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051 自分、凝り性ですから


 馬車作成二日目ー


 といってもやる事は昨日よりも難しくないけどね。馬車の基本構造は分かってる。後はいかに揺れないようにするか。


 以前馬車に乗せてもらった時、あの揺れは正直参った。


 街道も常に平坦という訳ではないので、いい感じにうとうとしてるところでいきなり大きく揺れて危うく舌を噛みそうになったり、頭をぶつけたり、といった事が何度もあった。


 だから私が作る馬車は限りなく揺れないものだ。

 ならばサスペンションは必須だろう。揺れないものとなると……なんて色々やってたらあっという間に夕方。あれ? まだ設計すら終わってないよ?



 結局設計が終わるまでに一週間かかった。いや、分かってた。分かってた事だよ、ははは。前世でも凝り性だったからね……仕方ない。


 ただ、設計しながらジュラルミンやチタンなどの軽量な素材を作っていたので当初の予定よりかなり軽くなりそうだった。あとでゴーレム馬のフレームの部品も取り換えておかないとだね。

 ちなみにそれらの金属の材料は地面。地下深くの地殻が材料っぽい。生成時のMP消費が多いのはどうやらその所為らしい。


 そんなこんなで設計も終わり、やっと馬車本体の製作に。

 部品を作るのが【創造魔法】頼りなのはゴーレムの時と同じだけど、今回は回復ポーションは使わないでゆっくりやる事にしたので普通に時間がかかりそうだ。

 いや、設計だけでここまで時間かかっちゃったから、別にもう急がなくてもいいかなーって思ってね?


 そんな感じで急がずにゆっくり作業を進める事、更に一週間。とうとう馬車が完成した。


 あ、一応作業の時も【ストレージ】の薬草の買取はしてもらってたよ。色々ギルドも助かるらしいし、そもそもまだまだ大量に在庫があるからね。


 閑話休題。


 で、完成した馬車は箱馬車。安全性と居住性重視。

 いや、野営の時に中で眠れたら便利じゃない? そもそも荷物全般は【ストレージ】があるしね。

 馬車は御者席の後ろからも内部に入れるようになっている。一応扉付き。御者席の後ろにはちょっとしたスペースを作ったので、そこにも人が座れたり荷物を置いたりもできる。

 箱部分の中に入る為の扉は、正面を向いた時の左手につけた。逆側にはない。それと一応後ろ部分にも荷物を収納するスペースを作って、そこも扉をつけておいた。ちなみに扉は全て鍵付き。

 居住スペースは奥側に正面を向いて座れるようにソファー。当然ポケットコイルでふっかふか。折りたたみ式なので引き伸ばしてベッドにする事も出来る。頑張れば4人くらいは眠れそうかな?

 後は壁に折りたたみ式のテーブル。飲み物を立てるためのホルスターもつけてみた。ついでに正面と右側には窓もある。

 え、車輪? 当然ゴム使ってますが何か? 中にチューブ? 当然でしょ!


 正直ちょっとやりすぎた感は否めない。でも後悔はしていない。快適な生活の為だから仕方ないのだ!


 でも調子に乗りすぎた所為か、一頭引きというのはちょっと無理がある感じの見た目になった。

 これは諦めてもう一体ゴーレム馬を作らないとダメかな。いや、完成した馬車本体の重量的には一体でいけると思うんだけどね。軽量フレーム様様だ。


 ともあれ、一先ずは一頭引きで試運転。ここからはトライアンドエラーで馬車の改造だ。

 まったく舗装されていない森の中でも全然揺れない。我ながら素晴らしい完成度だね。

 まあ、実際街道走らせてる時は御者台に座ってないといけないんだけど。

 でもゴーレム馬が若干馬力不足っぽい。やっぱり一体では無理があるみたいだし、諦めて二体目を作る事にしよう。明日から。

 という訳で次の日から早速二体目のゴーレム馬を作る事にした。


 でも前回のように急いで一日で作るつもりはない。寧ろ一体目の改造も併せて行う。

 数回の試運転で負荷がかかった部分はわかってるので、そういった箇所の強化を行うのだ。


 私が色々ゴーレムの改造をしていると、子供達が角兎を仕留めたと喜びながら報告に来た。


 角兎は角が生えた大型の兎の魔物で、一般家庭で最も手軽に食べられている肉だ。そして、冒険者にとっては討伐年齢制限に引っかからない数少ない魔物のひとつでもある。

 そもそも一般人でも気をつければ普通に倒せるのだから、討伐依頼があがる事もまずない。でも放って置くとどんどん増える。ゴブリン並の繁殖力らしい。そして畑を荒らす害獣でもある。そういった理由から、年齢制限を外してあるのだそうだ。


 13歳未満の冒険者は孤児が多い。当然食事も侭ならないだろう。一般家庭の子も兼業というか、自衛技術を身につける為に冒険者になっている場合もある。そういった子の場合は自宅の食卓を豊かにする為に狩る。


 でも、雑魚とはいっても魔物は魔物。油断すれば大人でもお腹に風穴が開く。だから慎重な子は余り積極的には狩らない。死にたくないから。


 この子達も自分の安全を優先していたので基本的に角兎は狩らなかった。

 でも最近は金銭的に余裕が出てきたので武器や防具を買い始めた。そして全員分の装備を揃えたからなのか、或いは食生活の改善で身体が動くようになったからなのか。割と兎を狩るようになってきたのだ。成長が見えてなんとなく嬉しくなる。

 でも怪我は怖い。だから褒めた上で、無理は絶対にしないように念を押しておく。『まだ行けるはもう危ない』の心構えだ。


 そんな感じで更に数日。二体目のゴーレム馬も完成して、ついに馬車が完成した。


 思ったよりも時間が掛かったけど、これでやっと買出しに行けるよー


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