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3章 見極められる覚悟 6話

 ジェイル達に向かい、咆哮(ほうこう)や唸り声を上げ、鉄の檻を噛んだり爪で引っ掻いていたりしていた。既に鉄の檻がその爪や牙で傷が付いているのがはっきりと視認できる。


 確かにこれでは、入った瞬間、食い殺されるのが目に見えている。


 ジェイルを含めた三人は完全に立ち(おう)(じょう)してしまった。


 しかし、時は待ってくれない。後ろを振り向いてみるとグロリバーが、鉄の床の四枚目を渡っていた。


 何か秘策はないか? とジェイルは必死で思案する。


 よく檻を観察してみると所々、檻の鉄の棒を足場にして上っていけば何とかなるのではないか、と閃いた。ジェイルはすぐさま行動を開始する。


 まず虎の注意を()らすため、地面に落ちている大きめの石を拾った。


 注意を()らさず無暗に登ろうとすれば、手や足が食われかねないからだ。そして、ジェイルは虎の後ろを目掛け石を投げた。虎の頭上から後ろに飛んでいった石を目でじっと追う虎。そして今だ、と思ったジェイルは、すぐに鉄の檻を上り始めた。それを見た二人はこんな方法があったのか、と目をギョっとさせていた。


 そして、急いでジェイルの後に続こう、と横で二人も同じように登り始めた。しかし虎の一頭がジェイル達に気付くと、左側で上っていた白いスーツの強面(こわもて)の男に襲い掛かる。白いスーツの強面(こわもて)の男は足を噛まれてしまった。


 「うっ、あああぁ!」


 気持ちよさそうな喘ぎ声を上げながら手を放してしまい、足を噛まれた状態でぶら下がってしまった白いスーツの強面(こわもて)の男。鉄の檻の中に引きずり込もうと虎は足を嚙みながら凄い力で檻の中に引きずり込もうとする。丁度その頃、ジェイルと女は鉄の檻を上り切っていた。


 「ずるいぞお前ら! 正面から入りやがれ!」


 観客達から非難の声が鳴り響くが、ジェイルと女は無視して進んだ。


 辿り着いた鉄の檻の上では足の踏み場は一本分の足が通る程、隙間が大きいため、檻の鉄の棒を慎重に渡っていかなければならない。


 一歩、また一歩と慎重に進んでいくジェイルと女。


 そして、三分の一程、進んだ所で、もう一頭の虎がジェイル達に気付き唸り声を上げて来た。


 虎は四メートルは上にいるジェイル目掛けジャンプしてきた。


 ガシャン、と音を立てジェイルが足場にしている鉄の棒に勢いよくぶつかる。


 ジェイルはそのぶつかった反動でバランスが崩れてしまう。フラフラとした身体を必死に立て直そうとする。そんな横で女は先に行こう、と前に進む。虎は前に進む女に鋭い目線を向け、今度は女の方に向かい鉄の棒を目掛けジャンプした。女もぶつかった衝撃で体制を崩す。


 体制を整えたジェイルはもっと早く、そしてバランスを維持できる渡り方はないか、と思考を回す。


 そんな事を考えながら四足歩行する虎を見てジェイルはまた新たな()(さく)を思いつく。


 ジェイルは虎のように四足歩行で移動しよう、と姿勢を下げ四つん這いになった。四足歩行で移動した方がバランスが崩れにくくなり、移動スピードもそこまで遅くはならないと考えたからだ。


 そして、ジェイルの四足歩行の移動は上手く機能していた。バランスも崩れにくく危なげながらも進んでいく。


 幸いな事に、虎は女の方に注意が向いていて、その隙に、ジェイルは四足歩行での移動で鉄の檻の上を進み終えると下に向かい飛び降りた。しかし、その直後、檻の出口の扉が勢いよく開いた。グロリバーが鉄の檻から出て来たのだ。しかも手にしていたその斧には真新しい血がべっとりと付いていた。


 ジェイルはまさか、と思い鉄の檻の中の様子を確認した。鉄の檻の中の二匹の虎と足を噛まれていた白いスーツの強面(こわもて)の男が首を斬首された姿で殺されていた。


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