったんです。わたしは、実家が助産婦の家系で、母が今、テレーゼさま付きの助産婦として召し抱えられています。──医師ではない。でも、出産時には必要とされる。……ずっと、歯痒かったんです」
医療の知識がありながら、出産のみに偏った知識は医師とは認められない。……その昔は、出産を補助する産婆は魔女と称された時期もあったそうです。畏敬と畏怖をこめて。
彼女の言う通り、命の尊さはなにも変わらないのに。
そうですね……と、わたしは夏頃から軌道に乗りはじめた施策に思いをはせました。
「薬学でも、病気の治療薬に精通した方、怪我の効能薬に長けた方、と同じ薬学でも特化した方はいらっしゃいます。多岐に渡る医療なら、専門分野に秀でた方々がいらっしゃるのは当然です。王宮に勤める医師は、もちろん出産に関する知識も得ていますが、……市井では、まだまだ助産婦に頼っているのが現状です」
それはおそらく、出産、という行為が女性の神秘に関わるとされたため、男性が排除された歴史のせいもあります。
男性優位の医学界で、比肩する知識を有した女性が煙たがれたという事実もあります。彼女の家のように、助産婦の家系が代々知識を保有してきたという現状もあります。
けれど、なぜその知識を広く共有してはならないのでしょう。男女という性別以前に、命に関わる知恵ならば共有してしかるべきなのに。
「助産婦の方は、医師のいない僻村では医師同然に扱われると聞きます。まずは、その方たちに早急に医学の門戸を開くべきだと思ったのです。……本来なら、医師を増やして対応するのが正当ですが……現状、その知識を有している方に頼るしかないのも事実です。助産婦という職に誇りを持っている方からすると、わたしのやり方は乱暴に映ると思います。けれど、命にたずさわる役目を課している方なら、決して無駄な知識にはならないと信じています」
医療や病に関する知識を広く共有する──。それは、十五年前の“灰色の悪夢”の時から、強くわたしの中にあった思いでした。
ホホ、とロザリアさまが思い出したように笑いをこぼします。
「医学の知識もないのに助産婦が医師を名乗るものではない、と反対する声もあったそうね。規則に捉われて頭ごなしに反対するしか能のない者に殿下が、『──では、そなたが助産婦しかいない村へ赴き、常駐の医者となるか』と黙らせたとか。権威に捉われて現場が見えていない者は、それこそ実体験してみるべきね」
わたしは少し苦笑で返しました。
人命に関わる医学の道を極めるには、それは並大抵ならぬ努力と時間が必要だと聞きます。そうして得た医師という職に誇りを持っている方には、やはり許容しがたいことなのだと思います。
しかし、現実に助産婦に医師の役割が求められている地域があるのも事実なのです。
公爵家の年若い侍女は、力強く言葉を紡ぎました。
「私は、エリアーナさまの施策に賛成です。女性は看護や補助をする役割のほうが合っている、なんて言う者もいますけど……実を言うと、祖母なんかは反対の立場なんです。男の中で張り合ったっていいことはなにもない、って。でも、そういう祖母の元に新米医師が教えを請いに来たりします。祖母は、子どもの病気や治療の知識が豊富なんです。──だったら、堂々と男性だらけの医学界に専門知識を持って乗り込んだほうがいいです。女性だから受け継いできた知識があるって、あっと言わせたいですもの」
勇ましい物言いにわたしは目をみはり、リリアからは笑いがこぼれます。年嵩の侍女が微笑で会話を戻しました。
「女性が医療で働く場を得る機会が多くなれば、ますます婚姻年齢は上がっていきそうですね。オーディン公爵家のファーミアさまも、医学の道に興味を示されているとか」
そうね、とそれには小さな吐息でロザリアさまが応じます。チラリとわたしに視線が投げられました。
「彼女は元から、勤勉な性質でしたから。エリアーナさん、あなたファーミア嬢に王都の医療施設を紹介したのですってね。彼女はそれから足繁くそちらへ通って、民の間でも公爵家の令嬢が、と評判になりだしているとか。……わざわざ、オーディン公爵があなたを睨む隙を作らなくてもよいでしょうに」
それには、わたしも少し身をすくめてしまいました。
「……ファーミアさまは、弟君がお身体の丈夫な性質ではいらっしゃらないので、以前から医療関係に興味を持たれていたようなのです。ですので……」
間違ったことをしたとは思っていませんが、どうしても尻すぼみになった口調に、ロザリアさまがため息をつきました。それは、許容混じりのやさしいものでした。
「あなたは人が好すぎるわね。オーディン公爵が表面上は殿下とあなたを祝福しながら、いつでもあなたの足元をすくおうと目を光らせているのは、アンリエッタさまから聞かされているでしょうに」
それには、わたしも難しい顔をしてしまいました。
オーディン公爵家は、アンリエッタ王妃さまの生家です。遡れば王家の血筋も受け継ぐ、サウズリンド国内でも由緒正しい名門家です。
現当主の公爵はアンリエッタさまの兄──クリストファー殿下の伯父にあたる方で、オーディン公爵家は一時期、いわば外祖父としての権力を保持していたと聞き及びます。
しかし、アンリエッタ王妃さまが“灰色の悪夢”に侵され、一時期容体も危うい状態になるとその権勢には陰りが出、今は内海に通じる西の港ケルク領を治め、親戚筋にあたるミゼラル公国との友好役としてその名を知られる地位に収まっています。
そして、オーディン公爵家は王家や古い血筋を尊び、それに重きを置く保守的な家として知られていました。わたしがクリストファー殿下の婚約者として上がった際、だれより否を唱えていたのがオーディン公爵家だったと、聞き及んだことがあります。
アンリエッタ王妃さまは、過去の対応から生家とは距離を置かれているようですが、しかし、その権威は今もって看過できないものがありました。そのオーディン公爵にわざわざ睨まれるようなことを、と言われ、わたしも考えてしまいます。
ですが……。
「ファーミアさまは、わたしの友人でもありますから」
四年前、王都に上がって王太子殿下の婚約者に選ばれた後、一番はじめに親しくなったのがテレーゼさまでした。
テレーゼさまの裏表のない気質に惹かれ、親交を深めていく中で紹介されたのが、クリストファー殿下のもう一人の従妹、ファーミアさまです。
テレーゼさまと同じ、御歳十九歳。茶色に近い赤味がかった金髪に、リリアと同じ榛色の眸。泣きぼくろが印象的な、おとなしく控えめな性質の方でした。
わたしとは違って刺繍が得意で音楽を好み、女性らしい細やかな気遣いがそばにいて安心できる方です。
「ファーミアさまなら、細やかな視点で医療施設の改善点などにも気付いてくださると思いましたし……なにより、ファーミアさまご自身が積極的に望まれましたので」
それはもしかしたら、辺境伯令嬢アンナさまのように、進みたい道があったのかも知れないと、わたしはひそかに思いました。
彼女とはテレーゼさまほどではありませんが、親しくさせていただいています。社交界でわたしが困惑させられるような事態に陥ると、いつもさりげなく気遣ってくれました。
なので、名門公爵家の年頃のご令嬢が婚姻よりも市井に入り浸る切っ掛けを作ったわたしに、オーディン公爵の目が厳しくなっても──後悔はしていません。
すると、ロザリアさまの眸がどこか物思うような色を帯びて、そっと息をつきます。
「そうね……。エリアーナさんの考えがあって行ったのなら、私がとやかく言うことじゃないわね。……人の気持ちというものは、ほんとうにままならないものね」
どなたのことを指しているのかと、わたしが首をかしげて、ロザリアさまは気持ちを切り替えるような息をつきました。
眸にはいつもの面白そうな色があります。社交界を取り仕切る貴婦人の一人らしい、凛としたお声が出ました。
「リリアさん。あなたも今は侍女のお仕事が楽しくていらっしゃるのかも知れないけれど、ほどほどにしないと、うちの息子のようになってしまうわよ。……もっとも、息子は一度婚約をダメにしていますから。まったく同じというわけではありませんけれどね」
「え……っ」
驚くリリアはやはり知らなかったようです。実を言うと、わたしも今回の公務にあたってはじめて知らされたことでした。
ロザリアさまは気にした風なく、あっさりうなずいてみせます。
「ラルシェン地方は、息子の婚約がダメになった因縁の地でもあるのよ。あの子はどうも、それを理由に身を固めることから逃げている節もあるわね……」
つぶやくロザリアさまは言外に、『鍛えなおしが必要ね』とうなずいているようでもあり、冷汗を覚えながら、慣れた雰囲気でわたしの腰は引けていました。
冬の湖のような眸が、フフと笑みの形でわたしに向けられます。
「エリアーナさん。今回、あなたにこの公務を任せてしまって、アンリエッタさまも気に病まれていました。大事な時期なのに、王妃教育が中途になってしまいましたからね」
「いえ……そのような」
鈍いわたしにもわかる予感に、馬車内という空間にも関わらず逃げ場を求めたくなります。
ロザリアさまは、『氷の薔薇』と呼ばれた相対する者を捉える凍て付きで、ゆっくりとほほ笑みました。
わたしの言葉は聞こえなかったフリで。
「アンリエッタさまからも、しかと託されていますからね。王妃教育の続きはこの行程中、じっくりと行うことはできます。──さしあたって」
意味深に言葉を区切ると、眸が面白そうな色で輝きます。
「婚約者と一歩進んだお付き合いの仕方を学びましょう。公務が終わってクリスと逢った際、驚いてもらえるように。──エリアーナさん。陛下もアンリエッタさまも、一日でも早い孫の顔を、と思っていらっしゃるわよ」
……どうやら、わたしには試練の行程になりそうなロザリアさまの宣言でした。