032 川に着いたら魚を捕るしかないじゃない!
ギルドマスターからのお説教、じゃない、お小言の後、魔物素材の売却のために倉庫に移動。
面倒だから食べられる肉類をある程度残してあとは全部売っちゃおう。ああ、でも毛皮は幾つか残しておこうかな。ちなみにオーガ肉は食べられないらしい。
と言うわけでどどーんと出した。皆さん目を丸くしてますね。どれもこれもノルンっていう私の女神の所為なんだ。ノルンさんマジ女神。もう本当に大好き。だから苦情は受け付けない。
「よくもここまでの量を……それに、どれも傷んでない……?」
あ、そこ、気付きますよね。でも明後日の方向を見て知らん振り。それを見て察してくれたのかその後は何も言われなかった。
売却益、金貨20枚也。
うん、なんだか酷いことになってしまったね。ギルドマスターが何故だか凄い喜んでた。良く分かりませんが、おめでとうございます? ちなみにオーガの魔石は売らなかった。色々使えそうだし。
と言うわけで魔物素材の売却も終わったのでお仕事に行かないと。色々と有ったけど、今はまだ朝早い時間ですよ。
南の森はもう立ち入り禁止になってしまってる。ギルマス仕事速いね。と言うわけでどこか別の場所探さないとダメかー。
掲示板は既に人だかり。あの中に突っ込む気力は無い。
面倒だから取り敢えず外に出ようかな、と考えてたらサレナさんが近づいてきてこっそり教えてくれた。北東の川の水辺や川底には珍しい薬草が生えてるらしい。うどんのお礼だって。餌付けはしてみるものだね。このまま好感度を上げていけば、やがては……!
お礼を言ってギルドから出るとそのまま街の外へ。
街の外に出たら人探し。
いや、このまま川を目指しても良いんだけど、一応。
きょろきょろあたりを見回してると数人の子供が近づいてきた。シンとユイとその仲間達。
別に声もかけないし挨拶もしない。仲間ってわけじゃないし。えーと、男子5人に女子3人で、全部で8人?
周囲に集まったのを確認するとひとつ頷いて出発。川を目指す。
「……なあ、森じゃないのか?」
「どこ行くんだろう?」
「シン、聞いてみろよ」
なんだかこそこそと話ししてるけど、別に嫌なら帰っていいよ。今日行くところは私も初めてだしね。
歩みを進めてるとシンが話しかけてきた。
「あの、今日はどこに行くんですか?」
「川です」
「川? 森じゃないんですか?」
「南の森は立ち入り禁止になってます」
「立ち入り禁止?」
「オーガが出たそうです」
「オーガ!?」
子供達が騒ぎ出した。そんなに怖がらなくてもこれから行くところはオーガが出た森じゃないよ、川だよ。
喧騒を無視して歩き続ける。
1時間ほど歩くと川に着いた。見回すとそこそこに人が居るみたい。水辺で薬草が採れるんだっけ? 下流のほうは平野、上流は森が見える。うん、森だね。
更に30分移動。森に到着。森には着いたけど採集は川辺で行う予定。そのまま川沿いに森に入っていく。
んー、川沿いだともっと採取されて何もないかと思ってたけど、割と普通に生えてるね。もうここで良いかな。
と言うわけで水辺に生えてる薬草をちまちま採取する。ついでに目を凝らして川底を見つめる。うん、確かに珍しい薬草が生えてる。でも濡れるから入りたくない。ここは【ストレージ】の出番。はい、回収完了。
1時間ほど採取を続けていたけど、飽きてきた。別のことがしたい。
んー。川、川だよ? 川と言えば、魚? そうだ、魚だ! と言うわけで魚を捕る事にした。
ざっと【探知】で調べるとイワナっぽいのがうようよ居る。ということはここはかなり水が綺麗なのかな? 或いは結構上流だったりする? もっと下流に行けばニジマスとかも捕れるだろうか。下流……海? 海魚も食べたい。
っと、いかんいかん、まずは目の前に集中だ。
イワナ。どうやって捕ろうか。釣り? 釣具が無い。
がちん漁は色々拙そう。子供達に知られるのも拙そう。
簗? これが楽そう? 竹が欲しいけど、ないので【ストレージ】内の木材を加工して籠状に加工。編んで作るものだからか、消費も少なかった。
次は川を堰き止めるか、狭めるか、なんだけど……ここは土魔法でどーんと行こう。
狭めた先にさっき作った籠を設置。うん、水はちゃんと抜けていく。後は魚を追い込むだけだ。
唐突に意味不明なことをやりだした私に困惑する子供達。気にしないで採集してていいよ。
うーん、魚を追い込む……やっぱり服脱がないとダメか。仕方ない。
マントを脱いで、編み上げのブーツを脱ぐ。今日の服装、幸いにも下はキュロットだ。但しガー���ー&ストッキング着用なのでブーツとストッキングを脱がないといけない。ぬぎぬぎ。
なまあしー。水、結構冷たいね。
川に入ってばしゃばしゃとやりだすと子供達の困惑が加速した。あと、赤くなって目を逸らす男子急増。
そんなことをしてるとユイが声をかけてきた。
「あの! なにしてるんですか!」
「気にしないでいいから、採取してなさい」
とは言ったものの、矢張り気になるらしい。でも相手にしません。
暫くばしゃばしゃやった後に籠を確認すると、えーと、16匹位? ぴちぴちしてました。取り敢えず今日はこのくらいで良いかな。
籠を外して土魔法で作った堰を消す。
川から上がったら【乾燥】を使って、足と若干濡れた服を乾かしてストッキングと靴とマントを着付け直した。
テントを出して昨夜作ったコンロもどきと他の調理器具も出して準備完了。コンロもどきは暇を見ては改造予定。目指せ大火力。そう言えばこのコンロもどき造った所為か、【魔道具作成】のスキルを覚えてた。もうあれこれ増えすぎ。ドレもこれも鍛えたいけど、鍛えるのにも時間が足りない。
それはさておき。
んー、イワナの料理、何が良いかな。塩焼き、いいね。バターでホイル焼き、いいね。フライもいいなあ。あー、燻製にしてもいいかもしれない。よし、全部やろう。
塩は先日買い込んである。ぬめりを取ってエラや内臓等の処理。後は順番に作っていく。
塩焼き。化粧塩もちゃんとつけますよ。
バターでホイル焼き。バターは先日少量手に入れた。ホイルは自作。MP消耗多いけど、仕方ないね。
フライ。作っておいて良かった椿油。
スモークして燻製したものはあとで葉野菜とサラダにしてもいい。
出来上がったものは【ストレージ】に仕舞っていく。取り敢えず全部四匹ずつ使って終了。
気付けば昼を過ぎていた。うーん、出来立てを今食べても良いんだけど……子供達の視線が痛い。分ける程の量は取れなかったし、流石に自重。
【ストレージ】に仕舞ってあったパンやオーク肉でささっと食事を終わらせると、今日はもう帰ることにした。今回付いてきた子供達はシンが言いつけていたのか特に不満の声は上がらなかった。
うん、私の心の平穏は守られたね。
あ、相変わらずノルンさんは女神でした。オーク数体とゴブリンが荷物に追加されました。
街に戻ってギルドで精算。川底の薬草は稀少らしく、高値で売れた。それだけで売却益小金貨5枚也。プラスで在庫も売って、合計で小金貨10枚の収入。
宿に戻るとリリーさんがいたので少しお話。今日は川に行って魚を取ってきたと言ったら驚いてた。ついでにそれで料理を作って持ってきたので後で一緒に食べようとお誘いしたら大喜びだった。そしてそれを盗み聞いていたコックさんが顔を真っ赤にしてた。
今日は大分早く帰って来たから晩御飯の時間までまだ結構時間が余ってるなあ。そういえば買いこんだ布で服作らないと。と言うわけでその後は暫く服作りに精を出した。中身おっさんの癖に随分女の子らしくなったものだ、うむ。
ついでにマントも新調。今までは実用性重視のまさに皮のマント! って感じだったけど、撥水加工した布のマントを作って裾とかの部分に刺繍を入れてみた。いや、なめし皮でマントって普通に結構重いの……おまけで目立たないようにと願いを込めて【隠身】の効果を付与。【技能付与】を使うと覚えてるスキルを付けられるらしい。但し、付与のレベルまでが上限なので今付けられる効果はLV2までだけど。
その後お風呂に入って晩ご飯。
色々作ったけど出したのはホイル焼き。バターの香りが暴力的。
他のお客さんが厨房に怒鳴り込んでるけど別に私は悪くない。何人かは私に話しかけようとしてたけど華麗にスルー。
あ、リリーさんは今日も見事なトロ顔でした。可愛い。