4.男はつらいよ(ステータス的に)
何故か半分ほど消えていたので修正(泣)
狼と言えば嗅覚ではないか。
……なんて思った僕は、ノエルに人の匂いがしないか確認して貰ったのだけど……結果は芳しくない様子。
「見つからなかった……ごめんなさい……」
「居たらいいなって思っただけだから気にしないで」
最初は「頑張る!」って張り切っていたノエルが項垂れている。けれど、撫でると耳と尻尾に元気が戻って笑顔になってくるこの感じ、可愛すぎて癖になりそう。
前から思ってたけどさ、獣耳っ娘最高!
あ、狼は女の子になって出直せ。
「……レベル、上がった」
「え? なんの? というかなぜに?」
「メイド見習い。ご主人様にご奉仕すると、上がる」
「……まあ、癒されてるからご奉仕にならなくもない、のかな」
ご奉仕=エッチなことっていうのは偏見。
けれど、そう考えてしまうのは男の性なのだ。
「レベルで思い出したけど、メニューにパーティー設定とか無いのかな……あったし」
「パーティー設定、あった。これがどうしたの?」
「いや、経験値の等分配とかあるのかなって」
確認してみたところ、等分配ではなかったけど使える設定だった。
例えば、経験値が10なら半分は2.5と2.5で2人に入り、残りの5は貢献度に応じて分配される。
今さら20で例えれば良かったと後悔。
全部ひとりにあげるのもあったけど、ノエルにそうしようとしたら断られた。もしするなら僕にして欲しい、と。
それだとノエルが強くなれないからダメです。
「あれ? ノエルって戦えるの?」
「うん。戦うのは……慣れてる」
「そう……? でも、無理はしなくていいからね」
「あ……わかった!」
慣れてる、と言った時の表情が暗かった。
けれど、無理はしなくていいという言葉で嬉しそうに笑ってくれた。もしも戦うのを強要されていたのなら、僕が出来るだけ甘やかしてあげよう。
辛く当たるよりは簡単なお仕事だし。
そして、早速狼のお出まし。
狼vs夜狼族の戦い。まあ、危なかったら助けるけど……ノエルは戦い慣れてるって言ってたし、僕より強いと思うんだよね。
そう考えている間に、ショートソードを構えたノエルが走り出す。構えも様になっている。
ノエルが剣を振る瞬間、それに合わせて噛み付こうとする――が、今の動きはフェイントで、華奢な足から蹴りが放たれた。避けられずに軽く浮く狼。
大きな隙を逃さず剣によって真っ二つ。
何かをする暇もなかった。
【剣士見習いのレベルが1上がりました】
頻繁に出てくる狼はそこまで強くない。
だからと言って、待ちに徹している狼をナイフで倒すのは僕には無理だろう。魔法を使っていいのならともかく。
戦い慣れているのは本当らしい。
「お疲れ様。ノエルって強いんだね」
「それほどでも……ちょっとある」
ちょっとあるんだ?
照れつつもドヤ顔のノエルが可愛い。
ここでお互いのステータスを確認。
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名前:ユキ
種族:精霊《愚者Lv4》
第一職業:剣士見習いLv9
第二職業:魔術師見習いLv10
ソウル:161/189 (87+70+32)
マナ:181/287 (170+39+78)
身体能力:F
〈筋力:43〉(10+22+11)
〈敏捷:58〉(14+31+13)
〈防御:37〉(6+21+10)
〈器用:56〉(18+19+19)
〈体力:42〉(9+28+5)
〈再生:50〉(13+18+19)
魔法性能:F
〈精神:52〉(29+23)
〈操作:39〉(22+17)
〈制御:42〉(30+12)
〈抵抗:59〉(23+15+21)
確率系統:G
〈ドロップ:74〉(27+28+19)
〈レアドロップ:52〉(32+10+10)
〈クリティカル:61〉(30+21+10)
◇選択可能職業◇
《平民Lv6》《狩人Lv1》《木こりLv1》
◇スキル◇
【言語理解】【スキル鑑定】【無限収納】【スキル共有】【因子吸収Ⅰ】【武器作成Ⅰ】【性転換】【火魔法Ⅰ】【水魔法Ⅰ】【剣術Ⅰ】【スラッシュⅠ】【バリィⅠ】
◇魔法リスト◇
『トーチⅠ』『アギⅠ』『アクアⅠ』
◇選択可能種族◇
《夜狼族Lv1》
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名前:ノエル
種族:夜狼族Lv2
第一職業:メイド見習いLv6
第二職業:剣士見習いLv1
生命:396/396(217+83+60)(×1.1)
マナ:174/174(43+86+30)(×1.1)
身体能力:E
〈筋力:75〉(18+39+12)(×1.1)
〈敏捷:83〉(19+43+14)(×1.1)
〈防御:47〉(15+28+10)(×1.1)
〈器用:74〉(11+51+6)(×1.1)
〈体力:55〉(13+29+8)(×1.1)
〈再生:59〉(9+41+4)(×1.1)
魔法性能:F
〈精神:28〉(4+22)(×1.1)
〈操作:33〉(3+27)(×1.1)
〈制御:31〉(4+25)(×1.1)
〈抵抗:58〉(9+38+6)(×1.1)
確率系統:G
〈ドロップ:51〉(9+30+8)(×1.1)
〈レアドロップ:36〉(13+16+4)(×1.1)
〈クリティカル:71〉(19+36+10)(×1.1)
◇選択可能職業◇
《平民Lv5》《狩人Lv1》《木こりLv1》
◇スキル◇
【身体強化Ⅰ】【言語理解】【隠密世界Ⅰ】【下僕Ⅰ】【清掃Ⅰ】【メイド服装備Ⅰ】
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メイド見習いとは一体。
ステータスが全体的に高くて【メイド服装備】なんていうネタスキルっぽいのもある。【清掃】はまだ分からないでもない。
「あれ、最低値なのを抜きにしても僕のステータスって微妙じゃない? どういうことか分かる?」
「……? 男の人は、低くなるもの」
「へっ?」
首を傾げながら常識を語るように言ったノエル。どうやらステータスの差が男女であるらしく、男性は女性の半分ほどしかないそうだ。
更に、職業の成長値も低いため、この世界では男性が圧倒的に不利なのである。神は男嫌いなのか事情があるのか。
どう考えても嫌がらせとしか思えない。
「あ、【性転換】スキルってこの為に……?」
「……わくわく」
「いや、着替えが無いから今はしないよ?」
「あったらするの?」
「……ちょっとだけ、興味がなくも無いのと、ステータスが低いのは危ないかなって」
ちょっとだけですよ? ええ、本当に。
女の子の体になれるって割と夢があると思うんだ。可愛い服……は別にいいけど、体の違いを知ってれば服を脱ぐようなことをする時に役立つだろうし。
……あれ? それだと、一人で弄ったりしないと……
「ご主人様? 顔が赤いよ?」
「う、ううん、何でもないんだ。女の子になってみるのも悪くないんじゃないかと思っただけで」
着替えを用意出来る環境になってから、ね。
【スラッシュ】と【パリィ】は剣で使うスキルなんだろうけど、使い方が良く分からない。
説明を見ても抽象的な感じだし。
「スラッシュはどうすれば使える?」
「普通に……あ、んと、最初は声に出しながら使うと良いって聞いたことある」
「〝聞いたことある〟……ね」
最初から普通に使えたってことですか。
でも、声に出していいならやってみよう。
ナイフを中段に構えて、
「スラッシュ!」
振り抜く間だけ加速した。
ナイフだからそこまででもないけど、大剣とかならもっと強力なはずだ。パリィは防御系だからまだ使えない。
次は魔法。心の中で「アクア」と念じる。
すると、数メートル先に低めの水柱が現れた。
「消費マナはアギと同じ、と。水は消えないんだね」
足元に水が伝ってくる。密室で何度も使えば泳げるようになるのではないだろうか。やる意味は全くないけれども。
下らない事を考えていると、後ろからつんつんされた。
「……ご主人様、いいもの見つけた」
「ん? いいもの?」
「物じゃなかった。でもね、これ見て」
可視化して僕に見せたメニューには、【称号】と書いてある。なるほど、ゲームではよくあるものだ。
称号と言えば、補正がかかったりもする。
とりあえず見てみようか。
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◇取得済み称号◇
転生者・愚者・ノエルの主
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◇転生者◇
・記憶を保持したまま別世界から転生した者。取得経験値が増加する。
◇愚者◇
・特別な精霊の一体。神の理を打ち砕かんとする者。瞬間的判断、感情の制御に補正がかかる。
◇ノエルの主◇
・下僕に好かれている証。ノエルの10分の1だけステータスに補正がかかる。ノエルにあらゆる面で特効。
ほう、経験値増加とな? スキルに無いから気にしてなかったけど、確かにレベルの上がる速度が早いと思っていた。ものすごく納得である。
愚者は――すごく、厨二です。
ただ、補正は助かる。戦闘の時に冷静でいられるのはこれのお陰なんだろうね。
ノエルの主? ああうん、ノーコメントで。
あらゆる面で特効って。ふざけた称号だ。
ノエルの称号は転生者、蘇りし者、ユキの下僕。
まあ、蘇りし者は元々この世界の人間だったからじゃないかと思うし、ユキの下僕については何も語ることがない。
なら、そろそろ出発しなければ。
……一時間経ってもおかしくないため武器を新しく作った。ノエルは二刀流だそうなので、ショートソード二本。カッコ可愛い。あと、武器もちょっと良くなってる。
【武器作成Ⅰのスキルレベルが上がりました】
え? 早くない?
まだ五回しか使ってないんだけど……最初だからってことかな。強い武器があるとありがたいけどね。
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◇作成可能武器種一覧◇
片手剣
短剣
細剣
弓
ナイフ
ハンドガン
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思っていたより増えた。
短剣、細剣はレイピアとして、弓も分かる。ハンドガンはちょっと何言ってるか分からない。ここ、異世界なんですが。銃とか使っちゃっても大丈夫なんでしょうか?
あ、でも、仮作成にマナが100必要だから今度にしよう。
「ご主人様、行かない?」
「ああ、そうだね。早く出口を見つけよう」
探索を再開することにした。
先程から思っていたけれど、ここは明かりが見当たらないのに真っ暗ではない。光源はどこにあるのか、とノエルに聞けば「? わたしは夜目がきくけど、普通に暗いよ?」と言われてしまう。
つまり、僕も夜目がきいているだけなのだ。
精霊とはそういうものなのかもしれない。
何時間も歩き続ける。
段々、代わり映えのしないボロボロの遺跡は飽きてきた。早く出たいのに、なかなか出口が見当たらず奥に進んでいるような気さえする。
いや、こういうことを考えていると……
「また出たし」
違う、狼じゃない。
素早く接近して噛み付きを回避しながら頭を貫く。
【精霊《愚者》のレベルが上がりました】
いいね、マナが増えるのは歓迎。
ちなみに、武器はナイフだけにした。一時間毎に武器を作っていたらマナが無くなってしまう。というか、ナイフだけでも十分辛い。
そんな時だった。
僕達の視界に初めて扉が映る。
これまで歩いてきた所と違い、その扉は生きているものだった。生きているとは言っても、生き物だと言いたい訳ではなく、まだ使われているはずだと思わせる見た目なのである。
それは、機械のような装置が付いた扉。
指紋認証をしそうなものがあるので……
「どうする?」
「ご、ご主人様が決めていいよ」
「いや、でもさ……」
「な、なに?」
誰も居ない謎の遺跡。
唯一生きている謎の扉。
ゲーマーなら誰でもこう言うはずだ。
「そうなったら調べる一択だけど?」
「……………頑張ってねっ!」
「下僕とはなんだったのか」
最初からそうするつもりだったから文句はない。警戒しながらもゆっくり扉に近づく。油断したところで落とし穴が、という可能性もあるのだから。
何事もなく扉に辿り着く。
「さて、どうなるのかな……」
手を置けそうな場所に触れてみる。
《認証を開始……失敗。解錠の条件を満たしていません。リグルフの討伐数は現在9匹。残り6匹で条件を達成できます》
「「?」」
思わず二人揃って首を傾げた。
認証、解錠、条件、討伐数残り6匹。
倒した魔物と言えば狼だけ。
まさか?
これはもしかするのかな?
「ご主人様っ!」
「うん、これは来たね」
頷き、二人で走り出す。
あの狼を殺るために。
しかし、物欲センサーが働いたのか、ここに来るまでと同じ時間を費やしてなんとか6匹倒すことに成功した。
僕達の心は一つ。
「「お家、帰りたい……」」
走り回っていたので疲労がピークなのだ。
けれど、二人とも忘れていることがある。
……僕達に帰る家なんてないのである。
ステータスが難しい!
アギとアクアは皆さん分かりますか?
そう、ペル○ナです。大好き。
ただ、丸パクリはいけないので違うのも出しますよ。
次回は進展があります。お楽しみに。