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039 ひゃあ、我慢できねえ!買占めだ!


 宿に泊まって翌日から早速行動開始。とは言ってもまずは聞き込みから。

 あ、ノルン達は村の外に居るよ。流石に泊まれる所が無かった。


「あの、すみません。このお味噌汁なんですけど」


「あん? アンタ味噌汁知ってるのかい?」


「ええ、まあ。それで、これの出汁をとるのに使ってる昆布が欲しいんですが」


「おいおい、そんなことまで知ってるのか」


 詳しく話を聞いてみると、なんでもお出汁やそういったものを使うレシピは村外不出だとか。でも知っている人に聞かれたら売ってもいい、らしい。

 これは転生者がどうの、と言う訳ではなく、単純に村の郷土料理として人を呼ぶために制限してるそうだ。

 ご当地グルメ? いや、分からなくは無いけど……

 ともあれ、干した昆布や鰹節も売ってもらえることになった。後で市場のほうに話を通してもらえるらしい。ありがたい。


 うーん、お礼代わりにそれらを使ったレシピでも教えようかな? 何が良いかな? 鍋? でも余り難しいのとかは問題が起きそうな……そういえばさっきのお味噌汁に豆腐が入ってた。なら、湯豆腐?


「あの」


「うん? どうした?」


「いえ、お礼と言うわけではないんですが」


 湯豆腐のレシピは存在しなかったようで、非常に喜ばれた。まあ、昆布で出汁取った後に豆腐茹でるだけと言えばそれだけだけどね。一応豆腐をつけて食べるためのつけ汁として鰹出汁で醤油を割って出汁醤油とか、ポン酢もどきの作り方は教えておく事にした。



 その後、早速教えてもらった市場へ移動。

 商人さんはそこで買い付けするらしいけど、そもそも日持ちしないので水魔法が使えなかったり氷系の魔道具を持ってない商人はあまり買わないらしい。私には関係ないけどね。

 ただ、そういった理由で余り獲って来ても仕方がないので、水揚げ量は少ないらしく、基本的に村内消費のみ。当然と言えば当然か。

 周囲を見回すと水を張った桶やタライを並べて何人かの漁師さんがあちこちに座り込んでる。

 覗き込んでみれば色んな種類の魚がぴちぴち。カレイ、鯛、鯖っぽいのも居る。取り敢えず全部買おう。


「すみません、これ全部ください」


「は? 全部!?」


「はい、全部」


「いや、買うって言うなら売るけど、いいのか? 悪くなっちまうぞ?」


「大丈夫です。ですので、全部ください」


「お、おう」


 そのまま隣に移動してそこでも買い占め、更に隣へ。

 うーん、カツオとかマグロは無いのかな。お刺身食べたい。カツオのたたきもいいなあ。

 ちなみに山葵は結構な量を持ってたりする。森にいた時に川の上流のほうに群生してたんだよね。

 そのまま更に隣へ移動……しようとしたところで後ろから声を掛けられた。


「おい、あんた。そんなに買い込んでもまだ買うのか?」


「え? はい、もっと沢山欲しいです」


「なら、誰かに沢山獲るように言ったほうがいい。それなら手間も減るだろ」


 なんでも、全部買取する前提で依頼すればがんがん獲ってくれるそうだ。助かるね。買うよ。超買うよ。

 と言うわけで全部買い取ると言うことで漁師さんに交渉せねば! えーと?


 じゃあ誰かに……と顔を上げると漁師さん達が集まってきて自分が自分が、と立候補。いや、流石にそこまで沢山はいらないよ。


「えっと、じゃあ、態々教えてくださった親切な貴方にお願いしたいんですが」


 こういうときは筋を通すのが無難だよね、と言うことで親切に教えてくれたこの人にお願いすることにした。最初は渋ってたけど、先払いで小金貨一枚渡したら飛んでいった。

 まあ、こんなフード被って顔隠してる怪しい奴の依頼、保障も無しには、ねぇ?


 そして次は昆布と鰹節を買うことに。宿屋から話は行ってたようで問題なく買うことができた。でも折角なので大量に買い込むことにした。

 次にいつここに来れるか分からないからね。だからこれは当然の行為。決して略奪ではない。商人さんの顔がちょっと引き攣ってたけど気にしない。



 その後は、海辺でボーっとしてた。いや、何もしてないわけではないよ? 【創造魔法】を使って、ひたすらに塩を作ってました。とにかく沢山。ついでにニガリもゲット。大豆は普通に売ってるから、これで豆腐も自作できるよ? 自給自足はいいものだ。


 お昼も済ませて午後も同じところでボーっとしてたら流石に怪しまれたので、途中で村のはずれの方まで海岸沿いに探索することにした。


 そっちの方は岩場になっていて、転んだら怪我しそう。危ないなー

 でもよく調べてみると岩海苔が群生していたので根こそぎ回収した。一応、絶滅させるようなことはしてないよ?

 でもこれで板海苔が作れる! おにぎりに海苔が巻ける! あ、巻き寿司とか、海苔巻きもいいよね……ここなら、海鮮巻きとか? じゅるり。



 そしてふと思い立って色々作れないか試してみた。ここにしかない素材は沢山ある。

 それに、いざという時の為に色々と備えがあったほうが良いからね?



 夕方に頼んでおいた魚を引き取ったあとは宿に帰って海鮮物に舌鼓。まさか刺身が食べられるとは! それに蟹とか海老とかも獲れるんだね、ここ。やばいね。早速明日獲ってきてもらえるように頼もう。


 次の日も昨日の漁師の人に魚を頼み、他にも市場で色々仕入れていると貝類も発見。たまに素潜りで獲ってくるらしい。これは是非買い込まねば! と言うわけでこれも全部買い取るからとにかく沢山獲ってきて欲しいと依頼。すると、村中の女子供が姿を消した。

 ……みんなこぞって獲りに行ったらしい。


 あれ? 全部買い取れるかな?


 ちょっと不安になったのでギルドに薬草を売却にいったら、なぜか職員に大喜びされた。

 やはりと言うか何と言うか、ここは田舎の村なのでそういう薬草の供給量が全然足りてなかったらしい。でも一日に買い取れる金額の限界ギリギリだったそうで、微妙に涙目だった。


 ちなみに海老や貝類の買い取りは余裕でした。


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