沙雪ちゃんと晴彦さん③
744:名無しの戦闘員
なぁなぁハカセ
この前書き込みしてたせくしーってさ、A子ちゃんと仲悪いの?
745:名無しの戦闘員
そういやその質問だけ答えなかったよな
746:ハカセ
うんにゃ、むしろ仲ええぞ
747:名無しの戦闘員
あれ、アニキを巡っての三角関係じゃなかったっけ?
748:名無しの戦闘員
幹部と戦闘員が仲いいのも不思議な感じ
749:名無しの戦闘員
それ言ったら統括幹部についていく一介の戦闘員ってのも変じゃない?
750:ハカセ
そこら辺の事情か
A子ちゃんはもともと小さな頃に食うに困って組織入りした女の子でな
慣れん環境で戸惑ってたところをアニキがしばらく面倒を見てたら「アニキさん、大好きです!」って恋愛感情を抱くようになったんや
ある意味ワイと猫耳くのいちの関係に近いな
猫耳の場合は家族で、いい感じにワイをいじってくるけど
751:名無しの戦闘員
あー、アニキが憧れのお兄ちゃんな感じか
752:名無しの戦闘員
そういや四人の戦闘員のアイドルの中でA子ちゃんだけ幹部連中と親しいもんな
アニキが世話してたから他と繋がりもできた、みたいな?
753:名無しの戦闘員
統括幹部が目をかける戦闘員とか嫉妬すごそう。
754:ハカセ
>>752
せーかい
アニキというか、統括幹部直属の戦闘員という形やから目に見えた嫌がらせはなかったと思う
内心の不満までは読めんけどな
首領とかは「むむむむ……」みたいな感じで睨んどったこともしばしば
755:名無しの戦闘員
しゃーない
756:名無しの戦闘員
お義兄ちゃんがかまうかわいい女の子とか普通にイヤだろうしね
757:名無しの戦闘員
自分のポジション奪う敵だわな
758:名無しの戦闘員
いやこれ、首領ちゃんもかわいいぞ……?
759:ハカセ
A子ちゃんは離反するアニキについていく形で組織を辞めた
I奈ちゃんとかは組織内に両親おるけど、A子ちゃんは違うからな
アニキのおらん組織にそこまで執着もなかったんやろな
ってことでワイはアニキとA子ちゃんの戸籍を偽造した、クソほど遠いけど一応親戚って形で
いっしょに暮らす際の理由付けになるし、いざとなったら結婚もできるようにな
760:名無しの戦闘員
ハカセ面倒見いい上に気遣い屋だなぁ
761:名無しの戦闘員
これで彼女いない暦=年齢なんだからすごいよねw
762:ハカセ
褒めるか貶めるかどっちかにしてくれませんかね……
そんなこんなでA子ちゃんは学生やりつつアニキのお店のウェイトレス
付き合い長いからせくしーとも普通に仲ええよ、二人ともいい子やしね
763:名無しの戦闘員
なごやか三角関係とかさてはアニキ人生舐めてんな?
764:名無しの戦闘員
デルンケムって基本まったりな雰囲気やな
765:ハカセ
そういや、せくしーやアニキにならこの前の日曜日にも会ったで
ワイはその日も忙しく仕事をしとった
ついのめり込みすぎて気付けば三時。お昼も食べとらんからお腹がくーくーや。
とはいえ、ここでがっつり食べると夕飯が入らんくなる。
そや、休憩がてらアニキのところで軽くサンドイッチでもつまもかな。
そう思いながら喫茶店に向かうと途中で偶然せくしーに遭遇した。
せくしー「あら、ハカセさんこんにちは~」
ワイ「偶然やね。アニキんとこ?」
せくしー「はい、実はお昼を逃してしまって今から軽く何か食べようと」
ワイ「なんやワイと同じか」
せくしー「よろしければごいっしょしてもいいですか?」
もちろんワイはオッケー
ちなみにせくしーは短大卒って設定で既に就職しとる(ワイ偽造並感
この子もけっこう忙しいみたいやな。
766:名無しの戦闘員
せくしーさんといっしょにごはん⁉
767:名無しの戦闘員
やっぱり仲良しだねぇw
768:名無しの戦闘員
せくしーさんの作品は温かみがあって好きだからw
769:ハカセ
あのちょっと、隙あらばの精神やめてもらえません?
だいたい今回の主役はワイやなくてアニキやから
770名無しの戦闘員
せくしーはアニキにベタ惚れなんだよな
771:名無しの戦闘員
分かった、これ普段は仲いいけどアニキを取り合う時だけ微妙な関係になるやつだ
772:ハカセ
お店に行ったワイは当然せくしーと相席、そこに注文を取りにくるA子ちゃん
A子「いらっしゃいませ、ハカセさん、せくしーさん」
せくしー「こんにちは~、A子ちゃん」
ワイ「あ、A子。ワイはローストビーフサンドとアイスコーヒーで」
せくしー「私は、エビとアボカドのサンドイッチと、アイスミルクティーを」
そして修羅場期待した人たちよ、申し訳ない
アニキが入ったところであの二人はギスギスせんのや
アニキ「ああ、せくしー。いらっしゃい」
せくしー「アニキさん、こんにちは~」(手をフリフリ
A子「あ、私も私も」(手をフリフリ
アニキ「あ、はは……」
773:ハカセ
そう、せくしーとA子はライバルでなく協力者
二人でアニキの嫁になろうと画策しとる
理想の結婚式はアニキを挟むようにウェディングドレスの二人が立つ形だとか
どんな戦場でも臆さない勇猛果敢な剣士アニキが冷や汗をたらしとったわ
ワイ「A子。やっぱり追加、このマーブルクッキーもお願いできる?」
A子「はい、かしこまりましたー」
なのでお菓子でもつまみつつタジタジなアニキを観覧しよかなーって
774:名無しの戦闘員
重婚とかアニキ本気でふざけてやがんな⁉
775:名無しの戦闘員
それはそれとしてハカセ下世話ぁ⁉
776:ハカセ
でもほんとは?
777:名無しの戦闘員
正直俺も興味ある!
778:名無しの戦闘員
モテモテアニキは腹立つけどそれはそれとしてお話としては見ていたい!
779:名無しの戦闘員
この模範的にゃんJ民どもめwww
780:ハカセ
それでこそお前らや
ってことでまずは腹ごしらえ
せくしー「ハカセさんのサンドイッチ、おいしそうですね」
ワイ「そっちのエビとアボガドのやつもいいな。一個交換する?」
せくしー「ありがとうございます。そうさせてください」
ワイら二人だとだいたいこんな感じやね
ゴリマッチョだと「とりあえず食いたいのは全部頼んで分け合おうぜ!」となる
781:名無しの戦闘員
異性なのに友達って感じでいいなぁ
782:名無しの戦闘員
今もリボンを大切にするくらい大好きな友人だからw
783:ハカセ
からかいを鉄の精神力で耐えきるワイ。
せくしー「A子ちゃん。アニキさんとの生活、不都合はないですか?」
A子「ええ、優しくしてもらってます。毎日楽しいです」
せくしー「むぅ、アニキさん私もかまってくださいよ」
アニキ「お、俺か?」
A子「あ、ずるいです、せくしーさん」
せくしー「じゃあA子ちゃんもいっしょにアニキさんとお風呂に入りましょう」
アニキ「お、お風呂?!」
現在進行形で鉄の精神力を試されるアニキ
ワイ「ひゃっほう、さすがアニキ! 相変わらずのモテっぷりやな!」
アニキ「す、すまん、ハカセ。今は妙な煽りをやめてくれないか?」
クッキーぽりぽり、ワイにやにや
強く賢く気遣いもできるアニキが女の子二人に好き好きされて困惑する姿
そこからしか摂取できない栄養素があるわけや
784:名無しの戦闘員
いっしょに……お風呂……⁉ 妬ましい、憎らしい……!
785:名無しの戦闘員
やはりアニキも悪の組織の一員か……
786:名無しの戦闘員
ハカセ楽しそうだなぁ
787:ハカセ
ぶっちゃけワイからしたら対岸の火事やし
アニキは大変かもしらんけど、A子やせくしーみたいなかわいらしい女の子に同時に好かれとるんや
しっかり悩んで苦労してもらわんと
嫉妬やない、断じて嫉妬やない
788:名無しの戦闘員
確かに好かれている分アニキは他でバランスをとる必要がある。
789:名無しの戦闘員
JKちゃんにマジモンのせくしーな美女だもんな。このくらいは当然というか。
790:ハカセ
理解者が多くてワイ歓喜
せくしー「理想としては、私が働いてアニキさんが専業主夫ですねぇ」
「あ、ハカセさんが起業して、私が秘書ならなお良しです」
「ハカセさんの会社なら間違いなくホワイトですから」
A子「私は共働きでも、専業主婦でもいいですよ。ただ、夫と過ごす時間は欲しいかなぁ」
せくしー「それは私もですねぇ」
アニキ「ふ、二人とも俺を凝視しないでくれないか?」
すでに結婚後の生活の図面を引いてるせくしーとA子ちゃん
いやー、クッキーがうまいなぁ
791:名無しの戦闘員
なぜかハカセの起業が未来予想図に組み込まれとるw
792:名無しの戦闘員
A子ちゃんの言う共働きって「妻と夫が働く」じゃなくて「妻が二人とも働く」だよね……
793:名無しの戦闘員
アニキすげぇな。
794:名無しの戦闘員
ハカセもすごいぞ
なにせあの顔をまったく有効活用できてないんだから
795:ハカセ
ワイにとっちゃ簡単に恋人作れる人らの方が変やと思うけど
見ず知らずの女の子を「お茶しない?」とか誘うなんて正気の沙汰やない
あと、たい焼き屋のおばちゃんが「イケメンだからおまけね!」って言ってくれたからちゃんと有効活用できとる
796:名無しの戦闘員
店屋のおばちゃんは若い男には皆イケメンっていうからな
797:名無しの戦闘員
ていうかアニキわりと優柔不断だったんだ……
798:ハカセ(二人の暴走を応援中)
しゃーないところはあると思うけどな
しかしあんなかわいい女の子たちに見つめられるなんて、アニキが羨ましいわw
799:名無しの戦闘員
本心隠せてないぞハカセw
◆
喫茶店ニルでのささいな騒動を離れた席から見つめる者たちがいた。
「むぅ……」
「あの、沙雪ちゃん? 見過ぎじゃないかなー、ってボクは思うんだけど。あはは……」
茜に窘められるが、沙雪には耳を傾ける余裕が一切ない。
視線の先には最近仲良くさせてもらっている男性、葉加瀬晴彦の姿がある。普段なら声の一つくらいかけるのだが、今はそれもできない。
なにせ彼は謎の美女と同席し、親しそうに食事をしていたのだから。
時間を少し遡る。
今日、沙雪は久しぶりに茜と二人で出かけた。萌や美衣那を含めた四人で遊ぶのも楽しいが、茜を独り占めできるのも嬉しい。運動公園に行って体を動かした後は喫茶店ニルでお茶をすることになった。
「あ、晴彦さん」
お店でケーキを味わっていると、後から晴彦が店に入ってきた。せっかくだし挨拶をしようとしたが途中で沙雪は固まってしまう。
「レティ、相席でいいか?」
「もちろん大丈夫ですよ、晴彦さん」
晴彦は一人ではなく見知らぬ女性といっしょにいたのだ。
レティと呼ばれた、軽くウェーブした柔らかい髪の美女。スタイルもとてもよく、比較すると泣きたくなるくらいの差だ。身長も高く、晴彦と並ぶとすごく絵になる。
「え、あの……え?」
うまく言葉が出てこない。沙雪は予想外の事態に動揺しきっていた。
「沙雪ちゃん、どうしたの? あ、晴彦さんだ。わー、すっごい美人」
「本当に、び、美人、ね。それにす、すごく親しそう。まさ、まさか恋人同士……?」
「あれ、でも前遊びに行った時は付き合ってる人いないって」
「そうですよねっ。言ってましたよね?」
「なぜに敬語?」
茜の言う通り、確かに美衣那は晴彦には恋人がいないと語っていた。妹のお墨付き、これは信頼できるはずだ。
しかしあの二人は自然に同席して談笑しており、友人というには妙に距離が近い。加えてごく自然にお互いのサンドイッチを交換していた。
「ああっ、み、見た? 今の。なんて恐ろしい……」
「え? でも、ボクたちもよくケーキの交換するよね?」
「違うの、茜。私たちのそれと男女では、意味合いがまるで違うのよ」
「沙雪ちゃんのこんな姿見るの初めて」
問題は今の流れだ。
レティの方が晴彦のサンドイッチを見ていると、彼が優しく微笑んで交換を提案した様子だった。沙雪は、あんなに無防備な表情を向けてもらったことがない。つまり二人は恋人ではないにしろ相当親しい間柄だと推測できる。
モヤモヤがさらに増し、沙雪は少しでも情報を得ようと耳を澄ます。
すると将来は晴彦の会社で働く、といった内容が聞こえてきた。
「晴彦さんの秘書……? ど、どういうこと?」
「ねえ、もう直接に聞きに行った方が早くない? というか、わりと近くで騒いでるのにこっちを全然見ないね?」
「リーザの力を借りて簡易の結界を張っているわ」
「本気すぎない⁉」
水の魔力を利用した隠蔽用の結界であり、多少騒がしくしたところで誰も沙雪たちには気付けない。これで安心して観察を続けられる。
レティを見つめる晴彦の瞳はとても優しい。
仲良くなったといっても学生と社会人だ。沙雪に学校生活があるように、晴彦にもいろいろと付き合いがあるのだろう。大人なのだから恋人がいてもおかしくない。そう理解しているのに、不安にも似た奇妙な感覚が胸に居座っていた。
それは、レティの話をきくほどに強まってしまう。
「ああ、け、結婚? 主婦とか、そんな話をしている……!」
「どう見ても二人の視線はマスターに向いてるんだけど……」
沙雪はしばらくの間、混乱したまま晴彦たちの動向を凝視し続けた。
◆
822:ハカセ
たじだじアニキを堪能したワイは邪魔するのもなんやし一人で店を出た
するとフィオナたんとエレスちゃんが声をかけてきた
823:名無しの戦闘員
それはアニキを見捨てただけでわ……?
824:名無しの戦闘員
あら、もしかしてフィオナちゃんたちも店にいたのか?
825:ハカセ
うん、なんか店の中で身隠しの結界張っとった
ワイは神秘に敏感やからすぐに気付いたけど、エレスちゃんとのティータイムを邪魔されたくないんかな思てあんまりそっちは見んようにしとったんや
826:ハカセ
フィオナ「ふふ。ハカセさん、奇遇ですね」
エレス「ええー……」
涼やかな微笑みで挨拶するフィオナたんと、なんでか疲れたお顔のエレスちゃん
大丈夫? と声かけたら「はい、なんとか」と曖昧な返事やった
827:名無しの戦闘員
エレスちゃん変な感じだな
828:名無しの戦闘員
身隠し、ってたぶん周りに気付かれないようにする結界みたいなやつだろ?
もしかしたらエレスちゃん、フィオナちゃんにお悩み相談でもしてたんじゃない?
829:ハカセ
あー、フィオナたんの方が先輩やしそれはあるか
実際「ハカセさん、すみません。今日は一人で帰ります……」ってちょっと元気ない様子やったし
なんやろ、ワイも気にかけておくわ
830:名無しの戦闘員
そろそろ忘れてるかもしれないけどお前敵だからな?
831:名無しの戦闘員
むしろ悩みの種だろハルヴィエド統括幹部代理w
832:ハカセ
それを言っちゃあおしまいよ、ってやつや
ワイとしてはフィオナたんと帰る機会が得られたしラッキーではあったけど
帰り道、なんかご機嫌でいろいろとお喋りできたし
◆
沙雪が、独りで店を出る晴彦を追おうとすると、先ほどまで彼といた美女に呼び止められた。
「こんにちは~、英子ちゃんに聞きました。貴女が神無月沙雪ちゃんですか?」
「は、はい……」
いきなりのことで驚いたが、レティは微笑み沙雪の耳元でそっと囁く。
「私が好きなのは、ここのマスターです。晴彦さんはただのお友達ですよ」
そうして彼女は席に戻っていく。
たった一言で沙雪の胸のもやもやはきれいさっぱり消えていた。
だから鈍い彼女でも気付いてしまった。
ああ、そうか。
あんな一言で安堵してしまうくらい、私は彼のことをほんのちょっとだけ気にしているのだろう。