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『泥中之蓮』・2


『……例えばさ。あたしとみやかが殺されそうになって。どっちかしか助けられないってなったら、甚はどうする?』


 最後の夜を迎える、少し前のことである。

 放課後、誰もいない夕日に染まる廊下で萌は緩やかに微笑む。

 出会ってすぐの頃に同じ問いをした。もっとも、その時は「みやか」と間髪入れず断言されてしまったが。

 けれど彼女が十代目秋津染吾郎と知り、互いに気安く呼び合い、肩を並べて戦い。

 桃恵萌として親しくなれた今、とても意地悪な質問だと思いながらも、答えを彼の口から聞きたかった。


『あの時よりも迷いは強い。だけどきっと、そうなれば私は、みやかを助けると思う』


 迷って手遅れになっては困る。決断はなるべく早い方がいい。

 そう言った甚夜を数秒も躊躇わせたのは、萌がそれだけ彼にとって大切であることの証明で。

 尚も返ってきた答えは、やはりというか、いつかと同じ。

 躊躇いはあれど迷いなく、彼はみやかを助けるだろうと語る。


『……そっか。あーあ、やっぱみやかには勝てないなぁ』


 正直、ちょっと傷付いた。

 まあでも余計なことを聞いたのはこちら、自業自得といえば自業自得。選択を責める気にはならない。

 ただ理由は気になる。多分彼は困るだろうし、決定的なことを言われたら立ち直れそうにないが、萌は敢えて聞き返した。


『むー、ちなみになんで? あたしってそんな魅力ない?』


 冗談っぽく頬を膨らませて問うのは、彼女なりの気遣いで精一杯の強がりだ。

 答えにくい質問を態々してしまう辺り、我ながら面倒臭い女だなぁとは思う。

 でもこういう時、いつだって彼は子供の我儘を受け入れる父親のように小さな笑みを落として応じてくれる。

 だから自然に聞けて、けれど彼の反応はいつもと違った。

 不機嫌にはならない。ただ意外そうな、「何を言っているんだ」とでも言いたげに口の端を釣り上げる。

 そうして彼は、


『私とて、できるなら最上の結末を望むさ』


 そんな風に、不敵に笑ったのだ。






 * * *





 

 十代目秋津染吾郎、桃恵萌はいくら能力が高くともまだ少女である。

 秋津は付喪神使い。

 器物に宿る想いをあやかしへ変え使役するが彼等の業。

 鍛えても体術のみで鬼を凌駕する力はなく、年若い萌は経験も浅く、老獪なあやかしを出し抜けるような思考の速さも持たない。


「……あたしは、弱い」


 なにより、百年を戦い続けた鬼喰らいの鬼、その姿を目の当たりにして自惚れたままいられる程厚かましくもなかった。

 勿論それは甚夜や岡田貴一、かんかんだらにマガツメなどと比較した場合の話。並大抵の怪異では彼女の足元にも及ばない。

 十六にして数多の付喪神を使役する萌は才能という観点で言えば図抜けている。この歳で高位の鬼さえ調伏するのだ、いずれは稀代の退魔と謳われる日も来るだろう。

 それでも今の彼女には全てを圧倒する力量はない、そう自覚している。

 だからこそ戦いの場に校舎を選んだ。


「おっけ、ここがいい」


 鈴蘭を校舎へ押し込み、それを追ったかと思えば、追ってきた鬼共から逃げるように廊下を走る。

 当然ながらすぐに突き当たり、逃げ場を失い追い詰められた。

 でも、ここがいい。

 壁を背にした現状が萌にとっては最良のシチュエーションだ。


『がぁ……っ!』


 追ってきた数多の鬼を迎え撃つ。

 校庭で縦横無尽に、四方八方から襲われては対応しきれない。けれど狭い廊下ならこちらが有利。

 甚夜ら歴戦の鬼の経験値には及ばない。マガツメら規格外の怪異のステータスには届かない。

 けれど桃恵萌にも強みがある。


「犬神、ねこがみさま」


“付喪神”の秋津の本領。

 廊下の突き当りを背にすれば、敵の来る方向は絞れる。

 肉体的には鬼に及ばずとも、狭い場所で一度に襲い掛かる敵の量を制限すれば、数の優位は常にこちらへ傾く。

 一匹、二匹三匹。

 おそらくは高位の鬼であろう。優れた体躯を持つが故に、一回の襲撃ではその程度。

 これでいい。おあつらえ向きだ。

  

「あたしは弱い……でも状況さえ限定すれば、物量ではこっちが上。そんでもって」


 黒い犬が、まるっこい沢山の猫が、波のように壁のように鬼共へ雪崩れ込む。

 それで一網打尽とはいかない。

 相手も高位の鬼。叩き潰し、引き千切り、付喪神を蹴散らしていく。

 が、一瞬の足止めが出来れば十分。

 そうすれば。


「おいでやす、鍾馗しょうき様っ……!」


 物量と、“一発のデカさ”でこちらが勝つ。

 鍾馗は秋津の切り札、特殊な能力がない代わりに桁外れの強さを誇る。

 一瞬で三撃。高位の鬼さえも容易く屠る、高純度の力の塊。

 歳月を越えた秋津の至宝が、零さず運んできた大切な想いがこの手にある。 

 ならば多少の窮地で尻込みしていい筈がないのだ。


「さあ、勝負ね。あんたらの嘆きとあたし達秋津の想い。どっちが強いか、どっちが上かじゃなくて……どんだけ“譲れないか”を此処で確かめ合おうよ」


 挑発するように口の端を釣り上げれば、舐められたと取ったのか、鬼共は怒号と共に猛り狂う。

 小娘風情が。我らを虐げ、居場所を奪ってきた人間が。どの面下げてそんなことをほざくのか。

 不満などでは生温い。腹の底から絞り出す叫びは悲痛で、積憤よりも慟哭を思わせた。


『マガツメは、我らの希望なのだ。人の世を覆す、唯一の……!』


 高位の鬼を斬り伏せ、けれど向こうも止まらない。

 止められない。此処で足踏みできるのなら、そもそも彼等は鬼ではない。

 己が心のままに拳を振るい、その果てが死だとしても、彼らは己が心のままに生きる。


 本当は、そうやって、生きたかったのだ。


 早すぎる時代の流れに取り残されてしまったけれど。

 己が為に在り続けることこそ鬼の性と。

 ただ感情のままに生き、成すべきを成すと決めたなら、その為に死ぬと。

 できるなら、そういう在り方が許される今で在ってほしかった。


『滅びなど望んではおらぬ。我らはただ、我らが認められる今を欲しただけだ! 何故人だけが蔓延る。我らは、存在すら認められぬ!?』

「……なんで、だろうね。あたしも、よく分かんないや」


 鬼も退魔も現代では創作上の存在、なんなら笑いのタネでしかなく、少女に返せる答えなどなにもない。

 振るわれる暴虐と共に絞り出す感情。

 その一つ一つが萌の胸に突き刺さる。

 時代は流れて、人工の光が夜を照らし。かつて宵闇を闊歩したあやかしは街の片隅に追いやられた。

 鬼達の気持ちを分かるとは言ってやれない。

 しかし彼女ら退魔もまた同じ嘆きを抱えてきた。


「ごめんね、なんて言えない。謝らない。でも、あたしだって、ここは引けないっ!」


 だけど、だからこそ、譲れない。

 約束した。いつか彼がマガツメと戦う時、隣に立つのは秋津染吾郎だと。

 それを違えることはできない。

 辛辣な言葉が突き刺さっても、この胸には、もっと大切なものが宿っている。


「……う、あああああ!」


 数多の鬼を前にして鍾馗は暴れ狂う。

 その猛りは人の我儘。

 現代に生まれた少女だからこその、身勝手さだったのかもしれない。

 だから謝らない。

 謝って許されるなんて望まない。

 我儘なら、それを張り通す。

 それが報われぬ者達の嘆きを踏み越えていく彼女にできる、最大限の礼儀だろう。


「はぁ…はぁ……」


 そうしてどれだけの時間が経ったか。

 怨嗟に溢れていた廊下も今は静か。襲い来る鬼共を只管に打ち倒し、状況は落ち着いても達成感など欠片もない。

 寧ろ心の何処かが締め付けられる。

 でも泣き言は言えない。

 ゆっくりと空気を吸ってはいて、荒れた息を整える。

 取り敢えず、どうにかなった。


「お疲れ様でした、秋津の十代目」

「ひぇっ!?」

 

 そうやって気を抜いた瞬間だったから、いきなり声をかけられて、と軽く女の子らしい悲鳴を上げてしまうくらいに驚いてしまった。

 

「……驚かせないでよ」

「あやかしの本懐は人をびっくりさせることですよ?」


 敵の前で醜態を晒したのが恥ずかしかったらしく、憮然とした表情を作りながらも頬は若干赤い。

 思春期の少女の可愛らしい反応を、向日葵はくすくすと無邪気に笑っていた。

 それをやりにくいと萌は思う。この鬼は目が赤い以外は人と何ら変わらぬ容姿を持ち、理性的で、甚夜を慕っている為悪辣な真似は殆どしない。当たりも柔らかく、接している分には不快感はない。

 そういう相手なのに彼女は間違いなくマガツメの、現世を滅ぼそうとする鬼神の眷属だ。

 つまりは親しみ易く、当人にはその力のない、人に害為す悪鬼。複雑な立ち位置の向日葵にどういった態度で接すればいいのか、萌は今一つ決めかねていた。


「てか、此処にいるって、後から駆け付けたって訳じゃないっぽいよね?」

「はい。待ち構えさせていただきました」


 鬼達を校舎に無理矢理誘導したのは、そこが萌にとって優位だから。

 適度に身を隠せるし、多数を相手にした時、付喪神の物量と一発のデカさを最大限活かせる。

 鈴蘭を相手する際も鞭のようにしなる白い腕の動き、その方向を制限できる。

 更に言えば、こちらが不利に陥った時、甚夜の集中を切らさない為にも戦う場所は離れていた方がいい。

 萌は決して頭がよくない。それでも必死に考えてこの場へ臨んだ。

 なのに向日葵が既におり、その傍らで鈴蘭が態勢を整えているのは、つまりそういうこと。


「なに? 最初っから読んでた、みたいな?」

「ええ。“邪魔をするものは私が”……狙いは貴女と同じ。ならばそれも自然かと」

「……なんか、ヤな感じー」


 折角の作戦が読まれていたのは不満だが、そこは仕方のないところだろう。

 萌はこの夜の戦いを総力戦と表現したが、実際は微妙に異なる。

 正確に言えばマガツメにとっては願いを叶える為の総力戦であるが、向日葵には違う。

 彼女にとってこの戦いは甚夜とマガツメの我の張り合い、勝った方が意を通す。であれば他事は全て邪魔だ。

 その意味で、心情的に向日葵は萌と敵対しておらず、寧ろ志を同じくしているといってもいい。

 狙いは一つ、横槍を排除し結末は母と叔父に委ねること。

 萌が鈴蘭を校舎へと叩き込んだのは、向日葵にしてみても良手ではあった。


「ですから、どうでしょう? 全てが終わるまで睨み合いを続けるというのは。どのみち此処での趨勢は勝敗に直結しません。結末を決められるのはあくまで母とおじさまだけですから」


 此処で勝ったとて、甚夜が負ければおしまい。かと言って助力は彼自身が認めないだろう。

 故に向日葵の発言は正しい。萌にできるのは横槍の排除まで。それが為されるのであれば、鈴蘭との戦う必要性自体はあまりないのだ。


「害意のない鬼は討たぬが秋津の信条。あたしとしては結構悪くないんだけどね、そのアイデア」

「ありがとうございます。では合意ということで?」

「んー、でもちょっと微妙」


 萌は迷った。

 甚夜の勝利を信じるなら、その提案は決して悪くはない。

 向日葵は母を大切にしているが、嘘偽りなく叔父のことも慕っている。こちらの有利に尽力はしないだろうが、不利の為に搦め手を使う真似もしないとは思う。

 だが完全に信用もしきれなかった。


「てかさ、別にあんたはあたし……ていうか人間のコトなんてどうでもいいでしょ? 生きてようが死んでようが」

「むぅ、そこまで冷たくもないですよ、私。人のお友達だっていますし。それに、おじさまが悲しむこともあまりしたくありません。勿論母の願いであれば止む無く、という状況はありますが」


 マガツメの命令がない限りは、自己の判断で甚夜の為に動く。それが向日葵のスタンス。

 考え方は妙な理屈を捏ねられるよりも分かりやすいし、その分納得もできる。とはいえ疑いを払拭するほどでもない。


「そんじゃ、鈴蘭も?」

「はい。あれは母の命令でしたが、その範疇で出来る最良を選んだつもりです。限りある素材を使ってしまいましたけど」


 偽物の件も、聡くない萌ではその全貌を把握できないが、向日葵なりにベターを目指した結果だという。

 いや、待て。

 そこまで考えて、萌は引っ掛かりを覚える。今この鬼女はなにかおかしなことを言わなかったか。


「待って、限りある素材ってどーゆーコト?」

「……そのままの意味ですよ。鈴蘭は記録した人間の複製を作る。でも、流石に“原料”がなければ作れません」

「それって」

「秋津さんも見たでしょう?」


 ほんの少しの憐憫を感じさせる微笑みに想像が間違っていないのだと思い知らされた。

 向日葵と、鈴蘭と遭遇したのは廃れたボウリング場の二階。

 そこは何故か外観とは違い真新しく、赤子が放置されていた。

 おそらくはマガツメの<力>、<まほろば>の引き起こした現象。時間を逆行させられ、赤子にまで戻ってしまった一般人だ。

 そうだ、今の今まで萌は赤ん坊が放置されていたのだと考えていた。

 けれどもしそれが間違いだったら? 放置ではなく、鈴蘭の<力>を試す際に必要な準備だったとしたら?


「人間の材料は、人間です」


 頭がよくないと自分でも思っている。

 けれど鈴蘭の<力>には材料がいる、それが赤子だと知らされた。そこまで情報が集まればいくらなんでも気付く

 鈴蘭の<力>の特性は「赤子を材料に記録した人間の複製を作る」こと。

 彼女だけがそれを知り。

 此処に桃恵萌は、おそらく甚夜も辿り着いていない結末を完全に理解した。


「現世を滅ぼすっていうのは、<まほろば>でみんな纏めて赤ん坊に戻しちゃうこと。ボウリング場が新規オープンみたいに綺麗だったのは、場所にも効果が及ぶから。だったらマガツメは、比喩じゃなく過去を取り戻せる。鈴蘭の出番は、そのあと。できた赤ん坊を使って、自分に都合のいい人間の複製だけを作り上げる。そうやってマガツメのとって幸せな、百七十年前の葛野を再現する……」

「はい。それが母の願い、そして鈴蘭に与えられた最後の役割。マガツメの娘は皆必要ないから捨てられた。その中で長女の私と末妹の鈴蘭だけは特別。私達は最後の最後に、母の想いを形にするため産み落とされたんです」


 そう語る向日葵の表情は、夏の花の晴れやかさとは程遠い。

 今にも枯れてしまいそうなくらい寂しげな瞳をしていた。

“母の願いであれば止む無く”という表現は正鵠を射ている。

 彼女は犠牲を容認しているのではない。けれどマガツメの娘は切り捨てられた心の一部、結局は同じものだから。甚夜を慕い、良識を持ち合わせながらも、母の願いを否定できない。

 愛する人と崇めるべきものの為に咲き、自分の心を置き去りに枯れていく。

 向日葵とはそういう花だ。


「だとしても母が勝たなければ所詮は机上の空論。結局は何も変わりません」

「そうね。でもごめん、前言撤回するわ。さっきのアイデア全否定。鈴蘭は生かしておけないし、あんたの横っ面もぶん殴る」


 萌は鍾馗の短剣を突き付け、静かに目を細め、悠々と立つ鬼女を睨み付ける。

 意外に思ったのか、或いは予想していたのか。向日葵は怒りを真正面から受け止め、しかし穏やかな態度が崩れることはない。


「人を素材に人を産む。あまり気分はよくないかもしれませんが、どっちにしろ母が敗北すればそういうことはしなくなりますよ?」

「かもね。戦う意味がないってのも賛成。でもさ、鈴蘭を生かしておいたら私より頭のいい甚やみやかは絶対答えに辿り着く。だからダメ。この話は誰にも知らせない。これ以上、あたしの大好きな人たちを傷付けさせない」


 鈴蘭はみやかや萌の偽物を作った。実はそれ、一般人を赤ん坊にまで戻して、その子供を原料にして作ったんですよー。

 なんでそんなことをって? 決まってるじゃない、甚夜を幸せにするの。その為にもうこんなにいっぱいの人間を殺したんですよー。


 たとえマガツメをどうにかしたとして、後でそんな事実が出てきたら絶対に傷付く。彼はそういう不器用な男で、萌の友達もそういう優しい女の子だ。

 だから鈴蘭は此処で片付ける。真実を知るのは自分だけでいい。

 隠すのはよくないと分かっているが、それでも結末はハッピーエンドがいいに決まっているではないか。


「それにさぁ、個人的にもなんかムカツク」


 そういった周囲への気遣いを置いておくにしても許せないと萌は憤る。

 許せないのは人を喰らい人を産むことではない。

 でも貴女だって豚や牛を食べてるじゃないですか、とか言われたら返せる答えなんて何もない。


 しかしムカついたのだ。

 平然と人を犠牲にして幸せな場所に帰りたいと語る奴が。


 心ならずも犠牲にして、迷い涙し、それでも歯を食い縛って歩いてきた。彼は多くのものを失って、それでも小さな幸せを必死に守ってきた。

 なのに元凶である筈の鬼神が、のほほんと頭ン中お花畑のガキみたく責任も取らずただ夢みたいなことばっかりほざく。

 これはあれだ、普段男のことをメチャクチャに馬鹿にするし同性だって見下してるくせして、イケメンの彼氏捕まえるためにカワイイ系のキャラ作って甘える女を見た時に感じる気持ちと似ている。

 人を愚弄し踏み躙って、どの口で幸せを語るのか。

 退魔の名跡としてではなく、甚夜の友人としてではなく。同じ女としてマガツメは不愉快だ。


「まあ、だから? 八つ当たりで悪いけど、黙って睨み合いで終わらせそうもないや。あんたらはここでぶちのめす」


 鈴蘭はマガツメの計画の要。此処で討ち取れば二度と再起は叶わない。

 ならば大勢には影響しなくとも、此処での勝敗にまるで意味がないということもない。

 萌は怒りを飲み込み、ゆっくりと鍾馗の短剣を構えた。

 いくらムカついたからと言って、それに身を任せるなんてのは駄目だ。

 確実に“とる”。

 誰もいない夜の校舎、薄暗い廊下。

 本筋とは何ら関係なく、勝ったところでどうということもない。

 そういう、有り余る無駄で構成された戦いに、桃恵萌は当たり前のように身を投じた。







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