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034 厄介ごとが追いかけてきました


 子供達にじゃが芋を食べさせてから二週間ほど経過。その間にリリーさんにポテトサラダを食べさせたら泣かれたり、月の物で寝込んだり、ニコルさんのところにお米を買いに行ったり、ユイとシンに名前で呼ばれるようになったりした。


 南の森の制限はまだ解除されていない。でも薬草採取はもうこのまま川の上流の森でいいんじゃないかな?

 でも最近は他の冒険者もちらほら見かけるようになったんだよね……子供達の稼ぎが増えて元気になった所為だろうか? ギルド職員にも私が子供達の引率をしてると思われ始めてるようで、ちょっと困る。

 これで子供達が問題を起こした場合、私に責任追求されても困るかなあ……なにか考えておかないとダメかもしれない。


 と、そんなことを考えながら今はギルドの買取窓口で順番待ち。私の前後には子供達が並んで守ってくれてます。え? なんで今日は並んでるのかって? いや、今日はちょっと帰るのが遅くなってね……やっぱりもっと早く切り上げるべきだったね。魚が獲れすぎたのがいけないんだよ。うん。



 はあ……早く帰りたいなあ。なんて考えつつ周りの話し声を聞きながらぼーっとしてると、色々と有益になりそうな情報がちらほら。

 あー、やっぱりこういう情報が欲しいならギルドに残って色々聞いたりしたほうが良いんだろうなあ。でも、面倒事の回避と天秤に載せると、やっぱりそういうのはやりたくない。今だってこちらを窺う視線が多い。気のせいじゃない。凄い見られてる。




「お、どうした! 久しぶりじゃねえか! 最近見なかったがなにしてたんだ?」


「ギリアムさん、久しぶりです。いや、護衛の仕事でちょっと遠出してたんで」


「護衛? にしちゃ長くないか?」


「あー、領都まで行って、その後、南の海の村に塩の買い付けに行って、そこから戻ってきたんですよ」


「はは、なるほどな。そりゃ長くなるわけだ」


 ……南の海の村。海の魚が欲しい。塩も手に入る……いいこと聞いた。


「ええ、実入りもいいんですけど、流石に馬車移動が長すぎて、疲れました」


「ちょっと、何言ってるのよ! アンタがこの仕事やりたいってごねたから受けることにしたんでしょうが! わたしもテスもベックも嫌がったのに!」


「あ、いや、確かにそうだけど」


「なら今更ぐちぐち言わないでよ! 男らしくない! 大体あの時だって……」


「わかった、わかったから」


「おまえら、相変わらずだなあ」


 うーん、尻に敷かれてるっぽい。大変そうだなあ。


「あ、って事はお前等まだ知らないのか」


「え? 何かあったんですか?」


「ああ、すげえ新人が出てきたんだ」


「凄い新人?」


「おう。薬草採取だけで毎日小金貨を何枚も稼いでる」


「はあ!? 薬草だけで? 毎日!?」


「おうよ。しかもえらい美人らしい」


「は~……じゃあみんな勧誘とかしてるんじゃないですか?」


「いや、それが誰も声を掛けてない」


「え? なんで?」


「それがな、その新人、テイマーなんだよ。狼を二匹連れてるんだが、それがどうやらグレーターウルフらしくてな。でかいんだよ。お陰でみんなビビッて遠巻きにみてるだけだ」


「でかい狼……?」


「ああ。今、南の森が封鎖されてるってのは聞いたか?」


「あ、はい。オーガが出たとかで」


「そのオーガな、倒したのはその新人の連れてる狼らしい」


 おいギルド、情報規制とか無いのか。個人情報保護!


「オーガを……あれ? でもさっき、薬草採取だけで稼いでるって」


「ああ、討伐はやらないんだ、その新人。正しくはやれないんだそうだ」


「え? なんで?」


「そいつ、まだ11歳らしい」


「はあ!?」


「ついでにいつも混む時間避けてるらしくてな。この混雑してる時間帯だと、もう……あれ? なんだ、珍しいこともあるもんだな。ほら、丁度あそこに居るぞ」


「……アレですか? 小さい?」


 アレとか言うな。あと、小さくないから。

 そうこうしていると私の買取も終了。もうなんか疲れたから早く帰ろう……と歩いてたら目の前に人影。向かい合ってる状態でどこうともしない。この人なんなの? 顔をあげると……アレ? なんだか見覚えのある……


「あ、アンタ……森の、魔、じゃなくって」


 ……えっと、確か、ニール? アイエエエエ! ニール!? ニールナンデ!?

 口をパクパク。言葉が出ない。え? なんでここに居るの? あれ? 冒険者? え? え? どういうこと?


「アンタ……あの後、春になったら急に居なくなったって聞いて……心配してたんだ。でもなんでここに?」


「えっと……」


「なんだ、お前等知り合いだったのか?」


「あ、はい。前に」


「違います」


「「……え?」」


「違います。別に知り合いじゃありません」


「何言ってるんだ!? アンタとは……」


「貴方とは以前少し話をしただけで、別に交流があったわけではありませんし、友人と言うわけでもありません。そもそも同じ村で暮していたという訳でもないです。たまたま、あの時少し係わり合いになっただけです。知り合いですらないと思います。強いて言うなら、少し顔を知っている程度? 顔見知り、辺りが妥当ではないかと思います」


「オ、オウ」


 やはり私の顔を忘れてなかったか。余りの事態に一瞬思考が止まってしまった。私の分割思考も全て同時に停止させるとは中々やってくれる。

 なにはともあれ現状の打破が最優先。周囲には人が沢山居る。こんな場所で声高らかに知り合い等と叫ばれては変な既成事実が生まれてしまうかもしれない。

 故に否定。断固否定。


「それでは急ぎますので、失礼します」


「ちょ、待ってくれ! まだ話したいことが」


 ノルンさんの威嚇! さすが私の女神。


「……私は別に何も話すことはありません。それでは」


 離脱! 急いで離脱! もおおおお! なんでこうなるのおおお!?


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