2章 生者の血を求めて 7話
「ごほっ、ごほっ、このクソヤロー! せっかく人が親切心で起こしてやったってのに何しやがんだ!」
激怒するジェイルの言葉にようやく耳を傾けた中年の男性は落ち着きを取り戻し、攻撃するのを止めた。
「親切心じゃと? ‥‥‥よく見たらお前さん。あのいかれたゴロツキ達とは違う目をしておるのう。平常心を保てておる」
ジェイルに近づき、ジェイルの目をじっと見つめる中年の男性。どうやらジェイルをそこらの快楽を貪るゴロツキ達と間違え、迎撃してきたらしい。
そして中年の男性はスプレーをポケットにしまい、ジェイルに手を伸ばす。
「すまんかったな。つい、あの野蛮なゴロツキ達がまたわしの研究を妨げに来たと思ってな。わしはアランバ・ピカロソだ」
「あんたがアランバか。俺はジェイル・マキナだ」
アランバの誤解していた理由を聞いたジェイルも落ち着きを取り戻しアランバの手を握り起き上がる。
そして、ようやく、目的の人物を探し終えた事にホッと胸を撫で下ろすジェイル。黒い煙もようやく晴れて来た所で二人の会話も成り立とうとしてきた。
「なんじゃ、わしを知っておるのか?」
「ここに来る前に、ヨシュアって男にあんたの事を聞いたんだ。あんたに聞きたい事があってな」
「ああ、あのクソ真面目な兄ちゃんの事か。で、わしに聞きたい事と言うのは?」
アランバは乱雑に置かれている手榴弾を綺麗に並べよう、と手を動かし始める。ジェイルはそれを見ながら、生者の血に付いて尋ねてみた。
作業をしながら聞くアランバは生者の血と言う言葉を聞くと軽快に動いていた手がピタリと止まった。そして険しい表情に一変した。
「何故、生者の血を必要とする? あれはこの世にとって、最も不浄な物だぞ」
ジェイルから事情を聞こうとするアランバ。それに対してジェイルは俯き、理由を話そうか悩み始めていた。
アランバの口ぶりからして生者の血について何か知っているのは間違いない。だが、どんな理由をアランバの前で並べ立てたとしても、人を抹消したいなどと言うのは気が引けるジェイル。
しかし、牢屋での決心した己を思い出し、事の経緯をアランバに包み隠さず話した。
「‥‥‥なるほどな。お前さんはその男に復讐する為に生者の血を必要としているわけだ。それにしてもこの地獄で復讐を果たそうなんて馬鹿な事を考える奴が居るとはな」
「―—馬鹿な事だと!」
よほど頭に来たのか、今度はジェイルがアランバに食って掛かる。
しかし、そんなジェイルを見てアランバは、憐れむような目で見つめ返す。
「いいか。よく考えて見ろ。こんなイカれた快楽しか得られない世界で仮に復讐を果たせたとして。お前さんに何が残る? 達成感か? 幸福感か? 優越感か? そんな物を得ても、この地獄での先の生活には何の影響もないんだぞ」
アランバの説得にジェイルは首を左右に振り始めた。