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079 うぃきとか見てるとふと気付いた時に数時間飛んでる事がありませんか?


 鬱陶しいエドワードを尻目に今日は朝から冒険者ギルドに直行。当然護衛代わりにノルンとベルも一緒。ご飯確保以外では最近あんまり構ってあげられてないので、その内何かしてあげたいところ。むーん。

 っと、冒険者ギルドに行くわけだけど、今日の目的は資料室。魔力剣とかについて調べたいんだよね。まあ、詳しい資料はないにしても多少の情報はあるといいなー、と言う程度のアテでしかないんだけどね。


 などとつらつらと考えながらギルドに向ってぽてぽてと徒歩移動しつつ、昨日今日の食事中とか休憩中に聞いたエドワードとかの事情についてのまとめ! いや、個人的には割とどうでもいいんだけどね……

 なんでもアルノー親方の息子さん、長男のアルフォンスさんと次男のエドワードを比べると、エドのほうが才能があるらしい。一応跡継ぎ予定は長男のアルフォンスさんらしいんだけど、それでも才能がある息子も伸ばそうと褒めながらエドを教育していたらしい。でもちょっと目を放した隙に増長して天狗になっちゃってたそうな。しかも、私が指摘した悪い癖付きで。

 で、困ったことに同時に反抗期を併発してしまい、親方の言うことには一々反発してたとかなんとか。拳骨何発も頂いても反発してたらしいので、筋金入りの馬鹿ですね!

 長男のアルフォンスさんがストイックに淡々と基礎の修行積む人で、尚且つ反抗期も無かったらしく、親方は子育てなんてこんなものか、と思ってたらしいんだけど……長男とまったく違うエドには困惑してしまってどうして良いか分からなくなってしまってたらしい。

 それでもデリアさんがエドに指摘したように、一部からは悪評が出てきて、このまま一部で済まないほどになるようであればエドを放逐しないといけないかも、と思ってたところで私が叩き潰してしまった、と。

 ちなみに悪評流してた一部ってのは仲の悪い斜向かいの工房の親方と息子だったそうです。エドのアレっぷりは反抗期始まった頃からみんな知ってたので、大半の人達は『まだ拗らせてるのか』程度の反応だったそうな。どこまで拗らせてたんだ、エドワード……

 私は見てなかったんだけど、私にへし折られて消沈してるエドワードは目も当てられない様子だったらしい。でも翌朝には吹っ切れたのか、子供の頃のように素直なエドワードがそこに!

 そんな感じで実の息子を放り出さないといけないかもしれないと思い悩んでた親方さんは私に大層感謝したそうな。でもその感謝の行動が、背中バンバン叩きまくるという行動なのはちょっとどうかと思います。本気で痛いです。いや、その後またミスリルもらえたからいいんだけどね……

 でも親方はもうちょっとちゃんと子育て頑張ったほうがいいと思います。ほんとに。



 なんて考えてるうちにギルドとうちゃーく! 朝ごはん食べて直ぐ位の時間だから物凄い混んでるわ……朝のピークタイムか! いや、工房は朝早いからね。朝ご飯食べるのも早いんだよね。それから移動したから一番混む時間にぶつかったっぽい? ちょっと失敗したなあ……

 入り口からロビーにあたる部分に入っていくと、こっちをみてぎょっとする人が結構居る。……うん、ノルンがね、大きいからね。

 ここ最近でメキメキと大きくなったんだよね、二匹とも。このところ色々料理食べさせた所為かな? ベルは成犬位のサイズになったし、ノルンはもう私より大きい。大型の虎? 3m位かな? 私が余裕で乗れる位のサイズ。うん、大きいよね……そりゃ皆驚くよ。


「なんだあれ……」


「グレーターウルフ?」


「いや、でかすぎるだろ」


「じゃああれなんだよ」


「知らねーよ、俺に聞くな」


「あの小さいのがあの狼のテイマーか?」


 うーん、視線が痛い。さっさと資料室に逃げよう。フードを深めに引っ張ってさっさと階段に向かう。

 ここの資料室は二階に有る。無料で開放しているとは言え貴重な資料なので司書さんも二名常駐してる。ハルーラの資料室はここより狭くて司書の人も一人しかいなかったので、そこは流石の王都ギルド。人手も多いんだろうね。


「おや、おちびさん。駆け出しの冒険者かな? 薬草の資料かね?」


 二人居る司書さんのうち、おじいちゃんの方が声を掛けてきた。ちなみにもう一人は若いおねーさん。顔は……まあ、普通?


「いえ、別の資料を探しに」


「ほう……なんの資料かな?」


「魔法の武器について書かれてるものはありますか? 魔力剣とか魔剣とか」


「おやおや、駆け出しなのにもう魔剣かね。まあ、色々なことに興味を持つのはいいことだけどね。ええと、魔剣ね……」


 いや、言うほど駆け出しでもないはずだけどね……いや、冒険者になってまだ一年も経ってないしまだまだ駆け出し? でも一応既にEランクだし……まあなんでもいいか。


「うーん、魔剣や魔法の武具に関しての資料はそっちの棚の奥のほうだね。とは言っても、ここは冒険者ギルドだから、鍛冶ギルドや錬金術師ギルドと違って余り詳しい資料は無かったはずだよ」


「ありがとうございます。何も無いよりは全然マシですから、助かります」


 うん、何もないよりは何かしら分かる分全然マシ。と言うわけで一番端にある列の奥へ移動。ノルン達も私の後ろをのしのしと付いてくる。床がミシミシ言ってるけど、大丈夫かな、これ?

 えーと、それっぽいタイトルの本が……二~三冊? 取り敢えず全部持って更に奥の書見台まで移動。ちなみにこの書見台、お一人用ではなく複数人が並んで読めるような仕様で、斜めになったテーブルって言ったほうが分かり易いくらいには簡易な造り。ここの資料室、羊皮紙の本と植物紙の本と混ざってるから読むためのテーブルも書見台風なんだと思う。まあ私は別に、読めればなんでも良いんだけど。


 閑話休題。


 と言うわけで早速読んでみる。えーと……なるほど。次。うーん……へえ。はい次。ふむふむ……うん、なるほど。ぶっちゃけ一冊目二冊目にはそこまで内容に大幅な差はなかった。

 一冊目は有名どころの魔剣聖剣について。有名な聖剣、魔剣の名称と、代々の所有者、そして現在の所在。あとは言い伝えられてる付与等の能力? 過去に高レベルの鑑定スキルを使って調べたものであればそれを、鑑定されていないものに関しては近くで見てた人物達による付与された能力の予想等が書かれてる。

 二冊目は過去に聖剣や魔剣の使い手で有名になった人の話。これはあんまり有用な感じではなかった。一冊目と被る内容が多かった。

 三冊目は代表的な、と言うか比較的付与されてることの多いスキル。これが当たり。と言うか、知りたかった内容だった。

 付与されたスキルは、人間が覚えるものと同じで10段階のレベル表記。付与された属性魔法も同様。

 よくある付与スキルとしては、装備そのものの強化では【攻撃強化】【耐久強化】【重量軽減】等。所有者のステータスを強化するもので【腕力強化】【敏捷強化】【魔力強化】等。スキルを強化するものだと【属性強化】【属性耐性】等。あとは特定の魔物に対して攻撃力が劇的に上昇する【特効】系。滅多に無いレアなものだと【幸運】【身体強化】等々……他には敢えてデメリットのあるスキルをつけることでほかの効果を高めたりする、なんていう武器も在ったらしい。

 まあ、あれだよ。【創造魔法】スキルで無理やり魔剣とかを作る時、どういうスキルがあるのかわからなかったらそれも出来ないからね。どういう付与スキルがあるのか知りたかったからそれを調べたかったんだよね。でもまあ、これで何とかなりそうかな?


 ちなみに、魔力剣や魔剣を手に入れる方法は基本的に二種類。造ってもらうか拾うか。


 造ってもらう場合、造れる職業は二種類。鍛冶師か錬金術師。

 鍛冶師の場合、代々それらを造る秘伝や技法を受け継いだ鍛冶師に造ってもらう。ただ、本職は鍛冶師なので付与自体はそこまで高いものは付いてない。でも付与スキルを除いた場合の剣自体の性能は、鍛冶師の腕にも依るけど、基本的には高い。そもそも、魔力剣や魔剣を造れるだけの鍛冶師は鍛冶スキルのレベル自体が高いから、それは当然と言えば当然。

 錬金術師の場合、用意された剣に付与を施すことで普通の剣が魔剣になる。この場合だと錬金術師の錬金術系のスキルレベルが高いほど強力な付与が施せる。

 ただし後付で付与を施した魔剣の場合、その剣を作ったとして名が売れるのは大抵の場合は錬金術師のほうになる。なので、あとで付与するから剣を打ってくれと言われると、鍛冶師からは普通に嫌がられる。ちなみに黙って後から付与してもらったりした場合、それがばれるとその剣を買った剣士はそれ以降鍛冶師達に剣を打ってもらえなくなったりするそうな。とは言え説得して剣を打ってもらうのは本当に苦労するらしい……


 次は拾う場合。これはダンジョンで拾う。

 ダンジョンと言うのは、神の用意した修練場らしい。ダンジョン自体は色々なタイプがあるらしいんだけど、共通してるのが『特殊な魔物が出る』『宝箱が落ちてて、回収しても一定周期で再出現する』『稀にスキルを習得したりステータスを向上させる魔法陣がある』と言う三つ。

 ここで言う特殊な魔物というのはダンジョンにしか出ないと言うわけではなく、倒した後に死体が残らずに霧になって消えてしまう、という点で特殊。ちなみに倒した時にアイテムを落とす。ゲームかよ。

 で、魔剣を拾うというのは、このダンジョンで宝箱から手に入れる、という意味。宝箱は階層ごとに有る程度個数が決まっていて、回収した後はランダムで同じ階層のどこかに再出現するらしい。再出現の周期はダンジョンごとに異なる。

 ちなみにダンジョンが神の用意した修練場だというのは、過去に神様がそういうお告げを下したのでそういうことになってるそうな。実際、三つ目の『稀にスキルを習得したりステータスを向上させる魔法陣がある』という、この魔法陣の存在があるので否定もしづらい。

 この魔法陣でのスキル習得は、本人にそのスキル適性がなくても覚えられるため、才能がない凡人が成り上がるにはダンジョンに行くのが鉄板コースになっている。あとは宝箱からスキルスクロールという使い捨てのマジックアイテムを手に入れるとか……とはいっても強力なスキルも強力な武具も、より深い階層に潜らないと手に入らないわけだけど。


 って、また話が逸れた。


 ただし、このダンジョンで手に入る魔剣にも欠点があったりする。それは『付与されたスキルが有用とは限らない』ということ。

 例えば短剣に【重量軽減】付いていても余り有用ではない。

 【重量軽減】は使用者のみに効果がある付与で、攻撃自体には元々の重量が乗る。付与スキルのレベルが高いと、馬鹿でかいメイスを片手でぶんぶん振り回すとか言う無茶も可能になる。その為、どちらかといえば重装系の装備に付いてるほうが役立つ。両手剣とか両手斧とかロングスピアとかメイスとか。 

 他にも武器に耐性系のスキルが付いてたり、その逆に防具に攻撃系のスキルがついてたりと、時々大外れなスキルが付いてることがあるそうな。

 ちなみにそんながっかり武器で有名なものだと『聖剣 粗悪な鉄の両手剣』というものが有る。

 聖剣というのは本来それだけで相当に強力な武器なんだけど、このがっかり聖剣は、鍛えた鋼鉄ですらない普通の鉄製の両手剣で、しかも品質は最低ランク。その上神聖属性LV1以外の付与は何も付いていない、というもの。【攻撃強化】とは言わないにしても、せめて【耐久強化】が付いていればまだ使い物になるんだろうけど、この剣はそれすらない。正に宝の持ち腐れで箔付けと儀礼用以外に使い道が無いという……ちなみにどこぞの国の宝物庫に国宝として収蔵されてるそうです。切ない。


 うーん、付与は奥が深いなあ……なんてしみじみしてたら声を掛けられた。


「あれ? レン?」


「トリエラ?」


 そう言えば最近は良くここに来てるんだっけ?


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