1.11.探索
種族変更進化をして数時間が経過した。
……だんだんレインバスについて分かったことがある。
こいつ水流なんて知らん見たいな顔しながら流れに逆らうことができる。多少の抵抗は受けるが、全く問題にならない。というか気にならない。
試しに横っ腹で水流を直に受けて進んでみたが、あっという間に横断することがことができた。
そしてもう一つ……めちゃくちゃ泳ぐ速度が速い。流れに合わせて泳げばもっと早い速度で動くことができそうだ。
しかし! 小回りが利かない。
水流の中では、体に受ける水圧がブレーキの代わりになる。だが動きが速すぎてブレーキがかかるのに若干時間がかかる。
と、そこで俺は思いつきましたよ! そう! 『水流操作』ですよお兄さん!
自然にかかる水圧でブレーキが利かないならば、自分で水流を作ってあげればいいのです!
そこで俺は全速力で泳いでみてUターンするようにしてブレーキをする!
しかぁし! やはり水圧だけでは完全に止まり切れない!
なのでぇ! 技能、『水流操作』で自分の後ろから新しい水流を作りそれを体で受ける! そうすれば完全に勢いを押し殺して止まることが出き──。
MPの存在忘れてたわ。
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種族:レインバス
LⅤ :2/10
HP :20/20
MP :0/25
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ということで、今俺は体を横にして浮かんでいる。なーんにもやる気が起きない。というかめちゃけだるい……。
MPが切れると、どうやら体に相当な負荷がかかるようだ。
意識はあるが体が動かない。
は~~。まーた確認不足ですよ。天の声っていうサポート完全無視して体で覚えてますよ。取扱説明書見ない爺ちゃんかよ。
これも聞いとけば回避できたじゃん! も~~やる気起きないわ~~~。
てかこれどうなの? MP1でも回復したら体動くようになるんだろうか……。よし。天の声さん。MP切れについて教えてください。
【MP。魔法、変化、強化など技能に使用するものです。回復方法は休息するか、魔物の肉を食べるかのどちらかになります。MP切れになると体に負荷がかかり続け、まともに動くことは困難になり、再度動けるようになるにはMPが完全に回復した後になります】
てことはMPが完全に回復するまでこのままなのね……。進化してすぐにこの状態になったからもう少しだと思うんだけどなぁ……。
あ~目をつぶって寝たい。そうですよ魚なので瞼ありませんよ。
フグになりたいって初めて思ったよね。そもそも川だからいないんだけどさ。
瞼! 俺に瞼と快適なベットをくれ!
いや瞼をくれってやばい奴だろ。もうちょい考えてから喋りやがれ。もーこれあれだわあれですから。
……MP切れて語彙力まで喪失してんじゃねぇか。MP切れ怖いな。
【MPが完全に回復しました】
…………ご迷惑をおかけしました。
MPが回復すると体が動くようになった。
周囲を確認し、安全を確保したと同時にほっと一息つく。よく敵に会わなかったものだ。
だが数時間もただ流れに任せて浮かんでいたのに一匹も合わないというのもおかしい。
何か原因があると思うのだが……全くそれらしきものを見つけることができない。
上流に行くべきか、下流に行くべきかで悩んでいるのだが……とりあえずは上流に向かっているはずだ。
……MP切れて結構戻ってきたけどな。てか…………夜か。
やはり結構な時間流れていたようだ。完全回復は大体二時間くらいだろう。
時間感覚はすでになくなっているので、暗いから夜、明るいから朝くらいの感覚でしかもうわからない。
さて、夜になると周りが見えにくくなるので動くことは避けておきたいが……今日はなぜか見える。昼くらいによく見えるのだ。
えーなんでぇ? っつっても理由は一つしかないな。これレインバスの特徴かな? 多分こいつ夜行性なんだろ。これは天の声さんの情報にはなかったからなぁ。
ん~……おー……でも見えるのはいいな! これなら昼夜問わずいつでも探索ができるじゃないか!
夜にしか現れない奴とかいるかもしれないしな~。
おっしゃ! ちょっと危ないかもしれないけど頑張ってみようじゃないですか! MP切れで休んでたから眠くもないしな! ていうか眠いっていう概念がないしな!
では探索開始! めっちゃ流されていたので全力で上流に向かいます。
それから数十分はただただ上流へと進んでいく。小魚の姿はないし、影すらも見えないがとりあえず進んでいく。
多分卵があった場所は上流。それから結構流されてきたはずだ。
あの時はまともに上流に向かうことはできなかったからしかたない。
だが下に行けば行くほど生物を見る機会がめっきり減った。
そのおかげで助かったところもあるが、LVが上がりにくいのは問題だ。できるだけ早くLVをあげて陸に上がりたい。
上がったところで問題は山積みだろうが……何とかなるだろう。
どれ位たっただろうか。自分が生まれた場所を通り過ぎて、さらに上流に向かっていると、大きな池に出ることができた。
水草や大きな岩が沢山あるが、見通しがいいため獲物を見つけやすそうだ。
が、しかしやはりどこにも魚の姿はない。
ん~~~広い場所に出たけどやっぱりいねぇなぁ。
てか俺数十分で知らないところまで登ってきたのか。すげぇなレインバス。というかブルーフィッシュの鱗が重すぎるんじゃないのか……?
だから登れなかったような気がするんだけど。
さてと。もっと上に行きたいんだけど……何処から流れてきてるのこれ。
ちょっと広すぎて上流に向かう方向がわかんないんですけど。
ま、時間もあるしぐるっと一周してみますか。
レインバスの機動力を生かして移動する。
ここに来るまでにLVはすでに5にまで上がっていた。
やはり動きながらのほうがプランクトンでのLV上げは速いようだ。
因みに今のステータスはこのようになっている。
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種族:レインバス
LⅤ :5/10
HP :30/38
MP :30/45
攻撃力:31
防御力:39
魔法力:10
俊敏 :34
―特殊技能―
『天の声』『希少種の恩恵』
―技能―
『牙顎』『発光』『部位強化(硬)』『身体強化(雨)』『水流操作』
―耐性―
『眩み』『強酸』
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今回は俊敏が上がりやすい傾向にあるようで、魔法力はいつも通りだがMPは相変わらず多い。
MPは技能で結構消費するのでもっと上げておきたいところだ。
防御力と攻撃力はまだ少ないが、攻撃力に関しては牙顎があるので問題はないだろう。使うだけで攻撃力+80だ。
ステータスを確認しながら池をぐるっと回っていく。
何かないか確認しながら回っていくが、やはり何もいない。
このままではプランクトン生活を余儀なくされてしまうのだが……主食がプランクトンというのは少し堪える。
池を三分の二周ほど回ったところで、上流に行く道が見つかった。
特に目立つ物もなかったのでそのまま上流へと向かうことにする。
なーーーんにーーーもね~~~。
暇すぎる! 詰まらん! 探索とは!!!
も~見えるの水草か石だけ! そして澄み切った水! あっらやだマジでクソ。
【経験値を獲得しました】
うるさい! 空気読んでくれませんかプランクトン!
てかもう何もいなさ過ぎて警戒心が……無くなってきている。今襲ってこられたら確実に一発もらう自信がある。
今防御力低いからなぁ……てかこの体になって戦ったことないな。一回何かと戦っときたいんだけど……なんもいないしなぁ。
今までは高い防御力を持っていたので良かったが、今では完全に弱体化されてしまっており、防御力は低い。
完全に耐久型から機動型に移行した今、どのように戦うのがいいのかを確認しておきたい。水流操作も実戦では使えていないのだから。
やっておきたいことはあるが、それを実行できない歯がゆさがいつまでも残る。
ふと、大きな石が視界に入る。
何の変哲もない今まで見て来たものと同じ石だ。
いつもならただスルーしていくのだが、他の石と違う点が一点だけあった。
……………………ん? …………ん!? 文字!!?
そう、文字が書かれていた。それもただの文字ではない。
ただの文字であれば簡単にスルーしてしまうことだろう。
だがこの文字は、目をくぎ付けにするほどに重要なものだった。
そこに書かれていた文字は…………日本語だった。