ハカセの目論見のこと
176:ハカセ
この前、アニキと二人でチェーンのお鍋屋さん行ったらフィオナたんと会ったんや
向こうは一人やった
もうご飯終わった後みたいやったからご一緒はできんかったのが残念や
177:名無しの戦闘員
一人鍋ってなかなか心臓強いなフィオナちゃん
178:名無しの戦闘員
エレスちゃんたち誘えばいいのに
俺らと違って友達いるんだから
179:名無しの戦闘員
ワイな、勇気出してフィオナたんを食事誘ってみたんや
返答が「機会があれば」やったんやけど、これはどう捉えればええんやろ……
180:名無しの戦闘員
お断りの定番じゃねえか
181:名無しの戦闘員
いや、フィオナちゃんだしそのままの意味の可能性もある
182:名無しの戦闘員
くそう、俺たちに女心を理解する機微があれば!(童貞並みの換装)
183:ハカセ
それとは別になんやけど、なんかフィオナたん「鍋を一人でなんてー」とか恥ずかしがっとったわ
いや、こっちだと一人鍋とか焼肉はハードルが高いってのは知っとるよ?
せやけどウチの方だと煮込み料理を小鍋で一人ってわりと普通やから、今一つ理解しがたいんよね
184:名無しの戦闘員
なんかハードポイントシステム導入しとる奴おるぞw
185:名無しの戦闘員
うらやましいな異次元!
186:名無しの戦闘員
そこらへんやっぱりところ変われば、やなぁ。
一人焼肉気軽に行きたいンゴ。ワイ将そもそもニートやからお外行かんけど
187:名無しの戦闘員
焼肉の前に働けや猛虎弁w
188:ハカセ(晩酌中)
しかし最近はフィオナたんがよくメッセージをくれる
仲良くなった実感があるわ
機嫌がいいと酒が進む
普段はビール派やけど缶チューハイもうまいなぁ
189:名無しの戦闘員
また飲み始めおったw
190:名無しの戦闘員
缶チューハイ美味しいよね
飲み屋だと飲めない味もあるしね
191:ハカセ(晩酌中)
冷凍ピザを極氷果実のレモンでグビリよ、たまらんわ
192:名無しの戦闘員
相変わらずのおっさん具合に安心するぜ
193:名無しの戦闘員
冷凍ピザは市販の溶けるチーズで追いチーズするのが好き
194:ハカセ(晩酌中)
追いチーズ……そんな技もあるのか
ワイも今度試してみるわ
195:名無しの戦闘員
マルゲリータだとトッピングがいろいろ試せるぞ。
196:名無しの戦闘員
そういや今日はいつもより遅かったな
また忙しい感じ?
197:ハカセ
忙しいっちゃ毎日忙しいけどな
ただワイも現状をそのままにしていいとは思っとらん
ってことでちょいと対策をとってみた
198:名無しの戦闘員
なに、組織を乗っ取る決意でもできた?
199:名無しの戦闘員
下剋上! 下剋上!
200:名無しの戦闘員
ついにデルンケムを掌握する時が来たンゴねぇ……
201:ハカセ
しませんが⁉ ワイの認識どうなっとんねん⁉
202:名無しの戦闘員
ハカセはやらないって分かってるからこその弄りだってーの
203:名無しの戦闘員
マジでやるような野心家だとシャレにならんしね
204:ハカセ
カンベンしてもらえませんかね……
そういうのやなくて、補佐役
重要なところはともかく細かな仕事を任せられる補佐役を育てとる最中なんや
205:名無しの戦闘員
おー、いいじゃん
206:名無しの戦闘員
そもそもハカセ一人に業務が集中し過ぎなんだよな
207:名無しの戦闘員
クズな社長によるブラック企業じゃなくて単に人材不足な面が大きいし
補佐役にある程度仕事を振れる環境構築はいい案だと思う
208:ハカセ
せやろ? これでワイのお楽しみタイムも増えるわ
今度ボーリング行こうと思っとるんや
209:名無しの戦闘員
ボウリング、な
210:ハカセ
んん?
地質調査して、まだこっちの次元じゃ活用されとらん資源でも探そかな、って話なんやけど
211:名無しの戦闘員
ほんとにボーリングだった⁉
212:名無しの戦闘員
お楽しみタイムって結局仕事してる件について
213:名無しの戦闘員
骨の髄まで社畜がしみ込んでるなぁ……
214:ハカセ
研究は仕事の一環やけどワイの趣味でもあるしな
学んだことを活かして先に進める過程って楽しいで
215:名無しの戦闘員
開発した結果じゃなくて研究自体が娯楽なのか
216:名無しの戦闘員
根っからの研究者気質なんだな
217:ハカセ
首領のためやからいろいろやるけど、いずれは研究職に戻る気ではおるよ
その一歩としての補佐役や
組織内で募ったら前向きに考えてくれる戦闘員もおってな
C男「マジで⁉ ハカセ様付きとか実質組織のナンバースリー、モテのフリーパスじゃん! うっは、入れ食いかよ⁉」
なお戦闘員C男は選考外とさせていただきました。
218:名無しの戦闘員
チャラ男脳すげえな
219:名無しの戦闘員
ここまでいくと尊敬すらするわ
220:ハカセ(童貞中)
そもそもワイが無垢なのに何を言っているのか
そーゆー不謹慎で不健全な輩は弾いて、とりあえず候補を選出
そして残ったのが
N太郎「ハカセ様、この度はありがとうございます!」
Lリア「ご期待に添えられるよう、今後いっそうの努力をさせていただきます!」
猫耳「任せる、にゃ」
この三人という訳や
うん、なんで?
221:名無しの戦闘員
最後w
222:名無しの戦闘員
猫耳ちゃん補佐役なりたかったのか。
223:ハカセ
どう考えてもおかしいやろ?
ワイは確かに二人だけを呼んだ
にもかかわらず隠形で紛れ込むくのいちスキルの高さよ
N太郎くんもLリアちゃんも困惑しとったわ
女性用制服を着た猫耳が普通におる
しかもなんかお手々を握りしめて「にゃっ」ってガッツポーズ中
ワイ「N太郎、Lリア。少し待っていてくれ。猫耳はこちらに」
猫耳「にゃ? 採用?」
別室にてこてこついてくる猫耳
腰をかがめて視線を合わせてワイは言う
ワイ「なにやってんですかね、猫耳ちゃん?」
猫耳「にゃ」
ワイ「にゃではなく」
224:名無しの戦闘員
猫耳ちゃんちょっとおバカな子に
225:名無しの戦闘員
いや、たこ焼きホフホフやってた時点でその兆候はあったのでは
226:名無しの戦闘員
前もレスしたが、そもそもハカセの妹みたいなもんだしポンコツなのは仕方ないね
227:ハカセ
隙あらばワイを貶めていくスタイル
猫耳「補佐役ならハカセを一番知る者こそ相応しい。すなわち私、にゃ」
ワイ「その場合幹部がワイ一人になるんですが?」
猫耳「……にゃ?」
ワイ「だからにゃではなく」
228:名無しの戦闘員
統括幹部代理(戦闘・参謀・開発担当)
追加業務→諜報・情報関連 NEW!
229:名無しの戦闘員
もはやブラックとかいうレベルじゃねぇなこれ
230:名無しの戦闘員
統括幹部代理なのに統括しなきゃいけない幹部が全員いなくなる不具合
231:ハカセ
これ以上ワイの仕事を増やされたらたまらん、ここは早々にお引き取り願おう
そう思った矢先、猫耳が恐ろしいことを語る
猫耳「……私は、ハカセの裏切りを知っている、にゃ」
232:名無しの戦闘員
裏切り?
233:名無しの戦闘員
なんか物々しい話になってきたな
234:ハカセ
ワイ「な、なにを」
猫耳「ハカセが首領や私には秘密にしてること、すでに掴んでいる、にゃ」
やばい、どれや
首領に内緒で日本企業のいくつかと癒着してることか?
それとも魔導装甲を封印した理由が嘘だとバレた?
いや、二年半前に立ち上げた合同会社に関連する計画? アパレル系乗っ取ったやつ?
ゴリマッチョへの頼み事?
他にもいくつか水面下で動かしとる案件あるけどそれか?
235:名無しの戦闘員
心当たりが多すぎるw
236:名無しの戦闘員
そこまで行ったらマジモンの裏切り者でよくね?
237:名無しの戦闘員
こいつマジで猫耳ちゃんのためにアパレル企業乗っ取りやがった……
238:ハカセ
いやいや、しゃーないやん
今の状況やと多少の汚れ仕事は必要なんや
バレたら首領が悲しそうな顔するから隠さなあかんけど
239:名無しの戦闘員
怒られるとか嫌な顔される、じゃなくて悲しそうな顔なの?
240:ハカセ
「暴力的な占領による支配をしたい、でも犠牲は減らしたい」が首領の方針やからな
それを達成するには怪人でロスフェアちゃんとやり合いつつ、裏から方々に手ぇ回して実質的な支配権を得るのが手っ取り早い
だからって悪辣な手段を好む子でもないし、すごーく気を遣っとるんやぞ
241:名無しの戦闘員
首領ちゃんアホの子っぽいもんなぁ……
242:ハカセ
そんなわけでロスフェアちゃんは強すぎたら困るけど、弱すぎても困るんや
逆に組織が強くなりすぎても困るから魔導装甲は封印した
ワイとしては現状の拮抗をしばらく維持したい
今の戦いは日本に対しても首領に対してもいい目くらましになっとる。
243:名無しの戦闘員
エレスちゃんの新技にビビってた理由それか
ハカセ的なちょうどいい塩梅があるのな。
244:名無しの戦闘員
つーか、根本的に首領に向いてねえよ、のじゃっ子ちゃんは
245:名無しの戦闘員
うーん、日本人的にはヤバい状況なんだけど現状被害があんまり出てないからなんとも
246:ハカセ
ワイは日本人の敵ではあるけど首領の方針には賛成や
意味なくひどいことすんの好きやないし。
そもそもの話な? 首領が暴力による占領を願うのは先代の弔いだと考えてるからや
なのに大きな被害が出んように命じた
あの子は結局、先代のためであっても侵略自体を良しとはしとらんのや
ただ、今は敬愛するパパ上の死に囚われて意固地になっとる
先代のために自分を押し殺して、首領はかなり無理しとる
父親想いの優しい子や。でもそれは上に立つ者の才覚には繋がらん
実際ゴリマッチョとか古参連中なんかはそこも気にいらんみたいで「他人の願いに振り回された、信念のないアタマに命を預けられるか!」って言っとった
247:名無しの戦闘員
ハカセは違うの?
248:ハカセ
ワイも思うところはあるぞ
でも優しい子が、優しいままでいられるようにするのは大人の役目やからな
それができんかった以上、首領の決断はワイの責任でもある。なら放り出したりはできんわな
変な話、ワイの動きは首領にとって望ましいものばかりやない
普通に首領の命令に背いて遅延工作をしてるんやから
それでもワイは可能な限り状況をコントロールしたい
虐殺なんぞする気はないし、ロスフェアちゃんも氏なせん
血が流れたら絶対に首領は後悔するからな
正直に言えば、首領には穏やかに過ごしてほしい
できれば首領も納得できるような妥協点があればいいんやけど
それを探るためにも今はなにより時間が欲しい
遅々として進まないが確実に忍び寄る侵略、それが現状のワイにできる精一杯や
ぶっちゃけると、その間に心変わりしてくれんかなーとは思っとる
249:名無しの戦闘員
心変わりかぁ、いっそのこと先代の危惧の通り別次元からの来訪者が現れたらいいのに
250:名無しの戦闘員
そしたらロスフェアちゃんとも共同戦線、なんてのもあり得るかもな
251:ハカセ
うんにゃ、それはそれでワイら的には困る
来るのが『別の侵略者』ならまだいい
せやけど『理性的で良識ある外交官』だった場合、その時点でワイらが詰む
252:名無しの戦闘員
うん? どういうことだ?
253:ハカセ
ワイらは悪の組織、そもそも歓迎されるもんやない
ただ、もし別の侵略者が来たら、それを撃退すれば一定の価値は示せる
うっとうしいけど役には立つかな、程度には
もしかしたら日本を守るの名目の上、ロスフェアちゃんと共闘もあるかも
254:ハカセ
せやけど、やってきたのが理性的で良識ある外交官の場合は違う。
正式な手段で政府と交渉して、別次元の進んだ科学技術を公開し、日本に利益をもたらす普通の外交・貿易をしたい連中の提案はこうや
『あなたたち日本人のために、悪いやつらの排除のお手伝いをしましょう。私たちは日本の味方、これからも末永くよろしくお願いします』
なんのかんの理由を付けて兵力は出さず、武器や兵器の譲渡に留めてな
そしたら日本対ワイら組織の構図にしながら恩も売れる
当然ロスフェアちゃんもそっち側につくやろうし、ワイなら間違いなく現地人を矢面に立たせる方法をとるわ
そういうのを避けたいんで、遅延工作をしつつも時間をかけすぎるわけにもいかん
日本で起業しとるのもいざって時の逃げ場を確保するためや
てか、いっそのこと第三勢力をこっちで用意した方が早いかもしれん
理想としては、ワイらがいるから外からは手が出せん、っていう先代の想定してたレベルまで戦力を拡充することやけどな
つくづく初手が侵略やから融和政策がとりにくいのが悔やまれる
255:ハカセ
……なんて、いろいろ考えたりわりと覚悟を決めて向かい合ったのに。
猫耳「ハカセが、アニキ様たちと焼肉に行ったこと、私も首領も知っている、にゃ……!」
いやあ、猫耳の言う裏切りが焼肉を内緒で食べに行ったこととか想像もつかんよね
256:名無しの戦闘員
ごめんハカセ、落差デカすぎて笑いにくい
257:名無しの戦闘員
うん、前の話がちょっと重すぎた
258:ハカセ
あらま、失敗してもたか
まあ、そんな感じでワイもそれなりに覚悟もって悪の科学者やっとるよって話や
かといってそれで人生すり潰す気もないからな
うまいもん食べて酒も飲んで、首領とアニメ見るし猫耳とお買い物にも行く
当然フィオナたんやルルンちゃんともメッセージのやりとりしとる
好きな女の子とお付き合いして、いずれパスタ屋をってのも本心やし、にゃんJに書き込むのも楽しんどる
ああ、結局補佐役はLリアちゃんとN太郎くんに頼むことになったわ
猫耳は構ってほしくてあんな真似しただけみたいでな
また機会を作る約束をしたら引いてくれた
猫耳「首領もいっしょに、にゃ」
とのこと、なんや聞いてほしいお願いがあるんやと
あとLリアちゃんたちには、これからちょっとずつ組織内と地上での仕事を任せていくつもり
これで少しは楽になるとええんやけどなぁ
259:名無しの戦闘員
そうなるといいな、うん
260:名無しの戦闘員
んだんだ
261:ハカセ
ってことで、ワイはそろそろ落ちるわ
ほななー
262:名無しの戦闘員
おー、ハカセおやすみー
263:名無しの戦闘員
……なあ 今さらなんだけどさ
実はハカセってけっこうヤバいやつじゃね?
264:名無しの戦闘員
悪の科学者って時点でヤバいんだが感情重すぎるよな
265:名無しの戦闘員
うん……
◆
「むむ。凝っておるの、ハルヴィエドよ」
「あー、気持ちいいですヴィラ首領」
「デルンケム首領、手ずからのマッサージなのじゃ。しっかりと堪能するがいい」
ハルヴィエドは自室のベッドでうつ伏せになっていた。
その上には首領であるヴィラベリートが乗り、一生懸命に肩や背中を解している。
ミーニャとの約束通り時間を作った。しかし二人は遊ぶのでも外食に行くのでもなく、ハルヴィエドの部屋でゆっくりしたいとの希望だった。
「すまぬの。おぬしの負担は私の不甲斐なさゆえ。このようなことは、罪滅ぼしにもならぬとは分かっておるが」
ヴィラベリートの願いは『マッサージがしたい』。
自分のせいで忙しいのだからと、少しでも労わりたいという気持ちの表れだろう。
「いえいえ。私は好きでこの組織にいるのですから。まあ多少忙しくて、多少ストレスが溜まって、多少疲れているのは事実ですが」
「ここぞとばかりに責め立ててくるのう……」
「はは、冗談ですよ。私は、まだまだ首領のところで厄介になるつもりなので」
「そうか、そうかっ。うはははは!」
喜びからか、さらに親指に力が籠る。
台所ではミーニャが食事を作っている。夕食は普段野菜をとらないハルヴィエドのための特別メニューらしい。
つまりはそういうこと。
散々大仰なことを言ったが、結局のところ彼の本心は単純なものだ。
(こんな子達を、見捨てられないよなぁ)
侵略が成功しようと失敗しようと。
最終的にどのように転がってもデルンケムに所属する全員が無事に済む道を探す。
ハルヴィエドの忙しさはそのための模索なのである。