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086 割と重要だけど地味な修行回 そのに


 はい、真面目に修行二日目です。って言っても今日からは魔剣を造る為の素材にする為の剣を作るだけです。また地味な修行の日々が始まる……!


 既に親方には話を通してあるので、追加の鋼材は山盛り手に入れてあるんだけど、まずはこれを全部精錬済みのインゴットにしないといけない。とは言っても【金属加工】はもうLV10だし、【鍛冶】のレベルもかなり高くなってるから【創造魔法】で加工しても消費はそんなに大きくない。

 まあ多少消費が激しいとしても、昨日の魔剣作成関連でガンガンMP使った所為なのか、朝起きたら最大MPが一気に増えたからへーきへーき。なんと650からいきなり950だからね。急に増えすぎじゃない?

 とまあそんなわけで大分無理が利くようになったので、まずはこの部屋一杯の鋼材を全部インゴットに変換。おりゃあ! ……うん、なんか余裕だった。昨日のあれこれで魔力運用系スキルも色々レベル上がってたから、その所為かな?


 そしてこれを全部【ストレージ】に収納して、間借りしてるいつもの鍛冶場へ移動。そして早速剣を打つ。カンカンカンってなもんですよ。

 いやはや、色々スキルレベル上がったお陰で、剣を打つ速度が凄い速くなってる。一時間で一本って意味分からんわ。アホか。

 ……いや、いいんだけどさ……うん、やっと生産チートっぽくなってきたなーって思うよ? でも実際そうなってみるとね? なんだかなーって気分になるよね……


 朝八時から打ち続けて11時までで取り敢えず3本。そこから1時間で全部仕上げて12時。もうお昼ご飯の時間なんだけど……いや、何となく完成した剣を【鑑定】で見てみたんだけど、品質が『最高品質』じゃ無くて『名剣』になってて、思わずポカーンってなっちゃったよ。なんだこれー?

 『名剣』なんてそう簡単に造れるものじゃないんですけど!? 【鍛冶】LV8凄ェ!? じゃねーよ、ヤベェ!  もうね、こんなにぽんぽん名剣レベルの剣打てるとか……ばれたら色々やばいよ!?

 もうあれだ、親方とかに剣見せてって言われても見せちゃ駄目な気がする……前に打った剣もうっかり全部全属性とか付与しちゃったから見せられないし。ヤバイ……どうしよう……?


 ちなみに『名剣』の上になると『剛剣』になります。剣の品質のランクは一応これが一番上。これが打てるようになったらもうここから逃げるしかない。

 ……あれ? 逃げるって言うかそうなったらもう鍛冶修行は終わりでいいのでは?




 そんなこんなで午後になりました。お昼ご飯中、キョドらないようにしようと必死だった。なんかもう疲れた……


 さて、午後も剣を打たないと。昨日、【魔剣作成】とかのレベルが一気に上がったけど、あれは材料になる剣が沢山あったから出来た事だから、ここからは本当に地道に行かないと駄目なわけです。

 うん、でもね? もう既に飽きて来てるんだ。ちゃんと先が見えてるとは言え、もう二ヶ月近く同じ様な事ばっかりだから、もうね……ちょっと目先変えてみようかな? ほら、アレだ、刀でも造ってみようかなって? いままで何度か挑戦してきたけど全然駄目だったし? でも今は色々と鍛冶関係のスキルが増えたし、そろそろ大丈夫かなーってね。

 と言うわけでインゴットを炉にぽーん! そしてお約束の【創造魔法】スキル発動! その上で鍛冶開始! 刀はどうやって打てば良いんでしょうか!? ……あ、何となく分かったような? あとはスキル補正に抵抗せず、流されるままに身体を動かして……



 ……と言うわけで刀が打ちあがりました。刀身だけだけど。いやはや、意外と何とかなるものだわ。

 記念すべき一本目なので、このまま仕上げてみようかな。刀の拵えの部分は色々あるけど、柄は木材で、柄を柄糸で……あー、折角だから遊び心も入れてみようかな。総金属製ってどうだろうか。柄も柄糸も鋼鉄、というか鋼糸で編み上げるとか……作り方分からないけど、こう言う時は必殺の【創造魔法】! うん、造れた。毎度の事ながら、なんだかなあ……いや、いいんだけどね? と言うわけでそのまま拵えから鞘まで全部金属製で仕上げてみた。

 うん、我ながら馬鹿っぽい。でも取り敢えず【鑑定】チェック。名は『無銘の刀』、品質は『良品質』。最初だしこんなものかな? ちなみに刀身の長さは平均的な太刀のサイズ。え? 抜けないだろうって? いやいや、直剣ならまだしも、刀身に反りがある刀なら抜けるんだな、これが。抜刀の時に腰の捻りと全身の動きを合わせる事で私でも抜けるんだよ。……抜けるよね?

 んー、前世まえの知識と経験とを参考にして考えてみた限りでは、抜けるはず……? あとで試してみよう。


 と言うわけで、二本目にー、っと行く前に一応ステータスチェック。えーっと……【刀工】スキルLV1と【鋼糸作成】スキルLV2が増えてるね。あとは称号に【刀匠】。んー、刀を造るスキルは別スキルか……これはレベル上げが大変だ。まあ頑張るしかないんだけど。

 さてステータスも確認したので午後もこのまま刀を打ってみるかな。どうやら刀を打っても【鍛冶】スキルに経験入るっぽいし?



……


…………


………………



 ふいー。ただいま17時。最初の一本目も含めて合計四振り完成。ちゃんと全部最後まで仕上げてある。

 四振り目が仕上がった時点で【刀工】がLV2、【鋼糸作成】がLV4。鋼糸の方はガンガン上がってるけど、刀のほうは先が長そうだなあ……とは言え、慣れない物を造った所為か凄く疲れたので、ちょっと早いけど今日はここまで。まあ、仕事じゃなくて趣味でやってることだから、無理はしない。


 と言うわけで毎度おなじみの中庭で休憩。晩御飯までまだ時間あるし、それに折角打った刀がちゃんと抜刀出来るか試してみたい。……いや、普通に成人してたり身体が大きかったりすれば抜けると思うよ? 大事なのは『私が』抜けるかどうか、ね?

 さて、気を取り直し、腰を落として構えて、そこから踏み込み、腰を捻り、全身を使ってゆっくりと抜刀……おお、やっぱりちゃんと抜けた。やるじゃん、私。そのまま流れるように納刀。

 さて、このまま納刀しておしまい、と言うのも芸がないので、前世の記憶の通りに居合い抜きなんてしてみたり。


 しゅっ! ひゅっ! ……チン。


 流れるように高速で抜刀、構え直して唐竹で斬り下ろし、納刀。……おお、今の私、きっと格好良い。フフフ。


 ドサッ


 なにかを落とした物音? 一人悦に入ってたら、どうやら親方さん達に見られてた模様。やべえ、恥ずかしい!


「ほ、蓬莱刀……?」


「それは、蓬莱刀か?」


 ホウライトウ? なにそれ?


「え? いえ、刀ですけど?」


「カタナってことは蓬莱刀だろう? ……そうか、お嬢ちゃんは随分腕がいいと思っていたが、道理で……蓬莱の鍛冶師は腕が良いって聞いていたが、その流れを汲む鍛冶師だったってことか……」


 親方さん勝手に一人で納得のご様子。他の子弟の方々も私の手にある刀に視線が釘付けだし……あの? もしもーし? 聞こえてますかー? ていうか、蓬莱ってなに? おいエド、先生にちょっと教えてみ?


「あの、蓬莱ってなんですか?」


「え? 蓬莱刀を打てるということは、先生は蓬莱出身ではないんですか?」


 いや、知らねーよ。だから蓬莱ってなんだよ。いいから早く教えろよ。


「蓬莱というのはですね……」


 蓬莱というのは、東のほうにある独特の文化を持った島国らしい。分かりやすく言うと、ファンタジー物で良くある日本っぽい文化の国のこと。この世界にもお約束的に存在している模様。


 ちなみに蓬莱は鎖国とかしてるわけではなく、細々とだけど輸出入でこの大陸と貿易を行ってる、とのこと。

 蓬莱伝来の品々は美術品としても高値で取引されているらしく、その中でも刀は『蓬莱刀』と呼ばれ、武器としても優れているために非常に高値で取引されてるとか何とか。刀一振りでも下手をすれば金貨数百枚以上、ものによっては千枚を超すとか……ちなみに刀を打てる鍛冶師はこっちの大陸には居ないらしい。蓬莱側がそういった技能持ちの流出を規制してるんだとか。


 と言うことはつまり、私の存在は色々アウト! ここに居ちゃいけない人間と言うことです! やっべええええええ!? ここは口止めしておかないと色々不味いことになる気がする! ということでさっきから一人でぶつぶつ言ってる親方さんに根回しだ!


「あの、親方……私が刀を打てるということは、どうか内密に……」


「うん? ああ、分かってる、大丈夫だ。どう考えてもトラブルの元になるからな……おい、お前達! お前達もこのことは口外法度だ! 絶対に外に漏らすなよ!」


 うん、これで安心……かな? いや、ちょっと不安だし、親方に刀一本押し付けておこう。こういう時は賄賂で黙らせるのだ! 口止め(物理)だ!


「親方、これを差し上げますので、本当にお願いします! 本当に! お願いしますね!?」


「お、おう……いや、だがいいのか?」


「いいです! ですから、本当にお願いします!」


「わかってる、任せておけ!」


 ……今度こそこれで安心? でもこれでも情報が漏れるようだったら、もう逃げよう。そうしよう。


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