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026 伊達にして帰すのが手加減と言うものです


 あっという間にギルドに到着。夕方にはまだ早い時間帯なので素材買い取り窓口は全然空いてる。問題はどの程度の量を買い取ってもらうか、だけど……壁に薬草の買取価格一覧表なんてものがあったのでそれを見ながら出すものを決める事にする。


 ちなみに、この世界の共用語は日本語だ。文字も同じく。

 転生者、こんな難度の高い言語普及させるとか……でもお陰で助かってるのは事実。元々の私は文字が読めなかった。それが前世の記憶を取り戻した事で貴族並、或いはそれ以上の言語知識を得たのだ。これって棚から牡丹餅?


 閑話休題。


 ざっと見た感じだと、単純に計算しても今日集めたものを全部売るとかなりの、というか色々と問題がありそうな金額になるっぽい。なので多少自重する事にして、大体小金貨5枚分になる位の量を売却する事にした。

 窓口に行き、鞄から次々に薬草の束を取り出していくと、だんだんと職員と周りに居た冒険者達の顔色が変わっていく。


「ちょ、ちょっとまってくれ。嬢ちゃん、まさかとは思うがまだあるのか?」


「えっと、これで大体半分くらいです」


「これで、半分」


 嘘だ。これだけ出しても実はまだ全体の100分の1も出してない。と言うか他にもまだまだハーブとかもある。そっちは売らないけど。


「何か問題でも?」


「いや、無い。無いんだが……」


 問題ないなら良いじゃない。という訳で残りもどんどん出していく。

 目立つのは控えてたんじゃないかって? それで宿を追い出されたら元も子もない。ついでに言えば生活雑貨も色々欲しい。投擲攻撃用にスローイングダガーも沢山欲しい。石だけだといざという時不安だし、備えはしておいた方がいいと思う。

 あと、色々な食材。小麦粉があれば色々作れる。麺類だって作れる。おうどん食べたい。そば粉があればおそばもガレットも作れる。夢が広がる!


 なんて妄想してたらちょっと出しすぎた。総額にして小金貨10枚相当、金貨で1枚分也。


 周りの人達の顔色が青くなってるけど、気付かなかった事にします。


「嬢ちゃん、群生地でも見つけたのか?」


「秘密です」


 根こそぎ刈り取りました、とは言えない。


 ちょっと早いけど今日はもう宿に帰る事にしよう。

 変なのに絡まれる前にギルドから退散。数人後をつけてくる気配を【探知】したけど【隠身】を使って撒いて、無事宿に到着。

 今朝、追加で料金を払った時に受け取った木札を提示して連泊客であることを確認してもらい、昨日と同じ部屋へ。


 うーん、昨日はご飯の後だったからお風呂は割と混んでたよね。シャンプーとかを使うとまた目立ちそうだし、今日は先にお風呂に入ろう。


 という訳でお風呂へゴー!


 昨日脱衣所で気付いたけど、他の女性客はほとんどドロワーズだった。

 一部、レギンスのような、スパッツのような……上は布巻いたりとか、シャツとか、キャミソールっぽいヤツとか。冒険者風の人だとスポーツブラっぽい密着したタイプのもあったけど、うーん……エロスが足りない。

 何が言いたいのかと言うと、私が身につけてるようなデザインのものは目立つと言うこと。他に身につけてる人が居ないし。そもそもガーターベルトとか存在するのだろうか?

 いや、ここは高級とはいえ平民が泊まる宿だ。貴族なら、貴族ならきっと何とかしてくれる!


 などと、どうでもいいことを考えながら今日はゆっくりとお風呂を満喫した。


 部屋で【創造魔法】の修練をして時間を潰した後、夕食の頃合いになったので食堂へ移動。当然マントにフード着用。実に怪しい。今日の献立はなんだろー?

 ……今日の献立はパン、腸詰め、葉野菜の生サラダ、スープ。昨日と同じじゃねーか! 手抜きか! いや、スープはちゃんと別の具材だけどね。

 いや、美味しそうだよ? でもね、ちょっとひねりが欲しいと言うか……目の前に並んだ食事を見ながら少し考えると、ちょっと思いついた。

 給仕の女の子を呼んでナイフを持ってきてもらう。


「あの、何に使うんですか?」


 うん、ちょっとね。パンに縦に切れ込みを入れて、軽く開いて癖をつけて、そこに葉野菜のサラダを。更にそこに腸詰めを挟んで出来上がり。簡単ホットドッグもどき。ケチャップとマスタードが欲しい。無いけど。

 その様子を見ていた給仕の女の子が目を丸くしてた。しばらくすると再起動して厨房のほうへ駆けていった。

 なにか驚くようなことがあっただろうか? まあいいや。

 気を取り直して早速食べることに。もきゅもきゅ。うん、食べやすい。時折スープも飲んであっという間に完食。ごちそうさまでした。

 途中で厨房から出てきたコックっぽい人がじーっとこっちを見てた。いや、本当になんなの?


 さ��、今日も早いけどもう寝よう。でもその前に確認。

 壁をこんこん。うーん、ちょっと薄い? ん? 何をしてるのかって? 日課ですよ、日課。その為の確認。でもこの宿、ちょっと壁薄いっぽい。


 ……仕方ない、我慢しよう。ううう。



 朝ー! 今日はちゃんと起きられた。正確にはわからないけど。そのうち時計でも作ろうかな?

 そんなことを考えながら身支度を済ませて食堂に。

 ごはーんごはーん、あさごはん! ……そこにあったのはホットドッグでした。


 どういうことなの……?


 いや、食べやすさを考えれば朝食には良いと思うよ。でもね、昨日食べたばっかり……いや、何も言うまい。晩ご飯に期待しつつ今日もギルドへ。


 一気に懐は暖かくなったけど、新人が二日目から仕事を休むのは気が引けたので明日も森へ採集に行くつもり。

 宿生活っていうのも長い目で見た場合、出費が大きい。場合によっては家を借りるのも視野に入れておかないと。

 え? 家自体はある? いや、土地だけ借りても次の日にいきなり家が建ってたら目立つからね。そこはまあ、追々?

 とまあ、何にしても先立つものが無いと何もできない。だから今日もお仕事に精を出さないとね。


 でもやることは薬草採取ですよー


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