魔法少女の推測のこと
偶の休みの日、ハルヴィエドは自室でくつろいでいた。
といってもデルンケムの異次元基地ではなく、葉加瀬晴彦として契約したマンションの部屋だ。
今日は彼の大切な人である、神無月沙雪も遊びに来てくれている。
ソファーにちょこんと座る沙雪を後ろから抱きしめる形で、二人のんびりと午後の時間を過ごす。
伝わる体温が心地よく、時々お互いじゃれ合う。
しばらく和やかな触れ合いを繰り返していたが、思い出したように沙雪が出した話題にハルヴィエドは顔をひきつらせた。
「ね、ハルヴィエドさん?」
「どうかした、沙雪ちゃん?」
「……魔法少女まじかる☆ユエ」
「うっ」
どうやら沙雪も「ハルヴィエドの娘」を名乗る魔法少女について知ってしまったようだ。
件の炎属性打撃系オレっ娘魔法少女は連日SNSやネットニュースを騒がせている。
他の魔法少女もハルヴィエドの娘を名乗っているが、一番派手なのはユエだ。
「あの子のお母さんは炎の力をくれたそうですよ?」
普段は冷静な沙雪がぷくーと頬を膨らませている。
指で突くと、ふしゅると空気が抜けた。すると怒った沙雪はハルヴィエドの手の甲に口付けて、少し強めに吸う。手の甲にはしっかりとキスマークが残っていた。
「ここで、私には覚えがない! と突っぱねた方がいいものかな?」
「そういう人ならここまで好きになっていないです」
そう言って今度はハルヴィエドにもたれかかる。
多少の不満はあるが、怒ってはいないようだ。
「ごめんなさい、いじけるのはここまでにします。……月夜の妖精リーザに確認を取りました。まじかる☆ユエや他の魔法少女からは、妖精の気配は感じられないと。あ、花嵐のアリスを名乗る少女からは反応があったそうです」
しかしそれも訪れの妖精メイではないという。
またリーザが言うには『少し、普通の妖精とは気配が違う』とのことだ。その違和感はハルヴィエドや萌も感じている。アリスの契約している妖精は、普通とは若干異なる存在なのだろう。
「他の子達は魔霊変換器による魔法の行使か? いや、未来からとすると別系統の技術が発展している可能性もあるな」
「未来からというのを、信じているんですか?」
沙雪が意外そうに言った。
「というより、金と時間に糸目をつけず人道を無視して、装置の小型化を考えなければ、おそらく私でも疑似的な時間跳躍装置は作れる。現状でも次元間移動は可能だから、理論上は応用できるはずだ」
「だとすると、あの子達は本当に?」
「その辺りは未来をどう定義するかによるな」
例えば彼女達は同じ未来から過去に戻ったのか。
それとも枝分かれしたいくつもの未来の一つ、並行世界からの来訪者なのか。
また彼女達という未来の存在がいる以上、矛盾を起こさないために未来が確定してしまうのか、など。
いくつか推論を頭に描くが、結局正確なことは分からず仮定はここ棄却される。
悩み込むハルヴィエドの腕にそっと触れた沙雪は悪戯っぽく微笑んだ。
「……たとえば、未来がどうなるか。魔法少女が産まれてくるのか、ここで試してみますか?」
「さっ、沙雪ちゃんっ!?」
「にへへ、冗談です」
年下に思い切りからかわれてしまった。
動揺するハルヴィエドが面白かったのか、沙雪は上機嫌だ。
しかしそのタイミングで、スマホから電子音が鳴る。どうやら緊急速報が入ったようだ。
その内容は……。
【新たな“ハルヴィエドの娘”が現れる! 今度は銀髪の猫耳魔法少女?】
「ハルヴィエドさん?」
「ちゃうねん」
なにもしてないのどんどん窮地に追い込まれていくハルヴィエドだった。
◆
440:名無しの戦闘員
なんかハカセのアンチスレできたみたいだな
441:名無しの戦闘員
ああ、【クソたらし】ハルヴィエドアンチスレ【ハーレム野郎】?
442:名無しの戦闘員
しゃーない
443:名無しの戦闘員
勘のいい奴はユエちゃんの母親は未来のエレスちゃんじゃ? って騒いでるからな
444:名無しの戦闘員
俺もハカセのこと知らんかったら多分アンチスレの方に行ってるわ
445:名無しの戦闘員
とりあえず今のうちにまとめといた
<魔法少女まじかる☆ユエ>
炎の打撃系オレっ娘魔法少女、12~13歳くらい?
フリル全開なスカート、顔立ちは美人系
髪の毛は桃色、肩くらいまでのセミロング
「父ちゃん」呼び、ママはエレスちゃん?
<魔法天使らぶりー♡みそら>
氷の薄布ドレスなオドオド魔法少女、12~13歳くらい?
ステッキと氷の魔法で戦う純正魔女っ娘
水色のロングヘア、気弱そう
「パパ」呼び、ママはフィオナちゃん?
<花嵐のアリス>
白を基調・銀の装飾な背中丸出しレオタード、14~15歳くらい?
たぶん衣装的にロスフェアちゃんと同じ妖精姫
ショートカットのクール系?
花弁と風、あと自作っぽいマジックアイテムで戦ってた
「父さん」呼び、ママはルルンちゃん?
<ジュリアレーテ・エフィル・セイン>
漆黒のマントと強化服みたいなのを着た女の子、17~18歳くらい?
意匠的にはLリアちゃん達の魔導装甲が近い
ウェーブ・腰までの金髪のとびっきりの美人さん
容姿もカラダも一番大人な感じ
「父様」呼び、ママは首領ちゃん?
<謎の魔法少女猫ネッコ>new!
冗談じゃなくホントにこう名乗ってた
銀髪オッドアイの猫耳少女で、15~16くらい?
白黒の改造ミニ巫女装束みたいな感じ
長めのゆるふわ銀髪、ちょっと釣り目気味
「パパ」呼び、ママはどう考えても猫耳くのいち
446:名無しの戦闘員
乙
447:名無しの戦闘員
とりあえず未来が大変なことになってるのは分かった
448:名無しの戦闘員
まあ、ママに関してはあくまで俺らの想像の域は出ないんだが
だから確定するまでは「?」はつけとくね
449:名無しの戦闘員
正直俺らからしたらそうとしか思えない特徴ががが
451:名無しの戦闘員
猫耳ちゃんの娘がネットに毒されとる
452:名無しの戦闘員
全員ハカセの娘を名乗ってるけどあれか、ハーレムか?
童貞のくせに
453:名無しの戦闘員
ルルンちゃんを孕ませるとか鬼畜の所業よ
454:名無しの戦闘員
んー、俺はまだ疑ってんだよね、未来からってこと自体を
だってさぁ、まじかる☆ユエちゃんは「18年後の未来」から来たんだろ?
でも首領娘ちゃん、どう見ても18歳前後じゃん
ハカセがあと一年かそこらで首領ちゃんと関係を持つなんてあり得るか?
455:名無しの戦闘員
別の未来から来たのでは?
エレスちゃんルートendで生まれた娘がユエちゃん
フィオナちゃんルートendで生まれた娘がみそらちゃん、みたいな
456:名無しの戦闘員
そうなると、なんで同じタイミングでやって来て
全員目的が「クピモン倒す・ハカセを救う」になるのかって話だよな
457:名無しの戦闘員
どのルートを辿っても未来のハカセはピンチになって、その原因が現代にある、とか?
458:名無しの戦闘員
引っかかるのがハカセを救うってところ
未来ってのが本当だとして、何が起こるのか
459:名無しの戦闘員
魔法少女ちゃんは過去改変が目的
で、クピモンも倒す
クピモンがすげーヤバい化物ってこと?
LリアちゃんどころかI奈ちゃんでも倒せてるから、あんまり脅威には見えん
460:名無しの戦闘員
そもそもの話、過去改変って出来るの?
過去を変えて未来を変えたら過去に来る理由がなくなるじゃん
461:名無しの戦闘員
なに言ってんだ?
462:名無しの戦闘員
パラドックスの話か
463:名無しの戦闘員
タイムトラベル的には避けられないわな
464:名無しの戦闘員
まったくだ(汗
465:名無しの戦闘員
あー、パラドックスね
高校の時よく食べたわ
466:名無しの戦闘員
こいつら……
467:ハカセ
うーっす、お疲れー
468:名無しの戦闘員
おー、ハカセ
今日は遅かったな
469:ハカセ
あ、聞きたい?
フィオナたんとぉ、ゆっくりディナーしちゃったりしとったからなぁ
まあちゃんと門限までには家に送っとるけど
470:名無しの戦闘員
いちゃつきやがって……
471:名無しの戦闘員
お前ユエちゃんはどうすんだよ
472:ハカセ
いや、そこはほんまにどうすりゃええんやろね
473:名無しの戦闘員
そうだ、ちょうどいい
ハカセは、過去改変は出来ると思う?
てかタイムトラベルは可能なの?
474:名無しの戦闘員
いや、そりゃできるだろ
実際魔法少女ちゃんたちが来てるし、その時点で過去は変えられるじゃん
475:名無しの戦闘員
実はワイもイマイチ分かってないンゴ
ハカセ社長、説明求む
476:ハカセ
ああ、パラドックスの話?
タイムトラベルにおける有名なのは【親殺しのパラドックス】やね
ちょっと連投するからレス控えてもらえる?
477:ハカセ
<問1>
タイムマシンで自分が生まれる前より前の過去に戻ったAくんが自分のパッパとマッマを殺しました
さて、Aくんはどうなりますか?
1.マッマから産まれてくるはずだからAくんは生まれない! 即座に消滅!
2.Aくんが産まれる以上過去は変わらない。何やってもマッマは死なない
3.Aくんを起点に「いる未来」と「生まれなかった未来」に分岐する
3はマッマが死んだ世界の先に「生まれなかった未来」がやって来ても、「いる未来」が消滅するわけじゃないのでAくんも消えないって論法や
でも1の答えが正解だとすると、
Aくんがマッマやっちゃう→Aくん生まれない→Aくんいないならマッマ氏なないやん!→マッマがAくん産んじゃう→成長したAくんがマッマやっちゃう………
過去改変を行うことによって発生する、この堂々巡りが親殺しのパラドックス
でもこれって実は、Aくんが産まれるかどうかが重要やないねん
こういったパラドックスを世界が嫌うなら、そもそも「時間を遡る行為」に人類は到達できないのでは? ってのが主題になる
478:ハカセ
じゃあ次は今回のテーマ【複数魔法少女の倫理矛盾】
これはパラドックスとは微妙にちゃうから、こういう名前にしてみました
分かりやすくするために、ひとまずユエちゃんを例に取り上げるわ
<問2>
銀髪天才イケメン・ハカセくんはフィオナたんが大好きです
結婚したいし、新婚旅行は海の見えるホテルに宿泊予定です
ですが未来からまじかる☆ユエちゃんが「父ちゃんを救う!」とやってきました
彼女がいる以上、未来のハカセくんとエレスちゃんの間には子供が生まれています
さて、ハカセくんがフィオナたんにベタ惚れな状態から、ユエちゃんはどうやって現代にきたのでしょうか?
※(ただしハカセくんの手の甲にはフィオナたんのキスマークがあるものとする)
1.ユエちゃんが観測された以上、ハカエレの間には必ず娘が生まれる
2.未来は既に「ユエちゃんの誕生する未来」と「誕生しない未来」に分岐している
3.そもそも過去改変は不可能で、ワイとエレスちゃんが結ばれる未来こそが正史
4.未来どうこうは全部嘘でーす!
ここで重要なのはユエちゃん達の誕生や
現時点で、ワイはフィオナたんと結婚するつもりや
つまりこの未来の先で、ユエちゃんは誕生しないはず……
にも拘らずユエちゃんの産まれた未来が観測されたということは
ワイのフィオナたんへの恋心が消えてエレスちゃんと結ばれるのが確定するということ?
でもあの子の存在によってエレスちゃんと気まずくなって、ユエちゃんが産まれなくなったら?
シンプルに考えれば、未来の子供が過去に来る→過去の先で必ず誕生する、という構文が成り立つ
観測された未来は人の心にも影響を及ぼすのか?
つまり、
【観測された未来と過去が相反する場合、過去はその未来に沿うよう改変されるのか?】
って話や
答えは分からんとしか言いようがないわな
479:名無しの戦闘員
5.フィオナちゃんと結婚しつつ、エレスちゃんと浮気してた
480:名無しの戦闘員
6.実は未来がハーレムで確定してる
481:名無しの戦闘員
ハカセ、お前は基本的なことを見落としている
いいか、そもそもの話だ
お前がフィオナちゃんが好きで、結婚して娘が生まれる
それとエレスちゃんを好きになって、二人の間に子供がいる
この二つに矛盾は起こらない
482:名無しの戦闘員
色んなパターンが考えられるからな
フィオナちゃんとの倦怠期にエレスちゃんに誘惑されて子供が出来たとか
そもそも二股かけてたとか
重婚とか托卵とか可能性はいくらでもあるじゃん
483:ハカセ
7.ワイへの信頼度が低すぎる
484:名無しの戦闘員
でもそう言われると、ユエちゃん達ってそれぞれ別の未来からやってきたって考えた方が自然だよな
485:ハカセ
各々別の未来からの来訪は、過去を改変しても未来が修正されないことの証左や
ユエちゃんが何をしても分岐した「新しい未来」が生まれるだけ
なら、ワイやママを救うって宣言はどうなん? って話になる
たとえばユエちゃんの未来でワイがすっごい不幸で、過去改変して救ったとする
でもそれは新たに【ワイが救われた】未来が生まれるだけ、ユエちゃんのパパが救われるわけやない
そういう意味で、過去改変は出来る状況と出来ない状況がある、としか答えようがない
【複数の魔法少女が「未来を変えに来た」と発言した時点で、未来を変えられる可能性はほとんどなく、来たこと自体に矛盾が発生する】
それが複数魔法少女の倫理矛盾
だから魔法少女の目的が今一つ想像しにくい
486:名無しの戦闘員
未来がとんでもなく酷い状況だから「せめて他の世界では幸せに」と願った……とか?
ブルマ理論
487:名無しの戦闘員
だったら示し合わせたように他の娘が出てきた意味が分からんぞ
488:名無しの戦闘員
過去改変で未来が変わるのか
それとも別の未来が生まれるのか
このどちらかによって魔法少女ちゃん達がどういう存在かも変わってくるわけか……
489:名無しの戦闘員
ごめん、よく分からん
理論どうこう関係なくあの子らは今いる訳じゃん
ハカセは何を気にしてんの?
490:ハカセ
そこはワイの行動によってあの子達が消えるかどうかの話や
分岐した未来からの来訪者ならワイが何してもあの子らは消えん
でも現在から行き着く未来の逆行者なら下手を打つと「産まれない可能性」が出てくる
まあ九割がた分岐した未来からそれぞれやってきたんやと思うけどな
そうなると、ワイを救うってのがちょっと分からんくなる
何を気にしているかって言うと「なんか違う目的があるのでわ?」ってとこやね
あとはクピモンとの関係性を早めに知りたい
たぶん未来由来モンスターやとは踏んどるけど
491:名無しの戦闘員
あー、魔法少女ちゃん達はクピモン退治を表明しとるもんな
492:名無しの戦闘員
でもなんか悪意とかはなさそうに見える
493:ハカセ
ちなみにワイらの次元でもここら辺の議論は長くされとる
ただウチだと多元世界収束説が一般的やからな
494:名無しの戦闘員
あ、前に話してたやつ
世界には正しい形があって、最終的にはそこに収束するだっけか
495:ハカセ
うん、そう
だからウチの次元だとタイムパラドックスへの回答はこうなる
「世界はどうあっても自分が望む形に戻ろうとする。タイムトラベルを行い過去が改変されても、観測者が未来に戻った時点で状況は元に戻っている」
親殺しのパラドックス的に言うと
マッマを殺して未来に戻ったら、マッマが生きとる訳や
神霊工学が発達した文明やからな
辻褄合わせの手段が多すぎるが故やね
496:名無しの戦闘員
世界の修正っていう奇跡が普通に起こり得ちゃうのね
497:ハカセ
そ、奇跡は起こる
ってことは、ワイの仮定が全て間違いで“都合の良い過去干渉が可能な技術”が未来では生まれとる可能性もある
そこまで考えると何でも言えてしまうから仮定の意味がなくなってまうけどな
まあ長々語ったが、ワイは決定的な情報が出るまで単純に並行世界からの来訪者と捉えるわ
もしワイが○○ちゃんと結ばれたら、で生まれた自分の娘や
理論に固執して自分の娘だと認めないのは、あの子らを傷つけることになるかも知らん
498:名無しの戦闘員
無難だがそれがいいかもな
499:名無しの戦闘員
めちゃ雑にまとめると
複数の娘がいる→ハカセはフィオナちゃんが好きなのでそれはおかしい
→ということは並行世界がある→並行世界があるなら過去改変しても意味ないじゃん!
って感じンゴ?
なるほど、これは確かに魔法少女ちゃん達の発言がまるごと変やね
でもカワイイから悪い子ではないのは間違いない……
500:名無しの戦闘員
俺もそれでいいと思うぞ
パラドックスとか矛盾とか全部放り投げて「ワイの娘や!」の方がハカセらしい
501:ハカセ
で、さっそく問題発生
エレスちゃんから「まじかる☆ユエちゃんと会いました。助けてください」ってメッセージが入りました
色々やりとりした結果、明日にユエちゃんと直接会うことになりました
501:名無しの戦闘員
ユエちゃん行動早すぎない!?
◆
その夜、結城茜は浄炎のエレスとしてクピディタースという化物と戦った。
数は多かったがデルンケムの怪人やリリアたちメタル兵に比べると弱く、それほど手こずらなかった。
加えて今回は途中から協力者もいた。
「くらえ、まじかる☆鉄山靠……!」
炎を身にまとい、背中からぶつかる体当たりでクピディタースを吹き飛ばす。
茜が複数の敵を相手にしていると、最近話題のまじかる☆ユエが遅れてやってきた。
その流れで共闘することになったのだ。おかげで殆ど時間をかけずに全員を倒すことができた。
「ありがとう、おかげで助かったよ」
茜がお礼を言うと、ユエは何故か小刻みに震えていた。
あれ、どうしたのかな。
不思議に思っていると、いきなり少女が大声で叫ぶ。
「か、母ちゃんが若えええええええええ!?」
………………………………はい?
「えっ、若っ!? いや、母ちゃん普通に若いけど! ほんとに変身ヒロインやってたんだ! いいなー、オレもフリフリスカートよりそっちの衣装のがいい!」
なんかすごいテンションなユエちゃん。
そう言えばこの子、ハルヴィエドの娘だと言っていたような。
あれ? ということは、母ちゃんって……
「え、あの。え?」
「あ、そっか。まだ名乗ってなかったっけ。ちょっとこっち来て!」
手を引っ張られて、人目のないところまで連れてこられる。
そうしてユエは変身を解き、魔法少女から普通の女の子に戻った。
「改めて、オレは葉加瀬夕映。父ちゃんの名前はハルヴィエドと、そんで母ちゃんの名前は茜! 若い頃の母ちゃんに会えて、不思議だけど嬉しいぜ!」
そう言った夕映はすごく嬉しそうに胸を張った。
アタマがパンクしそうだった茜は即座にハルヴィエドに助けを求めた。
ヴィラベリートの気持ちが今なら分かる。
自分の処理能力の限界超えたらハルヴィエドに全部を任せたくなるよね。