050 そうだ、馬車を作ろう
朝だ朝だーよー、と言うわけで起床!
今日はリリーさんもアリサさんもいると言うことなので早い時間に食堂に行って朝ごはんを食べた。メニューは、ホットドッグ。ソース付き。早速試したらしい。
もぐもぐ。うん、全然違うね、これ。いや、合ってないわけじゃないけど、なんだろ? から、くない。ウスターソースのような……なんか違うような……うん、わからん。
なににせよ今日は静かに食べられた。というか声を掛けようとする人が居ると二人のどちらかが牽制して追い払ってると言う感じだった。
食事も終わってノルン達を連れて宿を出るとまっすぐ街の外へ。今日は子供達に顔を見せに行こう。
そう思って門のところまで来て、ひとつ思いついた。そうだ、アレを作ろう。と言うわけで街の外に出る前にちょっと色々観察。
うーん、外から見ただけだと良く分からない。何か、もっと、こう……内部構造も分かるようなスキルないかなあ。
うんうん唸りながら目に魔力を通してみたり色々やっていると、新しいスキルが生えた。【解析】。どうやら【鑑定】の上位互換らしい。また厄介なものを……でも今まさに欲しかったスキルなので早速使う。ばれなきゃいいんだよ!
覚えたてのスキルを使って知りたかった事もわかったので改めて街の外へ。
街の外にでて子供達を捜す。でも、居ない。あっちが気付いても寄ってくるだろうし、んー?
あ、そういえば森の浅いところで採取するようにするって言ってたっけ? と言うことはもう森のほうに移動してるのかな?
そう思い至って移動しようとしたところで声を掛けられた。
「レンお姉さん! 帰ってきたんですか!」
「ユイ、元気だった?」
「はい! おかげさまで!」
ユイだ。前よりもほっぺたがふっくらしてるような気がする。ちゃんと食べられてるらしい。後ろにはシンもいる。他の子供達もこっちに向って駆けてくる。
「ただいま。これからまた暫くはここにいますよ」
「暫くってことは、またどこかにいっちゃうんですか?」
「そうですね、ちょっと欲しいものがあって近くの村に行こうとは思ってますけど、直ぐにってわけじゃありませんから」
「そうですか……」
ちょっと残念そうだけど、こればっかりは仕方ない。
「これから薬草採取でしょう? 一緒に行ってもいいですか?」
「もちろんです!」
にっこり笑顔。うん、元気がいいね。私も微笑み返して直ぐに移動を始めた。
森に着くと、以前採取をしていた奥のほうで採取しようと言うことになった。やはり浅い所だと余り集められないらしい。確かにこの辺りは以前よりも人を見かけるようになったし、その分一人当たりが採れる量も減るだろうからね。
でも結局、以前の採取場所よりも更にもう少し奥まで移動することにした。私の都合で。ちょっとやりたいことがあるからね。
採取予定地に着くと、子供達は採集を開始した。私はノルンを呼ぶと、いつもよりも広範囲で警戒してもらうようお願いし、その上で専守防衛ではなく先制攻撃の許可を出した。私の都合で森の奥まで連れてきたので、子供達の安全を優先したのだ。
さて、これで憂いはない。テントを出して作業開始だ。
私が作ろうとしているもの、それは馬車だ。当然それを引く馬も作る。ゴーレムの馬だ。つまり、ゴーレム馬の引く馬車を作ると言うわけだ。
こんなものを作ろうと思ったのにはわけがある。それは私の体力。
先日、オーガロードを倒した後に街に帰ろうとして、途中でスタミナ切れでへばったのは記憶に新しい。私には体力が足りない。
そこで馬車だ。何度か馬車に乗る機会はあった。ニコルさんとロベルトさんの馬車だ。
馬車は楽だ。歩かなくても勝手に進む。でも馬を操る御者が必要。そこでゴーレム馬の出番。
簡単な命令に従うゴーレムは既に作れる。街道に沿って進む、対向車には気をつける、その位の命令はこなせるだろう。何より自分で馬を操る必要がない。御者台でうたた寝してても大丈夫だろう。その上、世話をする必要がないので維持費も修理や維持整備だけで済む。
そしてゴーレムの制御には魔力を食う。更に単一造形で関節を曲げると大量に魔力を食う。でもそれは関節機構を作れば問題ないと分かってる。つまり、関節をつければいいわけだ。
そこでさっきの門での観察につながる。
早朝の門は混む。馬車用の門は特に。そこで私はじっくりと馬を観察、いや、解析した。骨格に筋肉の付き方。ついでに馬車の基本的な構造。覚えたばかりの【解析】が大いに役立った。
と言うわけで早速製作に取り掛かる。今回作るのはゴーレムとは言っても内骨格フレームを採用した内骨格構造。後々に作る予定のオートマタの練習も兼ねてる。
制御系はゴーレムの魔石書き込み式に魔力電池としての魔石を動力源に組み込む形。
【魔力感知】と【魔力制御】があるから何とかなると思うけど、基本的に【創造魔法】でごり押し。なんとかなるさー。
私がいきなり変なことをはじめるのには慣れてしまったのか、子供達は何もいわない。ちょっと悲しいような、複雑な気分。
えーと、基本骨格フレームはチタンで、外装は木と素焼きの陶磁器でいいかな。余り重いのも困る。悪路も走破できるように馬力も欲しい。制御系のほうの魔石はオーガのやつが二個あるから、それで。魔力タンクの魔石はマッドブルのものが一つあるからそれを組み込もう。
MP回復ポーションを飲みながらひたすら作業。
なんてやってるうちにお昼。
うーん、気分が乗ってるからさっさとゴーレムの続きやりたい。何か簡単に作れそうなのは、パスタ? うん、そうしよう。
昨日作ったショートパスタのフィジリ使ってミートソースで行こう。トマトケチャップもトマトもある。挽肉も直ぐ作れる。ローリエも直ぐそこに生えてた。
鍋でお湯を沸かしつつトマトを魔法で水煮状態にしてボウルに移して潰す。セロリはすじを取って玉葱人参と一緒にみじん切りにしてフライパンで炒める。火が通ったら挽肉投入。解すように更に炒めて、色が変わってきたら塩胡椒とワイン少々。更に軽く炒める。こっちはこれで一先ず置いておく。
沸かしてた鍋に塩一つまみ。フィジリを茹でる。
フィジリの茹で汁をフライパンのソースに適量移してローリエを入れて一煮立ちさせて、味見。まあ、こんなものかな。ウスターソースとかオイスターソースがあればもう少し味に深みが出るんだけど。
それはさておき、茹で上がったフィジリに絡めて出来上がりー。
量はかなり多めに作った。子供達を呼んでさっさと食べてしまおう。もっきゅもっきゅ。子供達も無言でかき込んでる。しっかりと噛みなさい。
お昼を食べ終わったらゴーレムの続き。子供達はパスタを食べたら目がとろーんとした感じになってたけど採取に向わせた。ちょっと餌付けしすぎた?
午後もゴーレムに付きっ切り。その結果、何とかそれっぽいものは出来上がった。見た目は一見、普通の馬に見える。色々表面加工した結果だ。でも良く見れば色々違和感がある。でもまあ、多分大丈夫でしょ。
試しに動かしてみる。うん、大丈夫そう。基本命令の実行中に別の命令を出したりと、色々動作確認。軽く走らせてみても問題はなさそうだった。ゴーレム馬はこれで一先ず完成でいいかな? あとは実際に馬車を引かせてみてから?
一応ステータスを確認してみたら【オートマタ作成】【ゴーレム生成】【ゴーレム制御】のスキルレベルが少し上がってた。感覚的にはもう少し上がっててもいいような気もするんだけど、レベルが上がりづらいのはやっぱり基礎になるスキルが足りないからだと思う。何とかして錬金術スキルが欲しい……
どこかで覚えておきたいけど、どうすればいいんだろう?
そんな事を考えながらふと後ろを見ると、子供達が目を丸くしてた。まあ、驚くよねえ?
何も言わずに黙ってゴーレム馬を【ストレージ】に仕舞うと街に帰る準備をするように言った。質問は受け付けないよ。
「あの、レンお姉さん、あれは……」
「ないしょ」
ユイが色々聞きたそうにしてたけど、秘密だ。
さて、明日は馬車の製作かな?