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7章 思わぬ邂逅 6話

 ザクマンを見て見ると、ぼんやりとした瞳でジェイルを見上げていた。


 しかもその目はジェイルの目と(しょう)(てん)が合っていない。


 「おいザクマン!」


 ジェイルは大声でザクマンを呼ぶが何も分かっておらず、ただ真っ直ぐ(そう)(きゅう)をボーと見つめていた。


 「貴様! さっきの男か⁉」


 そうこうしている内に、ジェイルに疑念を持ち呼び止めようとしていた、最初に会った兵士の一人がジェイルに向かい(けん)(まく)を立てる。


 駆けつけてくる兵士は腰に備えている剣まで抜き始めた。


 「身分をもう一度確かめさせろ。名はなんと言う⁉」


 剣を構えながらジェイルにその切先を向けてくる兵士。


 あまりの気迫にジェイルは面を食らい、両手を上げ自分が無害である事を主張しようとする。


 「ちょっと待てよ! 俺は最近この(てん)使()(かい)に来たばかりで、よく分からないだけなんだ!」


 特に言い訳も思いつかなかったジェイルは、あたふたしながらある程度の事実を口にした。


 「ならば、一緒に宮殿に来い。そこで儀式を受ければ貴様を歓迎しよう。だがもし断れば‥‥‥」


 (きつ)(もん)()調(ちょう)で喋り終ると、兵士はジェイルに向けている剣の切先(きっさき)を顔に近付ける。


 ある程度の事実なら大丈夫か、と思った言葉が、完全に裏目に出てしまった。


 この状況で(よう)()の剣を抜いてしまえばその隙に、間合いを詰めている兵士が先手を打ち攻撃を仕掛けてきたら一巻の終わりだ、と思ったジェイル。


 「貴様、本当に何者だ? 何故そこまで(こば)む⁉」


 今にでも斬りかかってきそうな兵士。


 絶体絶命のピンチに陥ってしまうジェイル。


 「それは、そいつが地獄の人間だからだ」


 兵士の一人の背後から薄気味悪くゆっくりとした低い声が(ささや)かれていた。


 「――ん⁉」


 兵士がその声の主に慌てて振り向くと、心臓を剣でプレートアーマーごと一突きにされた。


 兵士の背中から剣で突き刺されたその剣の()(さき)を目にするジェイル。


 刀身には血がベッタリと付着していてジェイルの眼はそれに釘付けだった。


 あまりの一瞬の出来事に驚愕し、大きく口を開けるジェイル。


 「な、何者だ‥‥‥」


 兵士が振り絞るような声で最後の一声を言い終えると、突き刺されていた剣が瞬時に引き抜かれ、崩れ落ちるように倒れた。


 そして、兵士が倒れたと同時にその姿を現したのは一人の見知った男だった。


 「ガーウェン! お前、無事だったのか!」


 ジェイルは威風堂々とした様相で立ち不敵な笑みを浮かべるガーウェンに驚きの声を上げる。


 「それはこっちのセリフだ。お前、もしかしたらあの呪文を間違えたんじゃないのか?」


 剣を腰に備えると軽い足取りでジェイルに近づくガーウェン。


 ジェイルは自分が間違えた呪文を口にし、指定された到着ポイントとは違った所に行き着いたのだ、とようやく理解した。


 その様子が伝わるかのようにジェイルの顔は渋くなっていた。


 「まあいい、それよりその爺さんは誰なんだ?」


 未だ状況をまるで理解せず呆然として立つザクマンに首を傾げるガーウェン。


 「それよりこの死体はどうするんだよ⁉ この状況を誰かに見られたら、何が起きるか分からないぞ!」


 ジェイルは地面で絶命している兵士の遺体が人目に触れた後の事を()()していた。


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