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6章 まだ見ぬ快楽のために 6話

 逆転の糸口を掴んだヨシュアだったが、その表情は躊躇(ためら)っている事が伺えた。


 「ヨシュア!」


 その表情から何か迷いがある、と察したパーラインは急いでヨシュアの元に駆け寄る。


 ヨシュアの両肩を掴み情熱的な眼差しを向けるパーライン。


 「今まで私達は、互いを守るために多くの屍の上を歩いてきたわ。悪魔の世界だから仕方ないと割り切っていた。でもだからこそ、ここで良心に従おうとすれば、これまで手を血で染めて助け合ったあの頃は消えてしまうわ。ここで終われば、私と貴方の今までと、これからの愛も途絶えてしまう」


 パーラインは切ない声で喋りながらヨシュアの頬に優しく手の平で振れる。


 「……パーライン」


 パーラインに潤んだ瞳を向け、か細い声を出すヨシュア。


 「私は悪魔や死神と罵られようとも貴方の傍にいる。だからヨシュアも私を信じて。貴方の非道の()く末までの道は私が支える」


 ヨシュアと同じ目線、同じ表情で想いの言の葉を伝えたパーライン。


 その純粋な愛の言葉はどこか呪いと歪みが垣間見えるが、ヨシュアとパーラインにとっては、生と死を共に歩んできた絶対的な愛の絆。


 どこか安堵したかのよう表情のヨシュア。


 すぐにその目には闘士が宿り始めた。


 「パーライン。君に頼みがある」


 「ええ、言って。なんでもするわ」


 戦闘の渦中にいる中、ヨシュアはパーラインに閃いた策を告げる。


 「そんな事が可能なの⁉」


 「ああ、僕を信じてくれ」


 ヨシュアの鋭い瞳を目にしたパーラインも迷いが晴れ、強く頷くと集落の人間達の元へ向かう。


 静かに(じん)(そく)に集落の人間達の一人の背後に忍び寄りながら(よう)()の剣を抜くパーライン。


 「やああー!」


 パーラインは勇ましい声を上げながら集落の人間の一人を斬首した。


 それを目にしたセントオーシャン号の甲板の上にいる全員は驚く。


 盛大に血飛沫(ちしぶき)を上げ、その生首は甲板の上で耳障りな音で落ち、胴体はゆっくりと倒れる。


 「こいつらの首を跳ねて! 生首を砲弾の代わりに撃つのよ!」


 パーラインの言動に戸惑う(かい)(らく)(せん)()達。(ざん)(しゅ)された胴体の(くび)から血がドロドロと溢れ出てくる。


 「みんな! 僕の所にその首を持ってきてくれ! 戦況を変えるにはそれしかない! 甲板の上の血は衣服でも破いてふき取り続けるんだ!」


 集落の人間達も、まさかの奇行に動揺する。


 「お前ら指示に従え! そいつらの首を残らず跳ねるんだ!」


 ダズマンの指示に(かい)(らく)(せん)()達の迷いも晴れ、雄たけびを上げ()(とう)の勢いで集落の人間達に襲い掛かる。


 だが、またしてもワロス達の船から集落の人間達が大砲で放たれてきた。


 「そう何度も同じ手が通じると思うなよ」


 セントオーシャン号にいる砲撃手達がワロス達の船から放たれ宙を舞う集落の人間達に狙いを定め、砲弾を撃つ。


 その砲弾は見事、五人に当たり黒焦げになったその身体はワロス達の近くの渦潮に着水する。


 残りの一人の集落の人間は、その爆風で傾きが変わってしまい、セントオーシャン号から大分離れた渦潮に着水した。


 「どうだ! こんちくしょー!」


 砲撃手達は、歓声を上げながらハイタッチをする。


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