01.闇より浮かびて
浮かんでいく。
深い深い眠りの底に沈んでいた私の意識が浮かんでいく。
久しく忘れていた私が、少しずつ、全てを取り戻していく。
――ああ、ああ。
空気が。
光が。
香りが。
祈りが。
声が。
幾年月を経て感じられる優しいそれらが、今はただただ強い刺激でしかなく。
未だ虚ろのカーテンに閉ざされ、闇の毛布をかぶる、私の意識をこじ開けていく。
――ああ、ああ。
たった一つを思い出した。
たった一つを思い出してしまった。
そうだ。
そうだ。
私は戦って死にたかった。
穏やかな死なんて望んでいなかった。
肉を貫き、骨をへし折り、血を流し。
まだ戦いたい、まだ戦えるという意志に反し、自由を奪われた肉体を疎ましく思いながら、力及ばず前のめりに倒れたかった。
武の深淵。
武の境地。
私が辿り着いた答えは――なんだっただろう。
ただ、私は、私より強い存在に出会うことを、長年望んでいた気がする。
だから、今度は。
今度こそは。
――私を殺すモノを、きっと、捜し出そう。