3章 見極められる覚悟 11話
グロリバーは仰向けに倒れ、ピクリとも動かず絶命した。
パーラインは思い人以外の扱いは、ぞんざいすぎるが、こうでもしない限り、グロリバーは止まらない。そう判断したのだろう。
「ハハッ、お前も中々面白いな。まあいい、移動しながら話す。付いて来い」
愉快に笑うガーウェンは歩き出すと、ジェイルとパーラインもその後を付いていく。
パーラインは冷静だったが、ジェイルは何度も起きる絶えない争いに嫌気がさすようなため息を吐き捨てた。
ジェイルはガーウェンの横に並び歩き、パーラインはその後ろを少し離れて付いてくる。
観客席にいる快楽戦士やゴロツキ達から顰蹙を買ったままかと思いきや、グロリバーを殺したパーラインは何故か称賛され、コロッセオから出て行く時には喝采が聞こえてきた。
どうやらガーウェンの指示に背いたグロリバーを始末した事に対しての称賛だろう。
「これから行く目的地に俺となんの関係があるんだ?」
要塞の中を歩きながら、パーラインを連れて行く目的地とジェイルに一体なんの関係があるのか聞いてみる。
「今から向かう所はイルメン島と言ってな。そこにパーラインの探している男がいる可能性が高いんだ。そしてイルメン島にはお前が求めている道がそこにあるからだ」
「―—天使界の道か?」
ジェイルの驚いた言葉にガーウェンはニヤリと笑う。
「ちょっと。そいつは私に負けたのになんで望みが叶えられるのよ⁉」
パーラインは背後からジェイルに指を差して、納得がいかず怒っていた。
「こいつは既に俺のテストに一度合格している。それに機転を利かしたレースも楽しませてもらったしな。お前はジェイルの真似をして付いて行っただけだろうがな」
ガーウェンの嫌味の言葉にパーラインは悔しそうにしてそっぽを向いた。ジェイルも自分の望みが叶えられる理由について理解した。
「それにしても死者があんな風に蘇るなんてな」
心の隅で思っていた事を呟くように言うジェイルにガーウェンが「ああその事か」と口にする。
「さっきのように蘇るのは身体の負傷箇所が激しい奴、限定なんだ。俺に心臓刺された程度のお前ならあんな大げさに生き返ったりはしない。どちらにしても傷を負った者や死者に対しては、黒い煙、黒き(ブラック)命の(オブ)霧が傷を治癒させたり死者を蘇生させる。生き返っても死んでるなんてのは矛盾した話だがな」
流暢に話すガーウェンの言葉にジェイルは改めて死者の蘇り方を認識した。
そして、要塞の外に出た一行。すると、薄暗い空から眩い光が覆い始めた。
その現象に困惑するジェイルを横にガーウェンは「来やがったか」と辟易として呟く。
光から薄い光の階段が現れ、薄暗い空で覆っている光の中から白いローブを着た七人の人間が現れ、ゆっくりと光の階段を下りジェイル達に向かってくる。
下りてきた人物達はフードを被り顔が見えない。
しかし、先頭を歩く一人だけはフードを被ってはいなかった。その人物は初老の男性だった。
肩には光沢のある青いケープを羽織った、白髪で紳士的なイメージだったがどこか虚ろに見える瞳をしていた。
「やあガーウェン君。調子はどうだい?」
その人物は気さくにガーウェンに話しかける。
「おい、まだ約束の時間じゃないはずだろ?」
ガーウェンはその男を威圧するように言う。
「つれないなあ。君と私の仲じゃないか。それとも君が私との仲に亀裂を入れたいというのなら今の君の地位と、このリンダルトはどうなるのかね?」
男は臆せずガーウェンに言う。ガーウェンは眉間に皺を寄せ怒りを抑えていた。