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2.20.ちょっと捜査

誤字報告有難う御座います……!


 ―朝―


 俺とアレナはあれからもずっと話をしていたが、流石に眠くなったので二人揃って寝ることにした。

 朝になって奴隷商人が食事を持ってやってくる。


「ほれ」


 それだけ言うとアレナに食パンと水を。

 俺には大きな肉の塊を渡してくれた。

 俺は剛牙顎を使用して肉を食べていく。


【経験値を獲得しました。LVが13になりました】


 良い肉じゃねぇか!

 フッフッフ……これなら進化して脱出できる時も近いのではないか?

 だけどどっからこんなに良い肉を?

 昨日のとは大違いじゃないか。

 まぁ経験値になるんだったら良いけどさ。


「白蛇さん。白蛇さん」


 ん? なんだ?


「これ……」


 アレナはそう言うとパンを半分千切って俺に渡してくれようとしている。

 流石に首を振ったがアレナは引かない。


「白蛇さんって食べれば食べるほど大きくなるんでしょ? だったら少しでも多く食べて」


 そしてもう一度ずいっと俺のほうにパンを近づける。

 俺は戸惑ってしまったが、最後は根気負けしてそのパンを頂くことにした。


【経験値を獲得しました。LVが15になりました】


 え? パンでも経験値手に入るんですか?

 経験値の取得量は圧倒的にすくないんだけど……なんで?

 このパンの原料に魔物の何かが使われていたりするのだろうか。

 無害そうではあるが…………心配だな。


 ただ、この調子でいくと今晩か明日の朝位には進化できそうだな。

 遅くても明日の夜には出れそうだ。


 アレナとは短い付き合いになるけど、約束もしたんだ。

 許してくれるだろう。

 その代わり俺も、力を付けて姉のサテラを助けてやらないとな。


「ねぇ白蛇さん。後どれくらいで大きくなれるの?」


 これはどうやって答えれば良いんだ……?

 とりあえず首を振って「まだだ」と言っておく。

 実際、進化はあの男たちが持ってきてくれる肉にかかっているのだ。

 不服だが。


「そっかぁ……」


 アレナは少し残念そうに呟いた。

 アレナとしても早く俺に大きくなって貰って姉を探しに行って欲しいと言うことはわかる。

 だがこればかりはどうしようもない。


 ここから出てすぐに探しに行くのも良いのだが……俺はまだ人を拘束できる術を持っているわけではないので、焦って探しに行くよりゆっくり力を蓄えながら行った方が良いだろう。

 アレナには申し訳ないが、サテラを探して助け出すのには時間が掛かってしまうそうだ。


「じゃあ白蛇さん。お話しよう?」


 あれだけ話しておいてまだ話したいんだな。

 だが元気なのは良いことだ。

 少し気を落としてしまったようだし、飽きるまで付き合ってあげますとも。



 ◆



 ―夜―


 なんつー元気な子。

 朝っぱらからずっと話してましたよ。

 ぶっちゃけ疲れた……。


 今アレナはぐっすり寝ている。

 随分喋り倒して喉もカラカラになっていそうだったから何度も水を与えていた。


 話したいのは分かるけど……ちょっとは自分の体のことを気にして欲しい。

 まだ子供だし、なんて言ったってこんなにも不衛生な場所にいるのだ。

 いつ体調を崩してもおかしくない。


 本当なら掃除をしてやりたい所だが……そうするとまた面倒そうだ。

 男たちが「誰がこんなことを!?」とか言い出しそうだしな。


 流石にそんな面倒な真似はしたくない。

 滅茶苦茶気になるし掃除したいけど我慢……我慢です……。


 そういえばふと思った事があるのだが……。

 奴隷商は何故アレナのいた領地を選んだのだろうか。

 なにか理由があるとは思うのだが……今の状況でそれを理解しろなんてできるわけがない。

 多分他の場所も襲っていたりするのだろうけど、流石にそんな不用心なわけないか。

 だがどれだけ小さいと言っても領主のいる一つの領地が襲撃されたなんてことがあれば騒ぎになっていそうではある。


 ……まぁ……考えたってわかる事なんて一切ないんだけどね。

 だってなんにも知らねぇもん!


 さて、夜になって少し暇になった。

 寝れば良いのだが……眠気が来ないのでぼうっとしている。

 だがやはり何かしておかないと不安になるので……ちょっと技能を試してみようと思う。


 使う技能は……外の様子が見れる『泥人(どろびと)』だ。

 泥人形の時と何が違うのかを確かめたい。


 技能を発動してみると、馬車の下にあった土が掘られて一定数の土が持ち上がる。

 形を整えていき、茶色の蛇が作られた。色違いの自分だ。


 目を閉じて視界を共有する。

 体を動かしてみて違和感がないかどうかを確かめてみたが、特に問題は無いようだ。

 自分の意志だけでスムーズに動かすことが出来る。


 ……ラジコンかな?


 夜なので見つかることもない。

 感知系の技能を持っていれば別だが、男たちがそんな便利な技能を持っているとは思えないので、問題は無いだろう。


 視界を繋げてみると、馬車の下に出た。

 周囲は暗いが問題なく見る事が出来る。

 馬車は全部で五つ。

 全て同じ作りをしているようで、馬車の荷台に白っぽい布が掛かっている。

 ドームのような骨組みの上から掛けられているので人も立ったまま中に入れる仕組みになっているようだ。

 よく見る馬車である。


 馬は一台につき二匹。

 台車は木材だけで作られており、金属製品は一切無い。

 壊れないのだろうかと思って見てみると結構ガタが来ている。


 よくこれで動かせている物だ……。

 せめて車輪の部分だけでも金属を使えば壊れにくくなるのに。


 で……問題の奴隷商人だが……どうやらテントを張ってその中で寝ているらしい。

 操り霞で中を覗いてみるとクッションのような物が沢山あり、それを下に敷いて寝ているようだった。

 贅沢な!


 だが馬車と言い武器と言い服装と言い……全て貧相だ。

 どれも出来るだけ安く仕入れた物だという印象を受ける。

 剣の加工が出来るのであれば、様々な金属製品を生み出すことが可能だとは思う。

 こいつらの頭は相当ケチっぽいな。


 そう言えばこの泥人だが、MP消費が少ない。

 泥人形の時は作り出すだけで30MPも持って行かれ、動かすのにも相当な量のMPを消費した。

 しかし泥人は10MPの消費で分身を作り出し、動かすときのMP消費もほとんど無い。

 これなら長時間の索敵などにも十分使えるだろう。

 素晴らしい!


 さて、これから一番気になる馬車の中身を拝見させていただこう。

 俺が居た場所は沢山の動物が薬によって強制的に大人しくさせられている馬車だ。

 もう一つは奴隷が乗っている馬車。

 中身の分からない馬車は全部で三つになる。


 俺は泥人を……分身と言った方が良いかもしれないな。

 分身を一つの馬車の車輪から登らせて中に入ってみる。


 中には様々な箱が置かれていた。

 大きな木箱だったり小さな網籠だったりと種類が豊富だ。

 中身を確認しようとしたが、どうやら何かに覆われている場合、操り霞では中を見ることが出来ないらしい。

 やはりこれも万能ではなかったようだ。


 中を小突いてみると、カタカタッチャリッという音が聞こえた。

 ガラス同士がぶつかり合っているような音だったので、中にはガラス製品が入っていると思われる。

 中を見たかったが、この体ではどうにもこうにも開けられそうになかったので諦めて次の馬車に乗り込むことにした。


 もう一つの馬車には草が沢山大きな籠に入っていた。

 恐らく薬草か何かだろう。

 俺は医学はとことん疎いのでこう言うのは触らないようにしておく。


 最後の馬車には武器が沢山あった。

 ロングソードやモーニングスター……他にも西洋の剣が数多く並べられていた。

 全て新品らしく、傷一つ入っておらず輝いている。


 なぜこんな立派な武器があるのに奴隷商人はナイフしか携えていないのか疑問だった。

 だが、ふとある可能性に気が付いた。


 実はこいつら、裏家業で奴隷商の仕事をしている普通の商人かもしれない。

 だから奴隷を入れている馬車だけでなく他の物資も積んでいるのではないだろうか。


 ……てなると面倒くさいぞ?

 奴隷商の本部からどれだけの隠れた糸が商人達に繋がっているか分からない。

 サテラを探すのにもこれが大きな障壁となるのではないだろうか……。


 奴隷商人は多くの商人を味方に付けている。

 そして商人が冒険者を雇って奴隷狩りをしたのであれば……大元を見つけ出すのが非常に困難になりそうだ。

 まぁ見つける必要は無いかも知れないが……注意くらいはしておきたかったな。


 とりあえずどうやってサテラを探すかは置いておこう。

 まずは自分が外に出れないと始まらないからな。


 …………アレナから外見聞いておこうかな。

 姉妹なら分かり易いと思うけど。


ブックマ数が150を突破しました(oωo。)感動……

皆さんありがとうございます!!

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