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7章 思わぬ邂逅 7話

 いくら感情や心がそぎ落とされている(てん)使()(かい)の住民でも死に触れた時はどんな反応をするか予想できない。


 だからこそ追い込まれているジェイルの思考は悪い方向に(かたよ)ってしまう。


 だが、あたふたするジェイルの前にある兵士の遺体が、プレートアーマーや剣ごと(こく)()(しょく)の炎に包まれ燃えだした。


 その炎は小さく弱々しかったが、瞬く間に兵士の身体は灰となり(こく)()(しょく)の炎と共に散りとなって、風に流れながら消えた。


 「まさか、今ので地獄に落ちたのか?」


 消えていった兵士を見て唖然とした表情でガーウェンに聞くジェイル。


 「なんだ知ってたのか。今の消え方はブラックライフオブフォッグの(てん)使()(かい)バージョン見たいなものだ。通称、命が地獄に落ちる(ライフヘルドロップダウン)」


 ガーウェンは日常で見慣れているような光景でも目にしているかのような素振りだった。


 しかし、ジェイルにとっては人が燃えて灰になる光景は怖気以外(おぞけいがい)、何も感じなかった。


 「とにかくここから離れるぞ。兵士の一人でもいなくなれば、ここじゃ大事だ。兵士総出で(しらみ)(つぶ)しに捜索に来るはずだ。本当なら騒ぎを起こす前にあいつの所に行ってあれを用意してもらうつもりだったんだがな。一度騒ぎがある程度治まるまでどこかの民家に隠れるぞ」


 「ああ、わかった」


 ガーウェンが何の事を言っているか分からないがその最もな提案にジェイルの怖気(おぞけ)る気分も吹き飛び、少し動揺は残るが、二つ返事で答えた。


 「さて、どこの民家に押し入るか‥‥‥」


 周囲の家を見回しながら物騒な事を言い出したガーウェン。


 「待てよガーウェン。実はブルンデの所にまで案内してくれる奴と知り合ったんだ。そこの家に行かないか?」


 ニイナとの約束を思い出したジェイルは慌ててガーウェンを呼び止めた。


 仮に反故(ほご)してしまえばどんな恐ろしい事が待ち受けているか、と思うとニイナの家に行かずにはいられない。


 「ほう、そんな奴と知り合ったのか。(ぎょう)(こう)じゃねえか」


 「ああ」


 ガーウェンの言葉に答えながら、辺りを見回すジェイル。


 そして、辺りをよく見て見ると見覚えのある場所にいる事が分かり、そこからニイナの家がどこにあるかも把握できた。


 「こっちだ」


 ジェイルはそこからポカンとしているザクマンを急いで肩に担ぎ、急いで走り出した。


 「おい、ジェイル!」


 ガーウェンはジェイルの行動に驚き、慌ててジェイルの後を付いていく。


 「うぉー、一体どうなされました」


 ジェイルに担がれ電源のスイッチが入ったかのようにいきなり驚きだしたザクマン。


 「これからあんたに会わせる女の所に行くんだよ」


 ジェイルは息を軽く切らしながら肩の上で動揺しているザクマンに(ざつ)な説明をする。


 「……」


 しかし、ザクマンはろくに聞こえなくなったため、なんの反応も無くなってしまう。


 後から付いて来ているガーウェンはジェイルとザクマンの関係に首を傾げていた。


 「女ってのは何の事だ?」


 ジェイルの横を走っていたガーウェンが唐突(とうとつ)に聞いてきた。


 「来れば分かる。それからな、その女の前で不躾(ぶしつけ)な言動には気を付けろよ。痛い目見るからな」


 脳裏にニイナの恐怖が蘇ったジェイルはガーウェンに警告するかのように声に重圧をかける。


 「なるほど、そう言う事か」


 しかし、ガーウェンは何かを一人で納得しているかのように不敵な笑みを浮かべる 


 ガーウェンの意味深な態度など気にする暇も無かったジェイルはなんとかニイナの家に辿り着いた。ジェイルは気を引き締め、ドアをノックする。


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