4章 異常者 15話
「いたぞ! 追え!」
集落の人間達七人は槍を手にし、横切って行ったジェイル達の後を追ってくる。
「なんだ、ジェイル。お前にはあの二人の性交は刺激が強かったのか? アハハハハッ!」
逼迫する状況の中、死に物狂いで走りながらもジェイルを笑いながら揶揄するガーウェン。
「あんなの見せられたら誰だって引くわ! で、どうすんだこの後⁉」
「このまま進むぞ! 天使界の入り口はすぐそこだ!」
激しい口調で言葉を交わすジェイルとガーウェンは森の中を走っていく。
そして、目の前に異様に長い茂みがあった。その先を躊躇なく通ると、その出た先には直径二十メートルの深い大穴があった。ガーウェンはためらいなくその大穴の前にまで走っていき、ジェイルも困惑しながらも後に続いていく。
ジェイルはその大穴を少し覗き込んでみると底が見えない程、闇がどこまでも続く大穴に、生唾を飲み込む。
「いいかジェイル。俺の声を復唱して俺の後に続け!」
刻一刻と迫ってくる集落の人間達。その追いかけてくる怒号はすぐ近くにまで聞こえて来た。
そしてガーウェンは困惑するジェイルの返答も聞かず手を組み目を瞑った。
「天に君臨する我らが神よ。どうかこの迷える子羊を貴方様の神域へと導きたまえ」
神に信仰しているかのような様相で、そう言葉にするガーウェンは大穴に身を預けるかのように倒れていく。
落ちたガーウェンを見て驚愕したジェイル。
底が見えない大穴に、深く、深くと、落ちていったガーウェンの姿がほとんど見えなくなった時、その底から小さい光が見えた。その小さい光は閃光弾のような輝きを一瞬みせると、ガーウェンの姿は完全に消失してしまった。
「いたぞ! あそこだ!」
状況を整理する間もなく茂みから出て来た七人の集落の人間達にジェイルは慌ててしまう。
急いでガーウェンと同じポーズをし唇を震わせながらも、ガーウェンの言葉を急いで復唱した。
「天に君臨する我らが神よ。どうかこの迷える豚を貴方様の神域へと導きたまえ」
正しく復唱したはずが、焦っていたジェイルは間違えてしまう。ジェイルは集落の人間の一人の槍が頭へと突かれる攻撃を間一髪で回避しながら大穴へと急いで落ちていった。
「うわあああぁ!」
絶叫しながら落ちていくジェイルは、徐々に意識が遠くなっていくのを感じていた。
声も出なくっていき、ジェイルの身体もガーウェンのように光り輝いていく。身体全体は光と化しその光は凝縮していき、最後は弾け飛ぶ。そしてなごりの光は霧散していった。
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四章 異常者はここで終わります。
次回も引き続き書いていきますので、ぜひご一読してください。