ドラフトのこと
さて、これは首領セルレなる者が街を襲った時の話である。
昼下がり、大城零助は仕事に精を出していた。
喫茶店ニルは高校の近くにあるため一番忙しいのは平日の夕方頃だ。休日はのんびりとお茶を楽しむお客様が多く、ゆるやかな時間が流れている。
それをほんの少しだけ物足りないとも感じる。
零助には────ゼロス・クレイシアには『きょうだい』がいる。
義父であるセルレイザの実子、ヴィラベリート。
仲の良い家族だったはずなのに、いつの間にか諍いは増え、ついには組織を追放された。
異空間にある基地に出入りするには転移装置と許可証が必要だ。その両方の機能を併せ持つハル謹製のマジックアイテムを没収された今、ヴィラに会いに行くことはできない。
恨みはない。ただ、わずかな後悔がある。
本当にあの子を想うのなら、みっともなくても統括幹部の地位にしがみ付くべきだったのでは？
しかしゼロスは喫茶店のマスターに収まった。
組織の維持が、先代のための侵略がヴィラのためになるとは思えなかった。だから彼はヴィラへの助力を拒否したのだ。
反対にハルは残った。
息の詰まる上層で生きてきた彼は、ヴィラの無邪気さに救われた部分がある。そのせいか、あの子に対してはとことん甘い。
それでなくとも激重感情なハルだ。裏切るなんて考えてもいないだろう。
義兄としての役割を放り出したゼロスにとってはそれが眩しく、背負い込み過ぎるハルが心配にもなる。
それはそれとして、ヴィラベリート・ファースト写真集【ふぉー・でいず】が郵送されてきた時はめまいがした。
中身は、日本の文化を楽しんだり勉強に勤しむヴィラの写真だった。
近況を知らせてくれるのは嬉しいがなぜ写真集にしたのか。もちろん保存用に追加で一冊頼んでおいた。
『ヴィラ首領のことはお任せを。二人とも、冷静になるには時間が必要でしょう』
組織を離れる際にハルはそう言ってゼロスを送り出した。つまるところ自分もヴィラも、あいつに甘えているのだ。
「ねえマスター、見て見て！」
少しぼーっとしていたらしい。
女性客に手招きをされたゼロスは零助に戻り、そちらに意識を向けた。
「今、緊急生放送をやってて、街が大変なことになってるみたいですよ！」
スマホに映った映像は神霊結社デルンケムによる襲撃だ。
怪人や魔霊兵はそこらで暴れ回り、ロスト・フェアリーズに倒されるのが定番の流れ。
ただ、今日はいつもと様子が違った。
──そこはかとなく義父さんっぽい六本腕の化け物が、結城さん達と対峙していた。
『我らの大切なモノを奪おうとする悪女め。おぬしの悪行はお見通しなのじゃ』
『なんですかさっきから！ あ、あなたたちの方が侵略者でしょう！』
『う、うるさい！ お前なんかの好きにさせるか！ えーと、ばーか！ ばーかばーか！』
加えて神無月沙雪と言い争っている。声は超野太いが、どう考えても喋っているのはヴィラである。
ああ、これ知ってるわ。
ＰＰシステム──疑似憑依システムといって、以前ハルが研究していたものだ。
あたかも憑依したかのように対象の五感をジャックして体の動きまで掌握してしまう、倫理観を軽く無視した技術である。
おそらくそれの応用で怪人を遠隔操作する方法を生み出したのだろう。
『バカを抜かすな！ ハルヴィエドを手放すなど有り得ん！』
興奮しているせいか、ヴィラは恥ずかしいセリフを町中で叫ぶ。
その姿を見て小さく息を吐く。
「……お兄ちゃん、お前が元気で嬉しいぞ」
すごく微妙な気分で、少し寂しくもあるけれど、なんだかんだまっすぐに育っているようだ。
◆
432:ハカセ
やめて！ ワイのために争わないで！
433:名無しの戦闘員
いきなりふざけたことホザいてんぞこのポンコツ
434:名無しの戦闘員
ちょっとフィオナちゃんとイイ感じだからって調子乗ってんな
435:ハカセ
あ、いや、なんかすんません。
実はマジでそういう状況が起こってしまいまして……
436:名無しの戦闘員
ついにエレスちゃんとフィオナちゃんがハカセを取り合ってガチバトルを⁉
437:名無しの戦闘員
修羅場？ 修羅場った？
438:名無しの戦闘員
首領ちゃんとか猫耳ちゃんとかマジで争いそうなのがまたね
439:名無しの戦闘員
＞＞４３６
エレハカ女自重
440:ハカセ
つい先日のことや
ワイはお散歩がてら郊外のレジャーホテルを見物に行った
なんでもバブル時代とかいう頃に建てられたけど人気がなくて放置されたんやと
そらちょうどいいってことで怪人と魔霊兵を置いて実効支配することにした
441:名無しの戦闘員
散歩がてらに侵略すんのやめてもらえる？
442:名無しの戦闘員
もしや廃園になった遊園地とかもその気軽さで奪われたんだろうか
443:ハカセ
そんで実際ホテルを手に入れてしばらく
Ｌリアちゃんが建物のオーナーのＳＮＳを見つけて報告してくれたんや
『これは助かった。処分に困っていたホテルをデルンケムが奪ってくれた。結果、手放すための手続きがうまくいきそうだ。ハルヴィエドには感謝しかない』
……おかしない？
444:名無しの戦闘員
あー、売ることもできずただ税金払い続けてただけの建物を事実上放棄できたのか
さすがに悪の組織に占拠されたら所有権も認められないだろうし
……この場合ハカセが固定資産税払うのか？
445:名無しの戦闘員
実効支配だと聞こえは悪いけど実質廃墟の再生だからなぁ
446:ハカセ
なんか侵略感がなくてイマイチ不完全燃焼……。
＞＞４４４
ぜいきん？
ワイ異次元人やからなんのことか分からんわー（棒
447:名無しの戦闘員
まさに悪
448:名無しの戦闘員
なんだ侵略感てｗ
449:名無しの戦闘員
会社立ち上げてる時点でその言い訳は通用せんわｗ
450:ハカセ
大事なのはなんやかんやで新しい建物を得たってところ
そんでまた別の日、仕事が思ったより早く片付いたんでどうしようかなーってところでアニキから連絡がきた
『ちょっと付き合わないか、ゴリマッチョも呼んである』
久々に男だけでどうだ、みたいなお誘いやった
451:名無しの戦闘員
┌（┌ ＾o＾）┐「突き合わないか？」
452:名無しの戦闘員
なんかやべえ呻き上げてるヤツがきたぞ⁉
453:名無しの戦闘員
ここはそういう場所じゃねえから！
454:名無しの戦闘員
むしろハカセハーレムだ！ 腐海に帰れ！
455:名無しの戦闘員
┌（＾o＾ ┐）┐「サヨナラ……」
456:名無しの戦闘員
ふぅ……被害が出る前に去ったか……
457:名無しの戦闘員
なんだこの茶番ｗ
458:ハカセ
そもそもワイのハーレムじゃないんですがねぇ……
ともかく、時間はまだ午後の三時
ワイ・アニキ・ゴリマッチョの三人はスーパー銭湯に行くことになった
せっかくホテル手に入れたし浴場のリサーチをしつつ昼風呂で疲れを癒そうって寸法や
459:名無しの戦闘員
いいなぁ、近所にないんだよねスーパー銭湯
460:名無しの戦闘員
俺も行ったことねえや
461:名無しの戦闘員
ここ五年くらい家を出たことないンゴ
462:名無しの戦闘員
せめて外出ろニート
463:ハカセ
三人で露天風呂にちゃぽーん
アニキ「ふぅ、気持ちいい……」
ゴリマ「偶にゃぁこういうのも悪くねえなぁ」
ワイ「まったくや。疲れた体に染みるわぁ」
ワイも初めてやけどええもんやなぁ
ちなみに露天風呂は貸し切り状態や
そらそやわ、ゴリマッチョは二メートル二センチのガチムチで全身傷だらけやからね
恐がってだーれも近寄ってこん
464:名無しの戦闘員
マジモンの戦場で生きてきた男だもんな
465:名無しの戦闘員
それ言ったらハカセもアニキもそうだろ？
466:ハカセ
ワイもかなり鍛えとるけどさすがにアニキたちには敵わん
ちなみにアニキは一八七センチ、実戦で鍛えたしなやかな筋肉をしとる
ワイは一八八センチの細マッチョ
調子乗った大学生みたいな奴らが集団でやってきたけど
ワイら見た瞬間顔引きつらせて帰ってくレベルのスリーマッチョや
467:名無しの戦闘員
大学生くんたちかわいそう……
468:名無しの戦闘員
地味にアニキの方が小さいの
469:名無しの戦闘員
ワイルド系の男前でカラダの方も筋肉質なアニキマジアニキ
470:名無しの戦闘員
組織最強の男は伊達じゃないな
471:ハカセ
アニキ「岩盤浴って本当に気持ちいいんだろうか」
ワイ「どうなんでしょう？ 砂風呂とかも妙な感じしますよね」
ゴリマ「ハカセ、次はジャングル風呂行こうぜ。ゴリラの血が故郷を求めてる」
ワイ「それ自分で言っちゃうの？」
和やかな入浴タイム
せくしーや猫耳にゃ悪いが男同士ってのも楽しいもんや
ちなみにゴリラはなぜか異次元でもゴリラ・ゴリラ・ゴリラです
472:名無しの戦闘員
ゴリラってすげぇんだな
473:ハカセ
そんな感じで色んなお風呂を堪能する
今回は夕食前に解散なんで酒もナシや
幹部唯一の既婚者ゴリマッチョを毎回晩飯に連れ出すわけにもいかんしな
ゴリマ「アニキ様は、せくしーやＡ子とはまだなんですかね？」
アニキ「いや、うん。なんで二人とも娶る前提なんだろう」
ワイ「しゃーない」
ゴリマッチョ的には未だに結婚していないのが不思議な模様
たじたじアニキを、ワイはわくわくしながら眺めとった
アニキ「それを言うならハカセだってそうだろう？」
……が、なんとアニキが切り返してきた
474:名無しの戦闘員
おっと、アニキの反撃
475:名無しの戦闘員
そりゃフィオナちゃんとのデートでも何度かアニキの店使ってるんだもん、そうなるて
476:ハカセ
しかもゴリマッチョが食いついてきた
ゴリマ「おー、そりゃそうだ！ ハカセもいい加減伴侶を得なきゃな」
アニキ「だろう？ 似合いの相手もいるんだ、そろそろ覚悟を決めるべきだな」
あれれー？ アニキにだけは絶対言われたくないセリフだー
ゴリマ「さすがアニキ様、分かってらっしゃる！」
アニキ「まあ大事な弟分だ。将来をちゃんと考えてほしいとは思うさ」
ゴリ「まったくです。そう……」
そうして二人は同時に、ものっそい笑顔を浮かべる
477:ハカセ
アニキ「フィオナさんと猫耳、とのことをな」
ゴリマ「首領とのことをな！」
二人してなに言ってんの？
478:名無しの戦闘員
ゴリマッチョまさかのハカのじゃ派ｗ
479:名無しの戦闘員
ちゃんとハカセの内心察してるのな
ついでに猫耳ちゃん推してくるあたりアニキぃ！
480:名無しの戦闘員
義妹嫁！ 義妹嫁！
481:名無しの戦闘員
このスレだと首領ちゃんは女の子派が主流
つまりゴリマッチョも( ´∀｀)人(´∀｀ )ナカーマ
482:ハカセ
ん？ と首を傾げて目を合わせるゴリとニキ
ゴリマ「待ってください、アニキ様。何を言ってるんで？」
アニキ「いや、そっちこそ何を言ってる？」
ゴリマ「だからハカセの将来のパートナーの話ですよね？ つまり首領の話ですよね？」
なんで？
ゴリマ「ほら、首領にも支えてくれる人が必要だと思いません？ ハカセは適任だと思うんですがね」
アニキ「それはハカセの意向を無視している。猫耳とフィオナさん、最低二人は妻にするべきだ」
いえ、アニキもだいぶ無視していますが？
483:名無しの戦闘員
これは確かにワイのために争わないでだわｗ
484:名無しの戦闘員
頑張れアニキぃ！
485:名無しの戦闘員
そこだ押せ！ アニキぃ！
486:名無しの戦闘員
アニキ、ここぞとばかりに攻めてきたなｗ
487:名無しの戦闘員
かなり変則的だけど修羅場と言えなくもない
488:ハカセ
ゴリマ「猫耳くのいちはともかくフィオナって誰ですか？」
「悪いが、そんなぽっと出の女にハカセはやれねえですよ」
ゴリマッチョはどの立ち位置から話してんの？
アニキ「フィオナさんはハカセの想い人だ。まだ友達みたいだが」
ゴリマ「なんてこった。まさか、こいつが首領以外に惚れるだと……⁉」
え？ どういう驚き方？
ゴリマ「だってお前、基本的に女を押し出す女が苦手じゃねーか」
くそう、ワイに対する理解度が高い……！
489:名無しの戦闘員
さすが親友だなｗ
490:名無しの戦闘員
そういう意味じゃ現時点では性別のない首領ちゃんって
もしかして一番ハカセに対して警戒されない存在？
491:名無しの戦闘員
ゴリマッチョやるじゃん
492:ハカセ
アニキ「フィオナさんは外見的に反して中身が男前だからな。ハカセ好みの子だよ」
ゴリマ「ハカセに好きなヤツができたってんなら、めでたい。ですがアニキ様、ご家族がかわいくないので？」
アニキ「もちろん首領は大事だ。だがハカセだって俺の弟分だ。こいつの初恋を捻じ曲げてまで、というのはな」
あれ、フィオナたんがワイの初恋だってバレてるの？
アニキ「だからゴリマッチョ、そこは素直に応援してやってほしい」
ゴリマ「いやいや、捻じ曲げませんて⁉ ただ結婚してから育む愛だってあるはずです！ 年齢がネックなだけで、ハカセが首領を好きなのは間違いないですし！」
アニキ「……つまり？」
ゴリマ「夫婦自由婚姻制度ってこういう時のためにあると思うんです。だからアニキ様も猫耳の名をあげたんでしょう？」
アニキ「……その通りだ！」
ごめん、ゴリマッチョの中のワイの将来ってどうなってるの？
アニキもその通りだやないです
493:名無しの戦闘員
ツッコミどころが多すぎるｗ
494:名無しの戦闘員
ゴリマッチョって意外と周りをよく見てるね。私ちゃん的にちょっと高評価。
495:ハカセ
ゴリマ「なんで、俺的にはこれ」
「ハカセの好みも考慮しますが、付き合いの長さ的にはこうなるんじゃねぇかと」
→【第一夫人】首領 【第二夫人】猫耳くのいち 【第三夫人】フィオナ
アニキ「なるほど、では俺はこうだ。二人は両想いだしな」
→【第一夫人】フィオナ 【第二夫人】首領 【第三夫人】猫耳くのいち
な ん で ド ラ フ ト 形 式 ？
三人目まで娶れってことやろうけどアニキもゴリマッチョも一夫一妻派ですよね？
496:名無しの戦闘員
結局アニキも首領ちゃん推しｗ
497:名無しの戦闘員
意外とノリいいぞこいつら
498:名無しの戦闘員
飲み会の時点でそれはそう
499:ハカセ
ゴリマ「お？ なんだ、アニキ様も分かってるじゃないすか！」
アニキ「ハカセは首領のカラダの面倒をみてるらしいからな」
ゴリマ「なんだと⁉ おいおい、そこまで進んでんのかハカセ！」
アニキ「首領の方も手放さないとは言っていたぞ」
めっちゃ嬉しそうゴリマッチョ
めっちゃニヤニヤアニキ
あ、これいつもの仕返しにワイをからかいにきとるだけや
500:名無しの戦闘員
Ａ子ちゃんとせくしーさんのことでさんざん弄られとるからな
ハカセのインガオホー
501:名無しの戦闘員
アニキも前の緊急生放送みたんか
502:名無しの戦闘員
今さらだけど首領のカラダをって字面最悪だなｗ
503:ハカセ
そんな感じでワイ弄りは風呂を出るまで続いた……
ゴリマッチョはわりと本気だったけど、アニキの方は冗談みたいなもんや
お詫びとして今度アニキの手作りケーキをもらうことになったわ
ゴリ「アリだと思うんだがなぁ、首領と」
なんだかんだ、アニキもゴリマッチョも個人としては首領のこと好きなんやで
どっかで和解の機会を設けられたらええな
504:名無しの戦闘員
ゴリマッチョの場合組織としてのトップはアニキの方が良かったんだろうな
505:名無しの戦闘員
アニキが首領になってハカセと首領ちゃんが結婚、みたいな形がゴリマッチョの理想なんかも
506:名無しの戦闘員
今さらだが、幹部の強権発動でアニキを首領にした方が良かったんじゃね？
古参に気を遣ったせいでこの現状じゃ先代も報われん
507:ハカセ
アニキも首領が組織を継ぐことに賛成した、ってのがデカかったわ
先代に拘っとるのはアニキも変わらん、たぶんワイもな
さて、これが先日の「やめて！ ワイのために争わないで！」事件や
なっかなかのレベルで弄られまくったわけやけど…………せくしー！
508:名無しの戦闘員
？？？
509:せくしー
はい、こちらに
510:名無しの戦闘員
ほんまにおったｗ
511:ハカセ
ワイ、アニキに複数の妻を娶れ的なことを言われたわ
全力でお願いします
512:せくしー
お任せあれ
弟分に勧めたのであれば、ご自身も覚悟を決めたということですからね
「ハカセさんのためにも、アニキさんが手本を見せるべきですよ～？」
……いけます！
513:名無しの戦闘員
まさかの結託ｗ
514:名無しの戦闘員
ケーキ作るのに許されてねぇｗ
515:名無しの戦闘員
せくしーちゃんがんがれ！
516:ハカセ
許してないわけやないで？ ワイもアニキの将来を憂えているだけです（棒
ゴリマッチョは風呂上がりのフルーツ牛乳で手打ちにしておいた
姫妻さんやお子さんたちを不安にさせるのもあれやし
517:名無しの戦闘員
既婚者に「お宅の旦那さん一夫多妻肯定派だってｗ」は致命的やからな
518:名無しの戦闘員
偉いぞハカセ
519:ハカセ
でや、ワイ争事件は銭湯を離れ一先ずの終焉を迎えたはずやった
しかし……その傷痕は深く刻み込まれていた
520:名無しの戦闘員
また不穏な空気かもし出してきたぞ
521:名無しの戦闘員
ワイ将知っとる、こういう時のハカセの話はだいたいアホなオチや
522:ハカセ
基地に戻ってしばらく、ワイはＩ奈ちゃんに声をかけられた
アクセ型魔道具とかＬリアちゃんを補佐役にした辺りからかな
冷たいって印象が拭えたんか、Ｉ奈ちゃんが普通に接してくるようになった
Ｉ奈「ハカセ様ハカセ様、私はぁ、こうだと思いまーす♡」
→【第一夫人】Ｌリアちゃん 【第二夫人】猫耳くのいち様 【第三夫人】首領様
Ｉ奈「えへへ。Ｌリアちゃんってぇ、まだ自覚してないけどハカセ様ラブ勢だと思うんですよぉ。前に、ハカセ様の声は何となく落ち着きますって言ってたし！ どうです、これ♡」
どうですってどうゆうこと？
そう、なんでか知らんけど戦闘員の間ではワイの結婚相手を三番目まで決める「ハルヴィエド・ドラフト」が流行っとった
523:名無しの戦闘員
ハルヴィエドラフトｗｗｗ
524:名無しの戦闘員
おまえ普通にオモチャになってんじゃんｗ
525:名無しの戦闘員
陰でやるならともかく本人に伝えに行くＩ奈ちゃん強えｗ
526:ハカセ
偉ぶるつもりはないけどワイ一応君の上司やで？
注意くらいはせな、って思ったけど先に隣のＭ男が動いた
Ｍ男「こら、Ｉ奈ちゃんダメだよ」
Ｉ奈「えー、でもぉ」
Ｍ男「ちゃんとハカセ様の気持ちも考えないと」
→【第一夫人】ルルンちゃん 【第二夫人】首領様 【第三夫人】エレスちゃん
Ｍ男「……ですよね？ ロスフェアの姿は偵察映像で確認しました」
お前ワイの気持ちやなくて完全に年齢と外見で選んどるやないか
527:名無しの戦闘員
Ｍ男はロリコンを隠す気ねーな
528:名無しの戦闘員
ハカセを完全に同類として見とるｗ
529:ハカセ
なんで…なんでこんなことに……
壁┃ω・`)チラリッ…「にゃ」
530:名無しの戦闘員
自分で答え言ってんぞｗ
531:名無しの戦闘員
猫耳ちゃんまさか男湯を覗き見……？
532:ハカセ
いや、「前にこんなことあってよー」みたいな感じでゴリマッチョに聞いただけっぽい
いっしょだった期間は短いけど幹部連中は基本仲良しやからな
で、最近Ｌリアちゃんと仲ええし、ぽろっとこぼしちゃったみたい
つまりゴリマッチョ→猫耳→Ｌリアちゃん→Ｉ奈ちゃん→戦闘員たちの流れ
幹部とアイドル戦闘員の協力技によっていつの間にやらワイが窮地に
なにしてくれてんの？
533:名無しの戦闘員
Ｉ奈ちゃんの拡散力エグいｗ
534:名無しの戦闘員
結局デルンケムの幹部って皆アホの子なんやなｗ
◆
戦闘員たちの騒ぎから逃れ、ハルヴィエドは私室でお茶をしていた。
お茶請けはお詫びにもらったゼロスの手作りケーキ。せっかくだからヴィラ首領やミーニャも呼んで寛いだ時間を過ごしている。
「しかし戦闘員たちは定期的に騒がしくなるのう……」
ヴィラはケーキを食べながらそんなことを呟く。
騒ぎの詳しい内容は伝えていない。
ハルヴィエドの結婚相手としてヴィラ首領が候補に挙がっています、なんて話シラフで言えるものではなかった。
「まあ次第に落ち着くでしょう」
「にゃ」
「そうじゃな。しかし、このケーキはうまいのじゃ！」
「それは何よりです」
あなたの義兄の手作りですよ、とはまだ言えない。
きっとこの満面の笑みが曇ってしまう。
「クリームが完全に私の好みに一致した味……ちょっとこれすごくない？ なのじゃ」
その理由は分かり切っている。つまりゼロスも、そういうことなのだろう。
「さて、茶飲み話には相応しくないが、ハルヴィエドよ」
「どうかされましたか？」
「うむ。近々、時間を空けてもらえぬか？」
そう言ったヴィラベリートは、少しだけ大人びた微笑みを見せた。