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097 やっと終わった


 はよーん! 手乗りふぇんりるー! ごめん嘘、重くて無理です。レンです。


 先日のギルド関係者の一件は色々面倒でしたね。

 あれから数日後には、あのリカルドとか言う人の処罰とか色々教えてもらえた。リカルド氏は左遷に近い異動になるらしい。

 なんでも今年の冬に大規模な討伐があるらしく、その大討伐の拠点に行って指揮をする事になる王都ギルドサブマスターの雑用として連れて行かれて、こき使われることになるのだそうな。その大討伐の後も色々残念な扱いを受けることになってるとかなんとか……南無南無。

 ちなみにこの大討伐についてはまだ機密と言うことで、秘密にするように言われた。いや、言わないから、普通。


 ギルドの改革に関しても若干話を聞いた。

 この国のギルドは保守体制が強いらしく、元の駄目駄目すぎる現状維持をする傾向が強かったらしい。今の幹部の半数近くはそういった保守派。ちなみにギルマスとその派閥は改革派だとか。

 新人の死亡率を下げたり、他にも色々と動きたいと思いつつも、人手が足りずに上手く動けなかったらしい。ギルマス自身、ギルド本部、他国ギルド、国、貴族、他のギルド幹部などとの折衝で雁字搦めになってて中々動けず、何も出来なかったとか何とか。いや、知らんがな。そんなこと言われても困る……


 そこに漸く主導的改革ができるとなって物凄い勢いで動いてるらしい。

 手駒が増えたら今の保守派とか、腐敗してる職員とか色々処罰するとかなんとか……私のこと巻き込まないでね? とは言え、急に変えすぎても問題が沢山出てくるだろうから、あまり焦って変えないようにしたほうが良い、とは忠告しておいた。

 おまけで教室のレイアウトとかは多少教えておいたけど、貴族の学校に行ってた人も雇えるかも知れないので、そっちも聞いて参考にするといいかも? 教え方に関しては、実際教える担当の人が居ないと教えようが無いので、パス。あと単純に面倒くさい。


 他にも別にどうでもいい情報として、キャリーカートの普及でギルドに持ち込まれる素材の量が増えてギルドの収益も増えてるとかなんとかいう話が……へー、スゴイデスネー?



 んで、今日は鍛冶修行の日。の、休憩時間。今日は別にトリエラ達と待ち合わせとかはしてない。

 もう九月も下旬と言うことで風が冷たく感じる日がちらほら。でも鍛冶なんてやってればくっそ暑くて汗だらだらなので、今日は裏通りにでて風に当たることにしてみた。むふー、涼しいのう。


「むはー」


 うん、誰もいないから変な声だしても大丈夫。この時間は人通りが少ないからねー


「あ、あのっ!」


「ふわっ!?」


 ぐはっ!? 人が居た!? って言うか、私!?


「あ、はい。なんでしょう?」


 【隠蔽】と【偽装】で色々誤魔化して返事してみる。いきなり話しかけてこないでよね! 本気でびっくりした! ……あ、ノルン、大丈夫だからね? 噛んじゃ駄目だからね?


「そ、その! お……俺! そこ……そこの、工房で働いてるんだけど、その! こ、こっこっこっ、今度、その!」


 ううむ、テンパっておられる。ちょっと落ち着こうか? はい、深呼吸。すー、はー、ってね? ん、落ち着いたぽいね。それでなに? ……この子はお隣の工房で働いてる見習いの鍛冶師らしい。見た感じ、13~15歳位かな? で、用件はというと……来週の収穫祭で一緒に遊ばないか、と言うことだった。ああ、そう言えばもうそんな時期かー


 収穫祭は九月の最終日の前後あたりから十月の初日前後辺りまでの三~五日ほど行われるお祭り。今年の収穫を祝って、また、来年への豊作祈願も込めて行われるドンちゃん騒ぎ。

 私がいた孤児院がある街だとそんなに大規模って言うほどではなかったけど、出店は幾つか出てたりしたし、教会で炊き出しとかも有った。私達孤児はお金を持ってなかったので炊き出し目当てで出掛けたっけ? あとは大道芸を遠目に盗み見たり? 懐かしいなあ……

 で、地元ではそこそこのお祭り騒ぎだった収穫祭、当然王都であれば規模が段違いなわけで。そしてこの少年は私を誘って一緒にその収穫祭を回りたい、と。ふーん?

 そうだなあ……トリエラ達に声を掛けてみようかな? 丁度明日は授業だし? と言う訳で、うん。ごめんなさい。

 凄くしょんぼりした様子で自分の工房へ歩いていく少年を尻目に、収穫祭に期待を馳せてワクテカ。フフフ、悪女だね、私!


 ……あ、遠目に何人も見習いとか丁稚風の少年達がこっちを見てる。もしかしてさっきの少年と同じ目的? やばい、逃げよう。と言う訳で早々に工房に逃げ込んだ。


 と言うか、こんなに狙われてるということは顔を見られたって事だよね? 一体何時の間に顔見られたんだろう? トリエラ達とおしゃべりしてる時とかかな? んー?



 そんなこんなで授業最終日だー! さっさと終わらせてもう帰る! 面倒くさいのはもうイヤだ!

 と言う訳でちゃっちゃと授業終了。え? 飛ばしすぎ? そんなこと言われてもなあ……


 結局、リューはあんまり結果がついてこなかった。とは言え頑張ればなんとかなるんじゃない? と言う程度には何とかしました。あとはマリクルが、マリクルが何とかしてくれるはず!

 ボーマンはやる気の無さが原因でリューと同程度か多少上って辺り? 孤児院に居た頃から思ってたけど、こいつのやる気の無さとサボり癖はちょっと洒落にならないと思う。それでもまあ、生きるうえでは不都合は無い程度にはなった、と思うけど……コイツもマリクルに任せよう。ケインでも別にいいけど。

 他の面々は優秀な結果になりました。若干不安だったアルルとクロも普通に問題無いレベルになったしね。


 恩人枠で受け入れた面々は無理やり詰めに詰め込んだ。


 シェリルさん姉妹は、シェリルさんはアルル達と同程度、妹のメルティちゃんはちょっと怪しいところがあるけど、まあ及第点?

 ギムさんはある程度読めてたというのもあって特に問題は無いレベルになった。流石である。後発だけあってかなり真面目にやってたしね。

 あとはその仲間の人達だけど、リュー以上アルル未満? 一人読み書きも計算もしっかり出来てる人が居たので、後はその人に頑張ってもらう方向で。



 で、最終日なんだからご馳走とか無いのかとか馬鹿リューが言い出して、それに乗った連中も騒ぎ出して……あのね、最終日だからってなんで特別なことしないといけないの? ぶっちゃけ面倒。

 ところがいつも通りに適当に誤魔化そうとしたら、まさかの伏兵が! なんとマリクル。前に食べさせた豚丼が甚くお気に召していたようで、是非食べたいとのこと。

 いつも一歩引いてて、寡黙なマリクルがそんなこと言い出したものだから大騒ぎ。私としても三馬鹿のリクエストなら却下するところだけど、マリクルのお願いであれば吝かではないので、諦めて作りましたよ。ただし、お米の分の材料費もあるので、いつもよりお値段高めにしたけどね。

 だというのにお代わりの嵐。君達、その細い体のどこにそんなに入ったの?


 ここまできたらもうちょっとサービスしてやろう、と言う訳で食後のデザートに飴玉を食べさせた。前に森の奥にストレス発散に行った時に作った奴ね。ちなみに蜂蜜味とオレンジ味。他にも色々な味作ったけど、全員この二個ね? お代わりはない!


 みんなが飴玉に絶句してるのを尻目に、トリエラに一緒に収穫祭を回らないかと提案しようとしてたら、逆に先に誘われた。むう! 考えることは一緒か!


「それで、どう? 一緒に回らない?」


 そんな、ちょっと屈みがちになって視線合わせて上目遣いとか……トリエラ、何時の間にそんな高度な技術を!? そんな顔されたら行かざるを得ない! いや、最初から断る気は無いけど。


「当然行きます。ちなみに他の子達は?」


「アルルとクロはシェリルさん達と回るって言ってた。リコはどうする?」


「当然一緒にいくよ! レンちゃんと一緒!」


 うむ、可愛いのう……野郎共がこっち見てるけど無視無視! こっち見んな!


 その後は工房に帰っていつも通りに鍛冶修練。えーと、これで今月中に造ったのは大体160本? そろそろ魔剣作ってそっちの方の経験稼ぎもできるかな?

 まあそれはそれとして、明日にはお出かけ用に新しく服でも作ろうかなあ? こう、童貞を殺すような……まあ、上にマント羽織るんだけどね。フードも被るし? でもそれはそれ、これはこれ! 折角なんだからおめかししないとね!


 と言う訳で来週はトリエラ達とデートだ! ひゃっほい!


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