4章 異常者 6話
そして、近くでガサガサと茂みをかき分ける音が聞こえてきた。
何度も心の中で見つからないでくれ、と祈るジェイル。
「ここらへんじゃないか?」
「だが誰もいないぞ」
辺りを捜索する集落の人間達だが、ジェイル達を見つけられずにいた。
このまま見つからないのでは、と強い期待感がジェイルの中で芽生え始めた。だが次の瞬間‥‥‥。
――ブッ!
緊迫した空気をかき消すような不快な音が鳴った。
ゾディアが我慢できず、盛大な音でおならをしたのだ。
「いたぞ! あの茂みの中だ!」
今のおならで位置がバレてしまい、慌てるジェイル達に槍を手にし、ジェイル達の居る茂みに向かってくる集落の人間達。ゾディアはこの深刻な状況で、えへっ、と照れ笑いしていた
「クソッ、こうなったらやるしかねえ。お前らは時間稼ぎをしていろ! ジェイル、パーライン、柵から少し離れてろ!」
ガーウェンが険しい表情でそう指示を出すと、後ろに居た快楽戦士達は茂みから一斉に立ち上がり、雄叫びを上げ剣を抜き、集落の人間達に突っ込んでいった。
そして、ジェイル達も茂みから立ち上がり、柵から少し離れるとガーウェンが手榴弾を取り出しピンを抜き、柵に向かい放り投げた。
――ドカーンー!
凄まじい爆風が、ジェイルの目の前の柵を粉々に吹き飛ばした。
「行くぞ、お前ら!」
ガーウェンの叫ぶ声に、後ろで交戦する快楽戦士達と共に、ジェイル達は穴が開いた柵の中に突撃した。
足元から土煙を大きく巻き起こし、突撃していく中、パーラインは一目散に、ヨシュアの元に走り出す。しかし、ヨシュアを護衛する集落の人間達が槍を手にし、待ち構えていた。
「そこを、どけー!」
パーラインは怒涛の勢いで、けたたましい声を上げヨシュアの周りにいる集落の人間達五人に剣で斬りかかっていった。
「ジェイル、パーラインを援護するぞ! お前らはここにいる連中をヨシュアの前に近付けさせるな!」
ガーウェンが指示を出す頃には、パーラインは既にヨシュアの周りにいる集落の人間達二人を斬り、妖魔の剣で斬られたその二人は快楽に抗えず、地面に倒れ、傷口を抑えながらよがり声を上げアヘ顔をしていた。
そして、残りの三人をジェイルとガーウェンとパーラインが分担して斬りにかかる。
ジェイルが相対して戦う相手は集落の人間達の中でも大柄で屈強そうな男だった。
大柄な男は眉間に皺を寄せ、槍を頭上で勢いよく振り回し、ジェイルを威嚇する。
その威嚇にジェイルの身体は無意識に一瞬硬直する。しかし、ジェイルは殺なければ殺れる、と強く自分に言い聞かせ、奮起し、その硬直から抜け出し、剣で斬りかかる。
大柄な男はジェイルの頭に狙いを定め、手にした槍を振りかぶって来た。
ジェイルは防刃コートで防ぐため前腕を振るいその槍をはじき返した。
大柄な男は驚き身体のバランスを崩す。
前腕から衝撃を感じる快楽に耐えながら歯を食いしばり、大柄な男に突っ込むジェイル。
そして、横向きに振るった剣は大柄な男の腹部を捕らえ、斬った。そして、大柄な男もまた妖魔の剣の快楽に抗えず、倒れて傷口を抑えながら暴れ回り、大声でよがり声を上げていた。
「ジェイル! ロープを切るのを手伝え!」
ジェイルと、ほぼ同時にガーウェンとパーラインは敵を斬りヨシュアの元に駆け出そうとしていた。
切願するガーウェンの声に反応したジェイルは急いで吊るされているヨシュアの元に駆け付けた。
そして、ランスも駆けつけ、四人は同時に吊るされているヨシュアのロープを切る事に成功する。