012 ノルンさん、事件です
わんこの居る生活! でも私は猫派! あとわんこじゃなくて実際は狼。いいよね、寂しくない生活って。
それはさておき、そろそろ10月も半ばを過ぎて冬が近くなってきた頃合。と言うか普通に寒い。もう既に畑も厳しい時期なので、早目に全部収穫して休耕中だったりする。
ついでに狩りに行く頻度を増やして冬支度の真っ最中。肉を確保するのだ! まあ、最悪の場合でも【創造魔法】で何とかなるんだけどね。
え? 口調が戻ってる? あー、うん。もう飽きた。
そうそう、先日オークの集団に遭遇したんだよね、10匹位のオークの群れ。え? 死ぬ思いをしたんじゃないかって? いや、超余裕だったよ?
【探知】で遭遇回避? いえいえ、先日仲良くなった狼のお母さんの方、ノルンがちょっとね? 彼女が遠くにオークが居るのを教えてくれたんだよね。お陰で遠距離から狙撃余裕でした。
そのお陰で豚肉って言うかオーク肉を大量に確保出来てホクホク。知ってる? オークの肉って普通に食用肉として出回ってるんだよ。味はそのまま豚肉。とは言ってもどっちかと言うと割と高級品で、孤児の口になんて中々入らなかったんだけどね。え? そうじゃない?
ああ、はいはい。ノルンね。余りにも賢くて私もちょっと不思議に思ったので、オークの群れを全滅させた後に【鑑定】してみたよ。
【名前】ノルン
【種族】フェンリル
【職業】魔獣
【称号】レンの友人
【年齢】50歳
HP 450/450
MP 80/80
STR 18
VIT 15
DEX 15
AGI 30
INT 15
MGC 15
CHA 15
LUK 10
【スキル】
魔法:水 LV3
魔法:風 LV3
魔法:氷 LV3
魔法:雷 LV3
警戒 LV7
探知 LV7
隠身 LV7
魔法属性適性:水・風・氷・雷
おいおい、フェンリルって……伝承とかで出てくるレベルの超レアな魔獣です、本当にありがとうございました。
いやはや、道理で普通の狼よりも妙に体格が大きい筈だよね……実は初めて会った時には既に2m位あったし?
でも伝承に出てくるフェンリルって人の言葉も話した筈なんだけど、ノルンは大分若い個体のようでまだしゃべれないみたい。でもこっちの話す言葉は明らかに理解してるので、その内お話とかも出来る様になるかなーって期待してたりする。
ちなみにこのフェンリル、成長していくと最終的には魔獣じゃなくて神獣になるらしい。とは言え何百年とか千年とかべらぼうに長い時間が掛かるとも言われてるので、私が生きてる内にノルンがそうなる事はまず無いと思う。残念。
所で、私よりもスキルレベル高いんだよね、ノルンって。でも怪我してたんだよね……なんとなく不意を突かれたか何かであの怪我したんだろうな、とか思うんだけど、でもそれってLV7の【警戒】を潜り抜けてフェンリルにダメージを与えてくるヤバい奴がこの森に居るって事なんだよ……
もうなんと言うか、実はここもそんなに安全じゃないのかなぁ……移動も視野に入れるべきなのかもしれない。むーん。
あ、おまけでベルのステータスも。
【名前】ベル
【種族】フェンリル
【職業】魔獣
【称号】ノルンの娘
【年齢】1歳
HP 20/20
MP 5/5
STR 5
VIT 5
DEX 5
AGI 15
INT 8
MGC 8
CHA 8
LUK 5
【スキル】
警戒 LV1
探知 LV1
隠身 LV1
魔法属性適性:水・風・氷・雷
まあ、子供だしね……でもそれでも一部のステータス、私よりも高くない? STRとか。べ、別に悔しくなんてないんだからねっ! だからもふもふさせろー! とまあ、そんな感じで気侭に過ごしつつ、今日も狩りに出た帰りだったりする。
「ノルンのお陰で大漁だったね」
本日も快晴、絶好の狩猟日和。最近は天気の悪い日も多かったから、頑張って狩りにいそしんだ。そんな今日の成果がこちら、大型の鳥を2羽とはぐれオーク2匹。素晴らしい。
ちなみにノルン達は思った程食事を摂らない。フェンリルだし大きいし、もっと大量に食べるものかと思ってたんだけど。
あと、意外にも調理した肉とかを普通に食べる。とは言っても基本的にノルン達は自力で調達して勝手にご飯を済ませてたりする。
「今晩は何にしよう? オークが獲れたし、生姜焼き? 鳥の方で照り焼きもいいかなぁ……んー、醤油も残り少ないし、そろそろ調味料も追加で作っておかないと駄目かな」
うーん、地味にやる事が多い気がする。ちなみにオークの脂身から大量のラードが取れるので、炒め物も余裕だったりする。でも揚げ物はパン粉が無いから現状では無理。
そして色々試してわかった事が一つ。どうやら私、オークのラードは余り身体に合わないみたい。食べ過ぎるとお腹に来るんだよね……揚げ物とか、多分一発KOされると思う。
そんな訳で油が取れそうな植物も探してはいるんだけど、今の所はまだ見つかってない。悩ましい……
とまあ、そんな風に食べ物の事ばかり考えている私の独り言を聞いて、ベルが足元でわふわふと啼いている。平和だなあ。
あ、ちなみにこの世界、醤油とか味噌とか普通に在ったりする。と言うか、世界共用語が日本語だったりする。転生者、何にしてんの?
「……!」
「ノルン?」
晩の献立を考えながらのんびりと歩いていると、不意にノルンが何かに反応した。
ノルンが走り出したので私も追いかける。すると直ぐに私の【探知】の範囲に反応が現れた。ゴブリンが3。人族1。
襲われてる? 助ける? うん、助ける。
『ステータス
ゴブリン3匹。こちらには気付いてない。一番左の1匹が剣を振り上げる。その先に人影。石礫準備。
「ノルン、一番奥、お願い!」
「ウォフッ!」
一番左のゴブリンの頭部に照準。土魔法で石礫を作り出し、撃つ。放った石礫が命中、ゴブリンの頭が爆散する。それを見た手前のゴブリンがこちらに気付いたけど、そのゴブリンの頭上をノルンが飛び越えて行き、奥に居たゴブリンの喉元に喰らい付いた。 ノルンが飛び越えた手前のゴブリンが、そのノルンの動きを追って後ろを向く。私は更に加速し、手前のゴブリンの首目掛けて飛び蹴り。ゴキリと、鈍い、気持ち悪い感触が足に伝わる。
上手くバランスをとって着地に成功、運動が苦手な私にしては上出来だろう。満足して顔を上げると、奥に居たゴブリンはノルンに喉を食い千切られてビクビクと痙攣していて、直ぐに動かなくなった。
……終わったかな?
ゴブリンの全滅を確認し、私はマントのフードを被った。
最近寒くなってきたので、今までに狩った獲物の皮を素材になめし革のマントを作っておいたのだ。念の為にフード付き。何が役に立つかわからないからね?
と、
あ、襲われてた人は無事かな? と振り返って確認する。
……女の、子供? いや、私も子供だけど。その私よりも大分小さい。多分7~8歳位かな? っと、漸くベルが追いついてきた。
「大丈夫ですか? 怪我はありませんか?」
「あ、あう……」
うん? 私の後ろの方を見てる? 何が……振り返ってそちらに視線をやると、ノルンがバリボリとゴブリンを食べてた。 おおう、すぷらったー!?
何も今直ぐ食べなくても……と呆れていると、ドサッと何かが落ちるような音が。もう一度振り返って助けた子供の方に顔を向けると、倒れて気を失っていた。
……いや、別に食べたりしないからね?