3章 見極められる覚悟 4話
コロッセオに到着し、中に入ったガーウェンとジェイル。
コロッセオの観客席にも大勢の快楽戦士やゴロツキ達が酒を飲み交わしながら騒いでいた。
しかし、ジェイルは、内観や観客席以上に圧倒される光景を目にする事になった。
ジェイルから一番近い所にある、6メートルの鉄の床が、地面に6メートルの間隔を開けて、五カ所設置されていた。
そして、一定のリズムで自動で床が勢いよく開き、閉じていた。しかし開いた先に落とし穴があり、その穴の中から見えたのが針の山だった。
その針の山からは、いたる所にベッタリと血がこびり付いている。
それだけでもぞっとするのだが、さらにその先には、横向きの長方形の鉄の檻があり、その中に閉じ込められた二匹の巨大な虎がいた。どう見ても現実離れした大きさに驚くジェイル。そして、如何にも餌に飢えてそうな目で、会場にいる人間達を、舐めまわすように見渡していた。
最後はアスレチックで遊ぶような四角い網状で出来た縄はしごの雲梯だった。
よく見てみると、その下からぼんやりと赤い光と白い湯気が立っていた。その赤い光の正体は溶岩だった。縄はしごの雲梯の下に、大きい四角い穴が開いてあり、その中に溶岩があった。
それだけではない。縄はしごの雲梯をよく見てみると、何やら淡黄色の細長い物が縄に纏わり付き、クネクネと動いている。
……蛇だ。
数は百匹を超えていた。
それを、猛毒であるガラガラ蛇だと認識した時には、ジェイルの表情は青ざめていた。
「どうだジェイル。中々のもんだろ。これから始まるのは劇的な障害物レースだ。あの三つの難関を突破し、ゴールして見せろ」
自慢げに語るガーウェンの横でジェイルは苦悶の表情をしていた。無理もない。出来る事なら今すぐにでも逃げ出したくなるような窮地にジェイルは立っているのだから。
「それともう一つ。このレースにはお前を合わせて五人で挑んでもらう」
「五人で?」
「レースなんだから当然だろ」
ガーウェンがそう言うと、ジェイルの後ろから四人の人間が近づいて来た。
その四人は威風堂々(いふうどうどう)とした面持ちで会場にやって来た。
白いスーツを血で染めている強面の男や、黒いタンクトップと短パンを身に着けた肥満体系の男。その男達の腰の脇には西洋風の剣が備えられていた。
その中には地獄に着いたばかりのジェイルの首を斬首した男が混じっていた。背中には血がベッタリと付いた斧を背負っていた。
それを見たジェイルは驚き、すぐに眉間に皺を寄せた。
嫌でも怒りが込み上がってくる。
だが、むさくるしい男達の中に一人だけ可憐な女性がいた。
ブロンドで巻き髪のロングヘアーでまつ毛が長い二重の瞳に、白いワンピース姿の女性。腰にはベルトが巻かれ、そこに西洋風の剣や何故かナイフまで腰の脇に備えている。
明らかに場違いと思えるその女性も他の男達と一緒にこちらに向かってくる。
互いが互いを睨み合っていた。しかし女性だけはどこか遠くを見つめていた。
「てめえ、あん時のへなちょこか? またこのグロリバー様に首を跳ねられたいらしいな」
グロリバーが悪意に満ちた表情でジェイルの前に立つ。ジェイルはグロリバーに敵意を向ける。
「今度は俺がお前を殺してやるよ」
ジェイルはグロリバーの前に顔を近付け睨みつける。
「やれるもんなら、やってみろよ」
グロリバーはニヤついた笑みでジェイルの言葉を笑い飛ばす。
そこで、ガーウェンがピストルを取り出した。