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087 割と重要だけど地味な修行回 そのさん


 ちょりーっす! 今日も元気に鍛冶やるぜー! はい、レンでございます。


 いやあ、昨日はちょっとトラブっちゃって焦ったね。でもまあ賄賂も贈ったし、これでなんとかなーれ! いや、もうこれ以上どうしようもないし……こうなって来るとなにかこう、強力な後ろ盾が欲しくなって来るんだけどねえ? でも不用意に変な権力に組み込まれると、面倒事が多そうで困る。むーん。なにか都合の良い感じの権力者はいないものか……

 ……ええい、ごちゃごちゃ考え込んでも仕方ない! そんな事より今はレベル上げだ!



 ってなわけで今日も朝からモリモリご飯を食べて早速鍛冶をやろうと思います。でもその前に報告。新しいスキルが増えました。

 【隠蔽】と【偽装】スキル。色々隠したり、誤魔化したり、騙したりするスキル。【隠蔽】は証拠隠したり、色々な痕跡を消したり、ステータスを鑑定されたりした時に任意の項目を非表示にしたりできるスキル。【偽装】は色々誤魔化したり、ステータスの数値を別の数値に偽装したりできるスキル。どっちもずっと欲しかったスキルなんだけど、両方とも習得難度が高いスキルだったんだよね。似てるようでちょっと効果が違うので注意。それぞれに色々使い道があるのです。ふっふっふ。

 なんでこんなのを覚えたのかっていうと、多分昨日の親方への賄賂とか、ご飯の時に色々しらばっくれたりとかしたのが原因じゃないかなーと……あと日頃から顔隠そうとしたりコソコソしたりしてたから、そういうのがようやく実を結んだ感じ? いや、ほんとね……昨日の晩ご飯の時と今朝の朝ご飯の時、周りの視線が気になって、もうね……

 取り敢えずスキル欄は大半を非表示にして、幾つかのスキルはレベルを低く誤魔化して、ステータスもMPとMGCとINTとCHAは数字を低く偽装しておいた。

 ちなみに親方は一晩中、私の押し付けた刀を眺めたり調べたりしてたらしい。その所為か朝ご飯の時は半分寝てた。頑張りすぎじゃない?


 あ、あと【剣術:抜刀術】って近接攻撃スキルも増えてた。昨日の中庭でのあれで覚えたっぽい? まあ前世でちょっと習ってたし、思い出したって言う方が近いのかも?

 でも私は大立ち回りしようとするとすぐこけるから、基本的には迎撃で使うくらいしか出来なさそうなのがなんともね……この運動音痴の身体は本当にどうにかならないものか……!

 っていうか普通に【剣術:刀】スキルをくれよと! ……いやまあ、目立ちすぎるから刀なんて使えないんだけどね……悪目立ちする意味とか全然ないし。え? 今更? ……一応自重はしている!

 ……でも練習はしておこう。どんなスキルでも基本的にレベルが高いに越した事はないしね。



 さて、気を取り直していい加減に鍛冶をやろう。

 なんてちょっと凹みながら鍛冶場に向って歩いてたら親方さんに呼び止められた。


「なあ、嬢ちゃん。色々考えてみたんだが、どうしてもわからない事があってな……ちょっと聞いてもいいか? ああ、製法を教えろとかじゃないから安心してくれ」


「はあ、構いませんが」


「助かる。それでな、なんでこの刀は柄だのも金属製なんだ? いや、柄に巻いてある紐も金属製というのは素直に凄いと思うんだが、それにしたってこれじゃあ衝撃を殺しきれないだろう? 何度か打ち合ったら手が痺れるんじゃないか?」


 え……? ……あっ!? やっべ、うっかりしてた! 言われてみればそうだよ!? 柄に木材とか皮とか柄糸とか使うのって、衝撃で手首傷めたりしない為じゃん! 私、馬鹿じゃないの!? 遊びすぎたー!

 あー、あー、どうする? どう言い訳しよう? 何も考えないで遊んで作ったとか、言えないよね? というかまずは動揺を顔に出さないようにしないと!? あ、あれだ、覚えたての【隠蔽】と【偽装】使って表情と雰囲気を誤魔化せ! 全力でだ!! 


「ああ、それは遊びで作ったものなので……実戦用ではないです」


 その上で、くてりと首をかしげてしれっと嘘をついてみる。いや、遊びで色々やらかしたのは事実なので半分は本当の事だし?


「あー……なるほどな……覚えた技術を色々試してみたって所か」


 お、誤魔化せた? でもまあ冷静に考えてみれば熱だの冷気だのでも持てなくなるよね……我ながら遊びすぎた、猛省。

 今回の教訓は『武器で遊んではいけません』と言うところかな……いや、遊び心は大事だからね、まだまだ遊ぶけどね!


「そういう事なら納得なんだが、できればちゃんとした拵えに直してもらえんか? いや、技術を盗まれたくないって言うなら諦めるが……」


 あー……そういう事ね、了解了解。


「別に構いませんよ」


 大した手間じゃないから、その位は別にね? と言うわけで15分程で作り直して返却したら、親方はなんか物凄い大喜びで去って行った。うーん、薄々そんな気はしてたんだけど、もしかして親方って鍛冶馬鹿……? いや、別にいいんだけど。



 はあ……なんだかもう既に疲れたんだけど……あ、【隠蔽】と【偽装】のレベル上がってるよ、あはは……はぁ。

 いやいや、気を取り直して、今日はどうしよう? んー……そうだなあ、たまには武器じゃなくて防具でも作ってみる? 攻撃力も大事だけど防御力も大事だよね。そもそも私ってへっぽこだし?


 さて、そうなると何を作ろう? 非力だから金属鎧とかは厳しいかな……あ、でも今なら【重量軽減】辺りを付与すれば……って、私みたいなのがフルプレートメイルとか装備して軽快に歩いてたら悪目立ちするか。革の胸当ては既に色々付与してるし、そうなると……服? 服に付与……いや、まずは服そのものを強力に、って布に何を期待しろと言うのか……

 あ、思いついた。【鋼糸作成】スキルを覚えたんだから、これで金属糸を編んで布状にすればいいんじゃない? とは言っても鉄で作ったら重いから……鉄よりも軽いミスリルで作る? その上で【重量軽減】を付ければ完璧? 染色は……なんかこう、【創造魔法】とかでなんとかする方向で。


 ……ってな感じで作ってみました、ミスリル製下着。いつも通りのアレなデザイン。肌触りはシルクっぽい感じ? それとちょっと恐れていた金属アレルギーみたいな反応は出なかった。ファンタジー金属すげえ! ちなみに色々エンチャントしたので防御力も高い。下着の癖に。後、何故か【CHA+5】の補正が付いてる。意味分からん。

 ちなみにガーターベルトとストッキングもセットなので、足を怪我する心配もないという優れもの。我ながら馬鹿な事やってるね。あ、腕も怪我しないように肘上丈の長手袋も作っておこう。防寒対策にもなるし。

 そのままの流れで換えの下着を数セット、服もそれなりの数を作成。ミスリルメッシュ! そして大事なフード付きマント! これは予備も含めて全部で3着。マントにはいつも通りに【隠身】をつけたけど、今回からは【隠蔽】も付けてみた。これで今まで以上に目立たずにコソコソ行動が出来る筈?

 ちなみに服とか下着に【全属性】を付与すると温度調節機能がおまけで付く模様。更に何故か通気も良いとか、意味が分からない。あー、【全属性】って地味に便利だなあ……

 後はついでに伊達眼鏡の付与を【鑑定】じゃなくて【隠蔽】と【偽装】にしてみた。

 これで【魔性】スキルが抑えられるといいなあ、とか、私の顔面由来の揉め事が減るといいなあ、と思いまして……効果があるといいなあ……

 そして手甲と脚甲も作ってみた。防御面積は多めで、肘上、膝上まで。装甲厚は薄めで軽量化して、いくつものプレートをつなぎ合わせて可動部を多く取り、動きを阻害しない様にした優れもの。軽さと動き易さを重視した分、元々の防御力や耐久性は落ちるだろうけど、そこは色々付与して補えばいい。そしてその完成した防具の表面になめし革を切ったり貼ったりして、今まで使っていた装備と同じデザインの革装備に見えるように偽装。目立たない対策、大事!

 ついでに胸当てや肩当ての裏側にも薄手のプレートを縫い付けて防御力を底上げしてみた。うん、見た目は変わらないけど防御力は一気に上がったんじゃないかな? うむうむ。



 と、そんな感じにあれこれを作ったりしてるうちにとうとう【服飾】スキルがLV10に。ついでに【鋼糸作成】もLV6に上がった。早くない?

 でも色々作ったお陰でミスリルが結構減ったなあ……残りのミスリルインゴットの量は剣4~5本分位かな?

 こうなったらもう自分用の剣もミスリルで打っておこう。カンカンカンっと。いや、刀じゃないよ、ショートソードだよ。目立ちたいわけじゃないし。いつも通り刀身短め、付与もしておく。

 とはいえ念の為、おまけで居合いでの迎撃用に太刀も作成。【ストレージ】操作で一瞬で装備できるしね。でも使う機会が無い事を祈る。


 んー、これで一応は一通り装備は揃ったかな? って、そろそろ昼か。今日はトリエラが来る日だっけ? よし、そろそろ裏通りに行こう。


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