嫉妬じゃないとのこと
クピディタース。
いつの頃からかそう呼ばれるようになった化物は、いきなり出現しては無軌道に暴れ回る。
しかし現状ではそれほど大きな被害は出ていない。
浄炎のエレスら、正義の変身ヒロインである『ロスト・フェアリーズ』。
神霊結社デルンケムに所属する全身装甲の戦士、メタル・ラヴィたち『メタル兵』。
ハルヴィエドの娘だという、未来からやって来た魔法少女たち。
多くの守護者により、被害が拡大する前に倒されているのだ。
同時に、近頃はハルヴィエドアンチスレの住民による考察が、ほぼ確定した情報としてネット上を流れている。
すなわち、
ボクっ娘な浄炎のエレスの娘が、格闘オレっ娘魔法少女まじかる☆ユエ。
クール系()な清流のフィオナの娘が、おどおど氷使い魔法天使らぶりー♡みそら。
幼ツインテの萌花のルルンの娘が、唯一妖精姫を名乗る策士然とした花嵐のアリス。
であるということだ。
ただしアンチたちでは理解の及ばない魔法少女もいる。
メタル兵の装備とどこか似たボディースーツをまとう金髪の、高校生くらいの少女──ジュリアレーテ・エフィル・セイン。
銀髪オッドアイに猫耳の、巫女装束に似た出で立ち。魔法少女猫ネッコ。
この二名に関しては、世間的にも何者か分からない、正真正銘のアンノウンだった。
「妾か? 妾は、父様の名誉を守るためにここにいる。故に、余計なことを語るつもりはない」
「秘密がイイオンナを作るにゃん」
戦闘終了後に記者が質問を投げかけたこともある。
ただ、みそらやユエほど簡単には応えてもらえなかった。……まあにゃんj民なら首領ちゃんや猫耳くのいちについて知っているので普通に何者か分かるし当たり前のようにハカセは弄られているが。
そして、ロスト・フェアリーズの少女たちも、なんだかんだデルンケム事情に詳しくなったので、ジュリアレーテたちの正体を察していた。
「おお、清流のフィオナか。今も若々しいが、昔はなんとも幼い印象を受けるものだな」
「……どうも」
なので、戦場でかち合うとちょー気まずかった。
おそらく同年代だろうに、ジュリアレーテはどこか大人びた雰囲気がある。金髪でスタイルもよく大人びた美貌の持ち主だ。
そのせいでフィオナの脳内で、稲光ように様々な疑問が広がり駆け抜ける。
(え、ヴィラ? どう考えてもヴィラの娘。なのにスタイルが……スタイルがすごい。もしかして、成長したらヴィラもああなるの? というか、晴彦さんとヴィラが結ばれる未来もある? それは、その。彼があの子をどれだけ大切にしてきたか知っているし、可能性で考えれば他の娘よりもむしろ高くはあるのだけど。もし、もし将来的にああいった風に成長したヴィラに迫られたら、え? 危険? 今とても私危険? ああ、違う。晴彦さんが浮気なんてするはずが……浮気せずにしっかり断ったうえで!? いえ、ない。絶対にありえない。こんな疑念を持つこと自体失礼だ。だけど、うん。頑張らなくては)
そこまで考えて、余計な雑念を振り払う。
こちらの事情はジュリアレーテには関係ない。背景を気にして接し方がおざなりになるのは、善い行いではないと思い直す。
フィオナは態度を改め、穏やかに話しかけた。
「ジュリアレーテ、でいい? ありがとう、貴女の援護のおかげで被害をほとんど出さずにクピディタース倒せたわ」
「なに、妾こそ。偉大な水の妖精姫の助力を受けられたのは幸運だ」
彼女は悪の女幹部といったボディースーツで、手にした鞭を振るって戦う。
近距離から中距離の直接戦闘を主にするジュリアレーテと、水の魔法により遠距離戦を得意とするオールラウンダーであるフィオナは存外相性は悪くなかった。
スーツも鞭もマジックアイテムのようだ。顔は隠れていないし軽装ではあるが、タイプ的にはメタル兵が近い。
となると、あれらはハルヴィエド謹製、ということなのだろう。
「うらやま、ではなく。貴女もハルヴィエド・カーム・セインの?」
「うむ。だが、母様の名は告げられん。なにせ、“結婚したという事実”自体が、母様の不利となるやもしれんのでな。……と、ネッコが言っていた」
なんかヴィラと違いカタくマジメな女の子かと思ったが、若干ポンコツな匂いがしないでもない。
もちろんツッコミはしないが。
「ただ、これくらいは伝えておこう。清流のフィオナ、母様は貴女を大事な友達だと公言している。それはきっと、他の未来でもそうだろう」
でも、きっと優しい子だ。
フィオナは素直に「ありがとう、私にとっても貴女のお母さんはとても大切な友人よ」と返した。
ジュリアレーテは大人びた表情を崩し、無邪気な笑みを見せてくれた。
◆
438:名無しの戦闘員
フィオナちゃんとジュリアちゃんの共闘、緊急ニュースで流れてた!
清楚系なフィオナちゃんと華やかな美少女って感じのジュリアちゃんの組み合わせ、同じ画面に映ってると綺麗さがもうすんごいの
439:名無しの戦闘員
ハカセの想い人と、ハカセが半生をかけて救った首領ちゃんの娘との邂逅か
なんというか感慨深いよね……ゲヒヒッ!
440:名無しの戦闘員
どう考えても感慨深いなんて思ってもいない笑い方じゃねえかw
441:名無しの戦闘員
ジュリアちゃんめっちゃスタイルいいし、けっこう強い
ポンコツ首領ちゃんよりしっかり者っぽい?
442:名無しの戦闘員
首領ちゃんの娘なんだろうけど正直けっこう印象違うよね
443:名無しの戦闘員
強い……強いか?
444:名無しの戦闘員
ジュリアちゃんはマッスル・グラヴィティ使えなさそう
445:名無しの戦闘員
そもそも基本のキン肉バスターを使えねえよ
446:名無しの戦闘員
鞭での戦闘はもろ悪の組織の女幹部って感じ
やっぱ首領ちゃんの娘だとそういう衣装になるのかな
447:名無しの戦闘員
>>444
言いたいこと分かる
基本的に子供世代って親の能力+その発展形の技、或いは独自能力みたいな感じ多いじゃん
でもなんて言うか、ジュリアちゃんに限らず他の魔法少女もフィオナちゃん達よりも大人しめというか
448:名無しの戦闘員
分かりやすいのは、まじかる☆ユエちゃんだよね
派手な格闘技と炎の組み合わせで見栄えはすごいけど、純粋な出力や身体強化の度合いで言ったらエレスちゃんの方がかなり上っぽく見える
なんだかんだ火球とかの飛び道具も使えるエレスちゃんと違って、ユエちゃんは本当に格闘一辺倒だし
年齢的な問題だからしょうがないのかもしれないけど、同年代のはずのジュリアちゃんや花嵐のアリスちゃんもそんなに飛び抜けた能力はなさそうに感じたな
449:名無しの戦闘員
弱いってわけでもなくね?
ポテトチップスのうすしお味とのりしお味程度の違いであって
450:名無しの戦闘員
待って? それどっちが上?
451:名無しの戦闘員
そりゃ青のりの分だけのりしおが上やろ
452:名無しの戦闘員
はー? 足引っ張るだけの青のりの分際でなにほざいてんの?
453:名無しの戦闘員
シンプルなうすしおの方が美味いンゴね
454:名無しの戦闘員
俺は梅かつお
455:名無しの戦闘員
白えびが好き
わりとチョコもあり
456:ハカセ
コンソメや
結局はコンソメに人は還る
457:名無しの戦闘員
だし醤油味イケるよ
458:名無しの戦闘員
流れるようにハカセw
459:名無しの戦闘員
>>452
お前のせいで451の発言青のりが書き込んだみたいになっとるやんけw
460:ハカセ
魔法少女たちがちょっと弱めっていうのはワイも同じ見解や
といってもロスフェアが10とするなら魔法少女は8~9くらいの微妙な差やけどな
461:名無しの戦闘員
そんだけ未来が平和なのかも
って言いたいがクピモンいるし何か色々噛み合わないんだよな、魔法少女ちゃん達
462:名無しの戦闘員
でもふりふりスカートが揺れて「ああ、もしかしてっ」っていう期待感は
ロスフェアちゃんたちでは得られない昂揚ンゴ
463:ハカセ
猛虎弁、社長代理であり父親のいる場で、お前はよくそんな発言ができるものだな?
464:名無しの戦闘員
純粋にこええw
465:名無しの戦闘員
ハカセ絶対子供が結婚相手連れてきたら「君にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!」とか言っちゃうタイプだよなw
466:ハカセ
相変わらずの場末のクソスレで安心や
それはそれとして娘たちを変な目で見る猛虎弁は反省してください
467:名無しの戦闘員
人(¯ω¯;) スマヌ……ンゴ
468:名無しの戦闘員
謝る気ねーぞこいつ
469:ハカセ
一応言っとくけど会社での立場を利用した罰則はないので
仕事とプライベートはきっちり分けてこそやしね
ってことで、今日は首領とルルンちゃんとお茶した時の話するでー
聞きたい人ー
470:名無しの戦闘員
はーい! 教えて美少女を侍らすことに定評あるハカセ!
471:名無しの戦闘員
聞きたい聞きたい! よっ、ロリコン!
472:名無しの戦闘員
お願いします!
そもそもフィオナちゃんの時点で十分ロリコンの範疇!
473:ハカセ
どう考えてもお願いって態度じゃない件
まあ話すけど
474:名無しの戦闘員
結局話したいのねw
475:ハカセ
まず前置きとして、首領が今中学三年生、ルルンちゃんが中学二年生
仲良く学校に通っとるんやけど、最近アニキがぐぬぬ率高い
476:名無しの戦闘員
なんだ、またあそこの兄妹仲違いしてんの?
477:名無しの戦闘員
微妙な経緯だけにわだかまりが残ってる感じ?
478:ハカセ
いやいや、そういうのでなくて
仲良いがゆえに発生する、兄的な悩みってやつというか
お前らは首領の容姿は知っとるやろ?
479:名無しの戦闘員
クッソ美少女!
480:名無しの戦闘員
ディオスのCM録画しましたが?
481:名無しの戦闘員
神秘的な妖精というか天使というか
そこらのアイドルとか目じゃないくらいの麗しさよね
482:名無しの戦闘員
俺、宣伝ポスター待ち受けにしとる
483:名無しの戦闘員
俺ら首領ちゃんの幸せを応援し隊を差し置いて今さらファンクラブとか立ち上げてる奴らがいて腹立つ
484:ハカセ
まあそんな感じやろ?
そんでルルンちゃんも可愛いわけやん
そんな二人が仲良く一緒に行動するんにゃ、寄ってくるよね悪い虫
心配だーってアニキがわりかしやきもきしとる
だからアニキからワイにそれとなく様子は見といてくれって頼まれたんや
なので隠密怪人ステルシアンを開発
アニキ、満足げに頷いていました
485:名無しの戦闘員
あれ? アニキやばいぞ?
それはそれとして「にゃ」になってる
486:名無しの戦闘員
最近にゃ勢多いからな
487:名無しの戦闘員
相変わらずの技術の無駄遣いよ……
488:ハカセ
しまった、ネッコちゃんや猫耳とご飯する機会増えたしなぁ
ユエちゃんとみそらちゃんともケーキしたで
489:名無しの戦闘員
えっ、なにそれ聞いてない!
490:名無しの戦闘員
なんだよハカセ、美味しそうなネタ隠してるやんけ
491:ハカセ
それも今回の話と絡んでくるんや
続きます