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005 収納スキルはチートのようです


 あれから数日。現状で思いつく限りのスキル検証を行った。

 移動はしていない。転落現場からの移動の間、危険な動物や魔物に会わなかったと言うのもあり、危機感が薄れて居たと言うのもあると思う。コレに関しては反省し、後ほど一応の対策を取りはしたけれど。


 と言う事で、まずは【創造魔法】について判明した幾つかの仕様。


 第一に、使い方。

 使用する時は目の前の指定した範囲に光の円陣が現れる。この円陣は魔力で出来てるっぽい光の線で描かれてる。実にファンタジー。

 でもって、その円の中に材料を入れる、或いは何も入れないでスキルを行使する。

 そして、何でも作れる訳ではない。多分スキルレベルと、相応のMPがないとダメ。

 また、作ろうとしているものに関しての知識が有るとMPも消費が抑えられるようだ。作るものが複雑化すると消費MPが増える。

 次に、作ろうとするものの基となる材料があると、MP消費がぐっと減る。これは全身打撲を何とかしようと傷薬を作った時に気付いた。

 また、それらを作る際に必要な道具などがあれば更にMP消費が減る。これは材料をナイフで刻んで置いたら消費が減ったのと、刻まないでナイフを手元に置いて作った場合、一部の材料だけ刻んでいた場合等との比較で気付いた。現状で可能な程度での比較検証しか出来なかったけど、設備なんかが揃って居れば多分もっと消費は減ると思う。

 一度、自衛の為に剣が作れないか試したけれど、MPが足りなかった。この時の最大MPは50。それで作れないとなると先は長い。


 そして傷薬では怪我に対し効果が薄かったので、話に聞く魔法薬、俗に言う『ポーション』と言うものを作ってみた。

 これが大当たり。製造に必要な材料が傷薬とそう変わりが無いのに効果が全然違った。


 そもそも、ポーションの材料は一部聞き及んだだけで、作り方などはまったく知らなかった。だと言うのに、割と曖昧な知識でもスキルが補助をしてくれるのだろうか? 何故か作れてしまった。

 研究者であり科学者でもあった身としては非常に納得がいかないが、現状では助かるので材料や過程の製造知識については後々補完しておこうと思う。まあ、専門は鉱物とかソレを使ってのあれこれを作る方だったので薬品だとかは専門外なんだけど……


 そしてその後は色々なポーションを試してみた。回復、解毒。或いは能力強化、等々。それと、先述の魔物対策として魔物除けの薬等。

 スキルレベルが低い所為か品質のいいものは作れなかった。作れたのはどれも最下級品質ばかり。

 でも、作れば作るほどスキルが最適化されていくようで次第に消費が減っていき、回復ポーションに関しては下級品質のものが作れるようになった。

 そして、ここで以前に作った最下級のものを材料にしたらどうだろうか、と試してみたらあっさりと下級ポーションが作れてる事が判明。

 ただ、調子に乗ってさらに上位のものを、と試してみたがそちらはどうやらスキルレベル不足のようで作れなかった。残念でならない。

 だが気付くと新たに【調合】スキルを覚えていた。これも上げていけばいずれはもっと色々作れるようになるだろう。

 なにはともあれこれで街に出てからの金策も何とか目処が立った。


 ちなみに、全身の怪我はポーションの作成実験の過程で完全に治った。


 そんな感じであれこれ試していくうちに最大MPが60に増加。


 MPに関しては余り差は無いと思うかもしれないけれど、MP10と言ったらおにぎり一個分だ。これは大きい。

 ちなみに海苔巻きおにぎりを作ったら倒れそうになった。ステータスを確認してみたら消費MP30だって。ちょっと酷くない?

 馬車から持ち出した毛布を消費して、衣類も幾つか作った。多少作りすぎても【ストレージ】に無制限に仕舞えるので移動に問題は無い。邪魔になれば街に出たときに売ってもいい。


 【創造魔法】は便利すぎた。燃費は悪いし現状では使い勝手もそこまでよくは無いが、そこは運用方法でなんとか出来る部分も沢山ある。


 次に、【鑑定】もレベルが上がっていた。今のレベルは4。

 【鑑定】はレベルが上がり辛いって聞いた事があったんだけど、あれは一体なんだったのか。そう思うくらいにがんがんスキルレベルが上がっていく。

 理由はよくわからないけど、多分種族特性じゃないか、とは思っている。天人族は優秀らしいし。

 そして生活魔法で水を作り続けていたら水の属性魔法を覚えた。魔法の自力習得が難しいとはなんだったのか。

 とは言え便利である事に変わりはないので、色々試してみたらお湯も出せた。これで一層生活に困らない。


 魔法便利すぎ! ……ファンタジーの魔法って、攻撃とかそういう……いや、便利だからいいんだけど。


 ちなみにポーションを作る時、ちゃんと指定しないと液体だけで出てくる。

 これに関しては容器を作って対応した。最初はガラス製にしようとしたけれど消費が多すぎて数が作れなかったので、地面の土を素材に素焼きの瓶を作ってはその中に作っていった。そして途中で最初から容器入りで指定して作ればいいと気づいてちょっとへこんだ。


 ちなみに、土を素材に容器を作っていた為か、気付くと土魔法も覚えていた。


 次に身を守る為の準備をする事にした。

 まずは武器。というか防具とか持ってないから武器の強化しかする事がないんだけど。

 ポーションの上位品質への変換で気付いたけど、ナイフとかの品質を高める変換も出来るんじゃないかと思ったのだ。

 ちなみにこれも当たりだった。【鑑定】で調べたら一目瞭然。低品質の鉄のナイフが高品質の鋼のナイフに変わった。ただしMPを50も消費してしまい、その日は疲労で他の事は何も出来なくなってしまった。

 このサイズのナイフの炭素配分の変更だけでこの消費って……剣とかの強化はもっと掛かるし、そもそもゼロから作るとなったらどれだけMP要求されるんだ……? 色々と先は長いようだ。


 なにはともあれ、自衛の準備は出来たので次の行動に移ろう。


 まずは水場への移動。


 私が考えたのはこの森への定住だ。考えを改めたのだ。

 なぜ定住を考えたのか。理由は幾つかあるが、まず【創造魔法】スキルだ。

 これによって身の安全はかなり改善された。食事にも困らない。衣食住のうち、二つが満たせるのだ。水魔法の習得で設備さえ整えばお風呂にも入れる。

 次に、このまま直ぐに街に出た場合起こりうる状況。それは出資者の商人に見つかって連れ戻される事だ。

 現在、事故から二週間程が経過している。子供の足でこの森林を抜けるのはほぼ不可能だけど、実際に抜けてきたなら保護されるのは間違いない。保護されてしまうと身元も調べられて、商人の下に送られる可能性は高い。

 なら、直ぐにここから出なければいい。幸いに住環境を整える能力は手に入れた。

 どう言う事か? 簡単だ。その辺りに生えてる木を木材に変換できた。なら次はこれで掘っ立て小屋を作ればいい。そしてスキルを使って時間をかけて少しずつマシな家に改築していくのだ。【創造魔法】マジチート! 【創造魔法】万歳! ただし消費は据え置き。


 ……時間をかければいいんだよ。ぐすん。


 新たな目標を定め、水場を目指して東の方角へ歩く。


 周囲を警戒しながら進む。視界に入った自生する薬草や野草の類が消える。不思議現象? 違う。私の仕業だ。

 全て【ストレージ】に収納されている。


 最初、私は移動しながら目に付いた薬草等を一々採集しては【ストレージ】に収めてた。でもこれでは移動が侭ならない。

 やがて面倒になった私はなんとなく、地面に生えている薬草を眺めながら、これをそのまま【ストレージ】に収められたらなあ、と考えた。するとどうだろう。薬草は目の前から消えた。慌てた私は【ストレージ】の中を確認、そこに薬草はあった。呆然としてしまった。

 今までの苦労って……いや、前向きに考えよう。余計な手間が減ったと。


 次に私がしたことは、余り意識しないで【鑑定】を使う事だった。

 視界に入ったものをほぼ全て鑑定、それを変に意識しすぎない事。そして、発見した薬草等を全て【ストレージ】に収納する。これらは直ぐにできるようになった。


 前世において技術者で科学者で研究者だった時、思考分割による並列思考やマルチタスクなんて仲間内では基本スキルだった。私もこの程度の事は簡単に出来る。脳に負担が掛かる? そこは使い方次第と言う事で。

 ちなみにこの思考分割等で脳に負担の掛からない使い方は仲間内の一人の変態的なマッドサイエンティストが使っていて、便利だからと皆に教えて回ってたものだったりする。


 話が逸れた。問題は街中に出た時にうっかり周囲のものを収納しまくらないように気をつける事だろう。意識しておかないといけない。

 使える能力は使うべき。それで楽になるなら尚の事。うん、便利便利。



 その日の夜、ステータスを確認したら【鑑定】のレベルが5になっていた。



 ……うん、使いっぱなしだもんね。そうなるよね。


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