別れと不幸のこと
347:名無しの戦闘員
前も話題に出たけどさ
次世代ものって基本親世代よりインフレするもんだけど魔法少女ちゃんたちってそんなことないよな?
348:名無しの戦闘員
ロスフェアちゃんと比べるとせいぜい互角くらいだからなぁ
みそらちゃんの氷とかユエちゃんのマジカル八極拳に誤魔化されてるけど出力だと聖霊天装が使えるママ達の方が有利っぽい
349:名無しの戦闘員
足りないパワーを技巧でどうにかしてる感はある
350:名無しの戦闘員
あ、でもジュリアちゃんの新型魔導装甲はイイ感じ
全身装甲じゃなくなって可愛いし鞭も装備してて性能的にはLリアちゃんのよりも上に見える
351:ハカセ
どうも魔法少女の変身アイテムアはワイが作ったみたいでな
妖精衣を技術で再現した、みたいな感じではあるんやけど
純正の妖精姫より多少弱いみたいなんや
352:名無しの戦闘員
急に入って来たなw
353:名無しの戦闘員
無事だったか
よかったよかった
354:名無しの戦闘員
ああ、コピー品なのか
魔導装甲は単純にアップデートされてるから上と
……となると首領ちゃんの娘、あんまり強くないってことにならないか?
355:名無しの戦闘員
お帰りハカセー
356:名無しの戦闘員
神々しかったぞ天使の羽と共に舞い降りるハカセ
357:名無しの戦闘員
ばっちり緊急生放送されてましたね……
358:ハカセ
ただいまー
ワイはやったぞ……
みんなの力を合わせてワイのワイを守り切った……
359:名無しの戦闘員
今回はマジでピンチだったな
360:名無しの戦闘員
ハカセ砲撃ご苦労さんw
361:名無しの戦闘員
砲弾乙
362:名無しの戦闘員
弾丸X
363:名無しの戦闘員
世界の危機でも魔法少女ちゃん達の未来の危機でもなく
ハカセの息子の危機っていうのがアレだなw
364:名無しの戦闘員
砲弾乙
365:ハカセ
もはやワイ=砲弾になってる件
その認識は頼むから改めてくれ
366:名無しの戦闘員
今回のレイド戦は見ごたえがあったなぁ
367:名無しの戦闘員
黄金ハカセの全裸もちょっと興味はあった
緊急生放送で放映されたら笑う自信ある
368:名無しの戦闘員
お茶の間に流していいもんじゃねーよw
369:名無しの戦闘員
いや、意外と喜ぶファンはいそうな気がするぞ
信じられんことに呟き検索したら「ハルヴィエド様ぁ」みたいな感じの女性ファンがちらほらいてな
370:名無しの戦闘員
ハカセファンいんの?
ぽんこつは置いといても悪の科学者なのに
371:名無しの戦闘員
クピモン騒ぎのおかげでデルンケムの評価も上がったし
Lリアちゃんらが率先してクピモン退治してくれてたおかげだ
372:名無しの戦闘員
中身さえ知らなけりゃただの高身長銀髪イケメン外国人モデルみたいなもんだからそう不思議でもない
373:名無しの戦闘員
経営者としてもかなり有能ンゴよ
ぶっちゃけウチの社にもかなりファンがおる、嫉妬メンもおるけど
374:名無しの戦闘員
じゃあもう脱ぐしかないな
375:名無しの戦闘員
ファンの期待に応えるのがハカセの役目だよね
376:ハカセ
>374、375
いや、なんで? 皆のおかげやけどワイも頑張ってワイを守ったんやぞ?
377:せくしー
ハカセ社長代理の写真集くらいなら需要はありそうですね
企画してみましょうか?
378:名無しの戦闘員
秘書が社長売りにきおったw
379:ハカセ
許してせくしー
食堂のメニューに大盛り唐揚げチャーハン加えるから
380:名無しの戦闘員
どう考えてもハカセが食べたいヤツやん
381:名無しの戦闘員
緊急生放送見てたぞ
ヒロイン・I奈ちゃんな感じだったけどあれ結局なんだったの?
382:名無しの戦闘員
Lリアちゃんもかなり出張ってたよね
Sやかちゃんだけ状況上手く把握してない感じ?
383:ハカセ
あー、どうもI奈ちゃんとLリアちゃんは幼いクピモンを拾ってお世話しとったんや
二人ともいい子やからな 行く当てのない幼ワイをまるで弟のようにかわいがった
結果としてそいつは成長し過ぎてラディクスになってもた
せやから二人とも責任を感じて頑張ってくれた、みたいな流れやね
終わった後に一応のこと花嵐のアリスにも聞き込みしたんやけど、未来世界のラディクスは誕生の経緯が違うらしい
未来の方ではI奈ちゃんらのアレコレではなく単に排除しきれなかったクピモンが巨大化した、って感じ
384:名無しの戦闘員
ん?
ここではI奈ちゃん達が原因でラディクスが産まれた
でも未来では二人が関わっていないのにラディクスが産まれた
それっておかしくない?
385:名無しの戦闘員
つまりどういう経緯を辿っても結局ラディクスは産まれる?
それは未来が変わらないってこと?
386:ハカセ
うんにゃ、これに関しては未来が変わらないというかクピモン自体の特性の話やね
基本的にクピモンは他者の願望を反映して変容する
実際当初は色んなワイになれた
せやけど突き詰めていけば大雑把な叶え方しかできないんや
で、すごい低い確率で、許容量の大きな個体がおる
無事を祈っても、逆境に負けないでと願っても、動じない心を欲しても、ぜーんぶ防御力向上で表現される
可愛い女の子キャラって頼んだら大体似たようなイラストになるのと似たようなもんか
結果、『才能のある』クピモンは大きくなっら皆ラディクス的な存在になる
早めに根絶の手段を確立できてよかったわ
387:名無しの戦闘員
なるほど カワイイ女の子キャラって言ったら
当然のことオレっ娘小学生になるもんな
388:名無しの戦闘員
確かに 大体のヤツは病弱系の線の細い子を想像するか
389:名無しの戦闘員
ああー そりゃどう考えてもツインテ娘だわ
390:名無しの戦闘員
は? お前ら舐めてんのか?
391:名無しの戦闘員
あ? 喧嘩売ってんのか? ドジっ子看護師最強やろ?
392:名無しの戦闘員
これで争いが勃発するのが実ににゃんj民
393:ハカセ
うんごめんワイの例えが間違ってました
とりあえずこの世界でのみラディクスの誕生にI奈ちゃん達が関わった
そのおかげで中途半端な成長をして、弱いラディクスが産まれた
そこだけでええわ つまるとこ倒せたのもI奈ちゃん達の功績と言えなくもない
あんまり怒らんとくわ
394:名無しの戦闘員
そうしてやってくれ
I奈ちゃんら視点だと親しい子がいなくなったのに近いんだし
395:名無しの戦闘員
とりあえずこれで問題は粗方片付いたって考えていいの?
396:ハカセ
あくまで対症療法やけどな
とはいえルルンちゃんのおかげで核の研究が進んだ
クピモンの核に対してピンポイントで魔力による肉体構築を阻害する波長を放つシステムを作ってみた
今後は核が流れ着いたとしても形作れないようになる
データはアリスちゃんに渡して未来でも活用してもらう
397:名無しの戦闘員
技術分野では本気で頼れるなこのポンコツは
398:名無しの戦闘員
やっぱ核は未来からの流出品か
だとすると黒幕を捕まえないと同じことの繰り返しにならん?
399:ハカセ
原因はもう分っとるから大丈夫、黒幕の方も
あとは、現代にいるクピモンを全部倒せばそれでおしまいや
さすがにコレは他の奴には任せられん
400:名無しの戦闘員
でも妙だよね
未来でもハカセがハカセなら、娘ちゃんに危険な時間旅行させるくらいならワイが動く! っていい出汁そうなのに
微妙に私ちゃんのハカセ像とは解釈違い起こしてる
401:名無しの戦闘員
ハカセの出汁か……
402:名無しの戦闘員
ちょっとキモい
403:名無しの戦闘員
実際ハカセパパとか過保護の過保護だろうし
なんで自分で来なかったんだろ?
404:ハカセ
そりゃ危険がないって分かっとったからやろ
じゃなきゃ大事な娘を送り出すなんてワイにはできん
きっと未来のワイも同じように考えているはずや
◆
魔法少女まじかる☆ユエ。
魔法天使らぶりー♡みそら。
花嵐のアリス。
ジュリアレーテ・エフィル・セイン
謎の魔法少女猫ネッコ。
未来からやって来たという娘を今さら疑うことはない。
現在は沙雪に心を傾けているが、未来の可能性上の娘達の中から美空だけを贔屓するつもりも。
ハルヴィエドは、できれば沙雪と結婚したいと思っている。
だがそれを理由に他の娘達を蔑ろにするのは、もともと年下に甘い彼には難しかった。
だから億劫だ。
今日は彼女達に少し厳しい言葉をぶつけなくてはいけなかった。
「済まないな、皆。呼び出してしまって」
クピディタース・ラディクスの件が片付いた翌日、ハルヴィエドは娘達五人を会社の応接室に呼び出した。
秘書のレティシアとリリアは傍にいない。彼女達を信頼してはいるが、今日の話はあまり聞かれたくなかった。
「いいや、父さん。何か大事な話があるんだろう?」
リーダーが花嵐のアリスが代表して答える。
過去での騒動が終わって肩の荷が下りたのか、娘達はこれまでよりも寛いだ様子だった。
「ああ。というより、答え合わせかな? 一応のこと現代での問題は粗方片付いた。君達も未来に戻ってしまうだろう? その前に、色々と教えてほしいんだ」
少しだけ、寂しいという気持ちはある。
美空にしろ、この先に生まれる娘が彼女自身になるかは分からないのだ。
けれど送りが出す側が未練を見せては彼女達も辛いだろう。ハルヴィエドは普段通りの冷静な表情を張り付けて話を続けた。
「特殊な波長でクピディタースの肉体構築を阻害する装置を完成させた。データはそれぞれ渡す。未来でも活用してくれ」
「父ちゃんサンキュな! まあオレはそういうのよくわかんないけど!」
元気のよいまじかる☆ユエの振る舞いに思わず笑みが零れた。
他の娘達も感謝してデータを受け取ってくれた。これで未来の問題も片付けばいいのだが。
「ありがとう、父さん。萌母さんに渡して、未来でもしっかりと対処するよ。父さんの名誉のために」
「そうしてくれると助かる。あとは、現在存在している最後のクピディタースをどうにかすれば……本当に終わりだ」
「……そうだね」
ぎこちないアリスの表情に、ハルヴィエドは自分の仮説が間違っていなかったのだと確信する。
「だからアリス、夕映、美空、ネッコ、ジュリア。私は、君達を倒さなくてはいけないんだ。残された最後のクピディタース達よ」
突き付けた発言に少女達は硬直する……ハルヴィエドはそう予測していた。
しかし実際には何故か嬉しそうだ。ジュリアなどはパチパチと拍手するほどだ。
「さすが父様ぁ」
「ありがとう、ジュリア。私も色々と考えたんだ。まず、私はどちらかというと心配性な方でね。多少年下に甘い自覚もある。だから、時間旅行なんて真似を娘にさせるか、と疑問を抱いていたんだ。しかし君達はここにいる。ならばどういう状況なら自分の娘を危険な場所に送り込むかと考えた。……まあ、九分九厘安全が確保されているのが前提条件だな」
どうすればその条件をクリアできるか。
それを考えた時、一番単純な方法が思い浮かんだ。
ヴィラ首領が外に出る際に提案した妥協策だ。
「遠隔怪人セルレリアンに搭載されたPPシステム……疑似憑依システムによる遠隔操作、怪人を通した五感の再現。それに近い技術だな。君達本人は各々の未来にいて、過去には自分を模した“身代わり人形”を送り込み、それを通して私と会話している。つまりタイムトラベルというよりも過去・未来間の“通信”だ。これなら、娘達のことを心配して夜も眠れない生活をしないで済む」
つまり最初から前提が間違っている。
現代に魔法少女たちは来ていなかった。
その根幹にあるのがクピディタース。
レンタル彼氏の親戚のような技術を、“対象者の再現体作成法”として運用し、アバターを使用した安全な過去観測を確立した。
ただしどんな天才でもトライアンドエラーなく成果を上げるのは難しい。
萌も自身の打ち立てた手法を証明するために幾度か実験を行っている。
そうすれば失敗は必ずある。
『未来のクピディタース』の核は流出したレンタルハカセのもの。
『現代のクピディタース』は核は、過去との通信実験で失敗したもの。過去に送ったはいいが上手く機能しなかったのだろう。
そして、どちらもが暴走した。
だから萌の娘である花嵐のアリスが率先して事態の収拾に動いた。
今回の原因をどこかに求めるというのなら猛虎弁であり、葉加瀬萌ということになってしまう。
「付け加えるなら」
おおむね正しかったようだが、アリスが補足する。
「実は、未来でクピディタースを過去観測に使う案を出したのはリリア・ヴァシーリエヴァさんなんだ。萌母さんと同じく、父さんから薫陶を受けているからね」
各未来にクピディタースがいるのは、どの世界でも猛虎弁がやらかすから。
しかし現代のクピモンに関しては、ハルヴィエドと萌が結婚した世界線からのみ送られている。
ハルヴィエドの才覚を超える研究者である妻・萌と、ハルヴィエドの唯一の弟子として深く学んだリリア。
この二人で研究が行える体制が整った時のみ、アバターによる過去との通信という技術が確立されるためだ。
「君達のボディはクピディタースを応用した技術で造られている。その姿は……」
「私たちのままだよ。あと、父さんが萌母さんと、リリアさんが再度製作に携わったから、私たちのアバターに暴走の危険性はない。基礎理論は変わってないけど、周囲の願望に反応する機能がないからね」
「それは安心だ。しかし、変身もトレースできるのか。それはそれで別の使い道がありそうだな」
遠隔操作で安全を確保した上に魔法も使える。軍事利用が容易そうな技術だ。
もっともそこを見逃す萌でもないはず。なんらかのプロテクトは仕掛けられているとは思うが。
「音頭を取ったのは萌ちゃん。実験がこの時代で行われたのは、上手くいけば猛虎弁とコンタクトをとって大本の企画書を得られると期待していたから。しかし、未来でクピディタースが誕生、その対応に追われることとなる。他の世界線でもクピディタースが観測されたため、それらも巻き込んで、新型アバターで過去への干渉を行った。つまり、全ての基準はルル首世界で、一連の流れは私より猛虎弁を基準にしていた訳だ」
「まあ、そんなところ」
なぜかアリスはくすくすと笑っていた。
「萌母さんは、過去観測技術を公にはしていない。だからクピディタースによるコピーも疑似憑依も、世間には知られないまま消えていくだろうね」
「その方がいい。素晴らしい技術だが、それを正しく扱えるほど人間も社会も成熟していないよ」
これで疑問のほとんどは解消された。
少し空気が和らぐと、ネッコが平然と言いにくいことを口にした。
「パパの作ったシステムを使えば、今後この時代にクピディタースは産まれないにゃん。同時に、根幹にクピディタースの技術を使っているウチらの義体も、形作れにゃい」
だから最後のクピディタース……娘達を倒せば、全てが解決する。
今後、未来からの干渉はない。
「そう、だな」
ハルヴィエドはほんの小さな未練を自覚した。
茜や萌、ミーニャやヴィラ。彼女達に好意は抱いているが、それは友情や家族愛を超えるものではない。
このままいけば沙雪と結ばれるだろうし、そうなれば可能性は本当にただの可能性に還る。
今ここにいる美空も、現代の延長で生まれるハルヴィエドの子供とは別人かもしれない。
そう考えると言いようのない寂寞が胸に居座る。
「……ああ、そうだ。実はね、父さんでも読み切れなかった目的が、私達にはあるんだ」
暗くなりかけた雰囲気を払拭するように、花嵐のアリスは優しい笑顔を見せた。
同じように美空と夕映も楽しそうな様子で頷き合う。
「ね、パパ。私は、パパに魔法天使への変身ステッキを作ってもらいました」
「オレも。変身ブレスレットは父ちゃんのお手製だ」
未来のハルヴィエドが造ったという変身アイテム。
変身機能付きの魔霊変換器であり、能力は本人の魔力に依存する上聖霊天装もできないので特別凄い技術でもない。
「同じく、妾の魔導装甲も父様が作ってくれたの」と、ジュリアが。
「ウチの魔霊変換器はパパ作で、操影術はママの仕込み、にゃん」と、ネッコが。
それぞれ誇らしそうに自らの力を発動する鍵を見せてくれる。
花嵐のアリスも一度メガネを直してから、自慢げに胸を張った。
「空音の妖精の加護を受け、嵐を制して花と咲く。この口上はゼロスおじさんの前でやったけどね。私は妖精の加護を受けているけど、萌母さん達とは趣が違う。私が契約したのは、空音の妖精ライア……父さんがくれた妖精なんだ」
空音とは『実際には鳴らないのに耳に聞こえるような気がする音』のこと。
または嘘や偽りを意味する。その名を冠する妖精は、純粋な存在ではなかった。
「空音の妖精ライアは、父さんが神霊工学によって生み出した疑似妖精。人造魂をさらに発展させて器官としての魂の構成を変化、魂そのものを肉体とする魔力生命体を産み出す。高位霊体を自らの手で造るというのは、これまでに類を見ないほどの偉業だよ。……まあ、美空や夕映との変身アイテムと同じだね。妖精姫になれない私の我儘に応えてくれた」
つまり娘達は、全員ハルヴィエドのアイテムで変身していた。
そうする必要があった……というよりも、そうしなければならなかった。
その理由を、美空が本当に嬉しそうに語る。
「小さな頃の私は、ママみたいに変身してみたかったです。妖精姫になってみたくて、でもなれませんでした。私はパパの娘だから」
妖精は高次霊体────カラダに魂という臓器があるのではなく、魂という魔力生成器官そのものがカラダとなった、人間よりも高次の霊的生命体であるとされている。
その特性上、妖精は人よりも遥かに強大な魔力を誇る。
また不滅ではないが不老であり、子孫を作らないのだという。
妖精たちは自然の営みの中で、なんの意図もなく不意に生まれてくる。
人によっては“神の贈り物”と表現する者もいる。
「だって、妖精は“不幸な人間の前に現れるものだから”。……パパの娘に生まれた私達は、どうやっても妖精姫にはなれなかった」
膝を壊してバスケを辞めた茜の前には、灯火の妖精ファルハが。
裕福な家だが寂しい幼少期を過ごした沙雪の前には、月夜の妖精リーザが。
何度も何度もお姉ちゃんにプリンを食べられた萌の前には、訪れの妖精メイが現れた。
程度は違えど、みな不幸を抱えていたがために妖精との契約に至った。
しかし美空たちはそうは成れなかった。そもそも、妖精が姿を見せてくれなかったから。
「だから私達は“魔法少女”なの。不幸に泣いて神様の贈り物をもらった妖精姫じゃなくて、たくさん愛されてパパのプレゼントで変身する、魔法少女」
美空がこれでもかというほどに明るい笑顔だ。
私は、幸せだと。その意味が痛いほど胸に刺さる。
「なんというか、妾達がラディクスを倒せなかった理由の根本ってそこだよね~」
「そうそう。オレら、ぶっちゃけ母ちゃんらより断然弱いんだよ。ホンモノの妖精と契約してないから」
「ウチもママに殺し技教わってないにゃん」
他の娘達も妖精と契約できなかったと口々に言う。
その事実が、茜の娘もヴィラの娘もミーニャの娘も、幸せな毎日を送ってくるのだと証明している。
肩をすくめたアリスが、わいわいと騒ぐ娘達の言葉を締めくくる。
「そういうこと。だから、強さがなくてもラディクスをどうにか出来る手段を求めて、父さんはそれに応えてくれた。そして、私達の裏の目的も達成できた」
「裏の目的とは、いったい?」
「若い父さんに、妖精と契約できなかった私達を見せること。……貴方の娘は幸せだよ、だからそんなに悩まなくていいんだよっていう。激重感情な方々からの伝言、かな」
見透かされていたのかもしれない。
うまく子供をやれず、家族を維持できなかった。だから自分が家族を作れるのか、心のどこかで不安に思っていた。
しかし幸せな娘の姿があると。
そういう日はちゃんとやってくるのだと、可能性上の未来が教えてくれた。
「伝えられてよかった。これなら若い父さんも、少しは安心できるかな?」
「……ああ。なんというか、情けなくはあるが。子供にそこまで心配をかけていたとは」
「そう言わないでほしいな。萌母さんほど重くはないけど、私達だって父さんが大好きなんだから」
アリスは恥ずかしさからか、微かに頬を染めた。
室内の雰囲気が柔らかくなる。けれど、そこで終わりだった。
「つまり、まあ……機会があったらまた会おうね、父さん。いつか、どこかの未来で」
花嵐のアリスのがそう告げると、彼女の身体が淡く光を放つ。
その現象には覚えがあった。物質化された魔力が結びつきを失くし、大気に還るのだ。
「んじゃな、父ちゃん。オレ、若父ちゃんと話せて楽しかったぞ!」
「妾も。ちっちゃいヴィラ母様で遊べたし~」
茜もジュリアも同じように淡い光に包まれる。
続くネッコも、飄々とした態度は崩さないが少しずつ粒子になり空気に溶けていく。
「あんまりインスタントは食べないように。お野菜大事、にゃん」
茶化すような物言いをしながらも、その体は少しずつ薄れる。
なにかを言わなければ。そう思ったが、美空がちょんとハルヴィエドの唇に指で触れた。
「パパ。私達は、パパの娘だけどパパの娘じゃないよ。だからね、私達のことは心配しないで、パパの好きな人と結婚してほしいなぁ」
美空は最期まで、満足そうな微笑みを崩さずに。
「大丈夫、私達は未来のパパにしっかり甘えるから。パパは、これから作る家族を、生まれてくる子供をしっかり愛して、たくさん甘えさせてあげてね」
最期まで父親の幸せを望んでくれる、優しい娘達。
そんな彼女達にせめて何か返したくて、言葉にハルヴィエドは万感の意を込める。
「ありがとう。もう会えないけれど……君達は私の自慢の娘だ。この出会いを、決して忘れない」
その想いはどれだけ伝わっただろうか。
娘達は少し驚いた顔をしてたが、照れたようにはにかんだ。
そうして、まるで最初からいなかったように、五人の娘は姿を消した。
からん、と床に何かが落ちた。クピディタースの核たる霊結晶。それがちょうど五つ転がっている。
ハルヴィエドは拾い集めたそれを掌にのせてしばらく眺めた。
それが形を持つことは、もう二度とない。
握りしめれば微かに温かさが残っている。
程無くすれば消えるだろうその温度を、ちゃんと思い出せるよう心に深く刻んだ。