序章 始まりの弾丸 1話
完結を目指して頑張ります。
それと目標ではありますが電子書籍化もしたいとも思っています。
宜しくお願いします。
夜の二十一時、チラチラと雪が降る道で、傘もささず、歩く男性がいた。
黒いコートを着て肩まで長した髪につり目の一重目蓋。
その男は遅くまでバイトをしていて、片手にコンビニで寄ったお弁当と缶ビールの入ったレジ袋を手にしていた。
男は陰鬱な表情だった。街灯が照らされている寂し気な住宅街の歩道を歩いていく。
欧米国のアメリカ、フロリダ州。
そして、今日は二千二十七年、十二月二十四日のクリスマスイブの日でもあった。
しかし、町は活気だっていなかった。
アメリカだけでなく、世界は経済が悪化し景気後退に陥っていた。
それだけではない。世界の犯罪率は八十パーセントを超えていた。
相次ぐ事件が勃発するせいで検察も裁判も上手く機能しない状況が何十年にも渡り続いている。
世界は別名、悪魔の世界と言われるようになっていた。
しかし、男はそんな世界でも、誠実に生きようとしている。
男の名前はジェイル・マキナ。
ジェイルが夜道を歩いていると、二人の親子が前を歩いていた。
「ママ、明日はクリスマスだね。イリス凄い楽しみなんだ。だって初めてのクリスマスだから」
「そうね。ようやくパパの収入も良くなって初めてパーティーが出来るようになったしね。サンタさんもパパが頑張っている姿を見てくれてたから、イリスちゃんに絶対プレゼントを渡してくれるわよ」
母親は長い髪に眼鏡をかけ、傘をさし、白いロングコートを着ている。
子供はフードの付いた防寒服を着て愛くるしい瞳で無邪気に笑っていた。
その親子が暖かく満面の笑みでジェイルの横を通り過ぎていく。
ジェイルは自分も真摯に生きて行けば、ああ言う家庭を作れるのかな、と思いその親子に羨望の眼差しを向ける。
しかし、親子と少しずつ離れていった次の瞬間。
「――きゃあぁー!」
突然、先程の母親の壮絶な悲鳴が住宅街に響き渡る。
ジェイルは何事か、と思い慌てて後ろを振り向いてみると、イリスが仰向けに倒れていた。
そして、その前の歩道を黒い雨合羽を着た男が全力疾走で走っていく。
その男の手には、街灯で照らされた光った物が一瞬見えたが大分距離があり視認できなかったジェイル。
ジェイルは手にしているレジ袋を手放し、急いで親子に向かい走り出した
「イリスちゃん! しっかりしてイリスちゃん!」
親子の所に駆け寄ると、イリスは大量の血を腹部から流し、弱々しい呼吸をしていた。
包丁を手にした通り魔の犯行。
「い‥‥‥たい。いた‥‥‥いよ。ま‥‥‥ま」
今にでも閉じそうな目で、口を必死に動かし言葉を伝えようとするイリスを前に母親は大粒の涙をポロポロと流して、イリスを抱き抱えていた。
ジェイルは動揺しながら急いで警察と救急車を呼んだ。
警察と救急車を待ち五分程してからイリスがピクリとも動かなくなった。
「お願い目を開けて! イリスちゃん!」
母親は自分が来ているコートをイリスの腹部に押さえつけながら必死に出血を止めようとしていた。
白いコートが瞬く間に赤く染まっていく。
しかし、イリスの出血は止まらない。
近くに病院も無くジェイルはどうする事も出来ずにいた。
そして、イリスの呼吸は完全に止まってしまった。
次回も引き続き頑張ります。