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011 別にぼっちじゃねーし!


 こんにちは、レンです。

 酷い事件だったね……遠い目をして誤魔化してみてもダメですか。そうですよね、すみません。

 実はですね……あんな事があった数日後ですが、生理が来ましてね? 初潮ってヤツです。そのショックがですね……もうなんだか酷くて。『いきなりLV5事件』とかどうでもよくなりました。

 と言うかですね? この身体、重いんです。生理の症状が。動きたくないでござる。


 あ、一応前世の知識を総動員して【創造魔法】で鎮痛剤作ったので、今はだるいけど何とか動けますよ。なんでそれにすぐ思い至らなかったのか! いや、動揺してたからですけどね。

 ちなみに痛み止めを使って何とか動けるようになったとは言っても、動く気力ありません。寝込んでます。ぐんにょり。


 そんな訳で健全な生活を心がけるようにしました、レンです。改めまして、こんにちは。



 え? 口調がいつもと違う?

 あー。あれですよ。今思考が女性寄りで安定してるようでして。

 『LV5事件』の原因のあれこれの行為とか、そのあとの初潮とかですか。それが原因だと思うんですけど、精神が肉体に引き摺られたみたいでしてね?

 一応、現状としては女性の身体である事は受け入れました。基本的にここで生きた10年間が今の人格の下地になってると思います。但し前世のおっさんの記憶が強すぎて価値観はどうにも男性寄りに引き摺られてる事は拭えませんが。偶に男っぽい地がでますしね。

 なにはともあれ、女体の神秘パネェです。 


 ……て言うか、アレ、スキルなの!? やっぱり納得いかない!


 あと、夜の日課が増えました。ついでに寝室に鍵をつけて家を全室防音仕様に。

 ……LV6になる日はそう遠くないかもしれないです。


 それはさておき。


 正直やる事ないんですよね、実際の所。体調も芳しくないから遠出して周辺調査とかもしたくないし。と言う訳で今は日向ぼっこを兼ねつつ畑仕事中です。健全だね! 健全!


 え? しつこい? ははは。


 んー、でもまあ実際暇で平和で健全ですよ、ほんとほんと。


 ……って、【探知】範囲内に動体反応? ……なんだろう? これ、狼? でもそれにしては動きがおかしいというか動きが無さ過ぎると言うか……そう、動かないのがおかしい?

 そもそも、この【探知】の範囲内って魔物除けと獣除けが効いてる筈なんだけど、なんで居るの?


「んー、このままここで考えてても仕方ないし、行ってみよう」


 さあ、準備! と言っても麦藁帽子取るだけだけど。そして鎌装備! しゃきーん!


 ……いや、鎌も置いていくよ。流石に。




 という訳でやってきました事件現場。事件じゃないけど。

 さてさて狼さん狼さん? 一体何がどうして……ああ、怪我をした母狼と子狼か。


 あー、この辺りは獣除けの匂いがするから、他の獣は寄って来ないってわかってここに来たのかな? 身の安全の為に。んー、どうしよう……見捨ててもいいし、殺して毛皮にしてもいい。何をしても私の自由だよね……


 ……なら、助けてもいいよね?


 あー、前世の倫理観に侵されてるなあ……前世を思い出してなかったら間違いなく放置してた。

 でもどうやって助けようかな? 回復魔法が使えれば早かったんだろうけど、私の治療手段はポーションしかない。飲ませる? 野生動物が人の与えたものを飲むわけがない。と言うか近づいたら子狼が威嚇してきた。うーん。


「怖くないよー?」


「ぐるるるる」


 うん、知ってた。でもちょっとショック。

 んー、ポーションは患部に振りかけても効果がある。ならここからぶっかければいいんじゃない? と言う事で、ばしゃー。

 いやん、きゃんきゃん喚いてる喚いてる。フハハハハ! 効くだろう、私のポーションは! って子狼が飛び掛ってきた! うおっ! あぶなっ!

 いやいや、助けようとしてるんだよ、って言っても分からないか。そもそも野生動物に液体ぶっ掛けるとか、普通にダメですよねー?

 なんて考えながら母狼の様子を見ていると徐々に傷がふさがっていく。すると威嚇していた母狼がおとなしくなっていった。やがて完全に傷口がふさがると、立ち上がってこちらを見つめてくる。


 あー、これは私が治したって理解してる感じかな?


 そのまましばらくこちらを眺めていたけど、その場を去って行った。


 流石に懐いたりしないよね、残念。そもそもぶっかけちゃったし!




 そう考えていた時期が私にもありました。


 今では庭で丸くなって寝ています。どうしてこうなった。


 いや、あのあと数日経って、体調も収まったから狩りに行ったんですよ。そしたらそこでばったり会いましてね? 折角なので小さい獲物を分けてあげたんです。

 それからも狩りに行く度に遭遇しまして、その度に餌付けしている内に気付いたらこの有様ですよ。


 いや、寂しくなかったって言ったら嘘になるしね? 正直な所、凄く嬉しい。


 一応名前もつけました。灰色がかった銀色の毛並みの母狼の方がノルン。白い白銀の毛並みの子狼の方がベル。元ネタ? あー、まあ……うん。子狼が3匹居たら丁度良かったんだけどね? 2番目の名前にしたのはなんとなく。



 でもこれでぼっち生活脱却ですよ。え? 会話が成立しない? それはそれ! これはこれ!



 ……あとはもふもふさせてくれれば!


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